マイナーリーグからメジャー復帰を果たした筒香嘉智が絶好調だ。

 8月16日(日本時間17日)にピッツバーグ・パイレーツとメジャー契約を結んだ筒香は、7試合で打率.333、長打率.944、OPSは1.278を記録。ここ4試合で3本塁打と日本時代を彷彿させる豪快な長打力も甦った。

 タンパベイ・レイズとロサンゼルス・ドジャースでは「メジャー失格」の烙印を押された筒香にチャンスを与えたパイレーツは、独特の選手発掘手法で知られる球団だ。

 パイレーツが本拠地を置くピッツバーグは「鉄の街」として知られ、パイレーツの他にもNFLとNHLのチームがフランチャイズにしている。NFLのチームは「スティーラーズ」と鉄の街そのままのチーム名で、スーパーボウルを6度制している名門球団。NHLのペンギンズは、1991年に初めてスタンレーカップを制すると、その後の30年間で5度も頂点に立っている強豪。

 ピッツバーグ市民の熱はスティーラーズに最も多く注がれ、次がペンギンズ。低迷が続いているパイレーツは忘れられた存在だ。

 弱小球団のパイレーツは、金満球団のニューヨーク・ヤンキースやドジャースとFA選手争奪戦で勝つことはできないので、選手育成に力を入れざるを得ない。その1つが、独自の海外選手発掘手法だ。

 メジャーの多くの球団はドミニカ共和国を始めとした中南米にアカデミーを持っており、選手の発掘、育成を行っている。

 パイレーツも中南米のアカデミーに注力しているが、それだけでなく他のチームが目をつけていない国にも進出して、金の卵の発掘に力を入れている。

インド人初のプロ野球選手と契約

 最も良い例がインドだ。

 2014年に公開された映画「ミリオンダラー・アーム」は、野球未開拓の地であるインドで、豪腕投手を発掘する実話を元にした映画だが、そのコンテストで勝ち残った2人の投手と契約した球団が他でもないパイレーツだった。

 3万7000人のトライアウト参加者の中から選ばれた2選手合計で8000ドルという超格安な契約金を払って、リンク・シンとディネシュ・パテルを獲得したパイレーツ。

 やり投げとクリケットの選手だったシンは、初めて挑戦したピッチングで球速140キロを記録。インド人初のプロ野球選手としてアメリカ球界に挑戦して、5年間のマイナー生活で通算10勝6敗、防御率2.97の成績を残した。挑戦の過程で肘を壊して、トミー・ジョン手術を受けたが、手術後は1試合に登板しただけで野球を諦め、WWEでプロレスラーに転身した。

アフリカ出身の初のメジャーリーガー

 人口13億人のインドからメジャーリーガーを輩出するプロジェクトには失敗したが、パイレーツはインドだけでなく、世界中に出ていってポテンシャルがありそうなアスリートを獲得。

 その1人が、身体能力の高さには定評があるアフリカ大陸出身のムポ・”ギフト”・ンゴエペ。南アフリカ共和国で生まれ育ったンゴエペは、18歳のときにパイレーツと契約を結んで入団。マイナーで7年間プレーした後に、メジャー登録の40人枠に初登録され、2017年にアフリカ出身の初のメジャーリーガーとして、メジャー・デビューを果たした。「彼は16億人を代表しているんだ」とチームメイトは語ったが、16億人が暮らすアフリカ大陸にとって大きな快挙となった。

リトアニア人初のメジャーリーガー

 ンゴエペがアフリカ大陸出身初のメジャーリーガーとなる4日前、リトアニア人初のメジャーリーガーとなったのがドビダス・ネバラスカス。16歳でリトアニア人初となるプロ野球選手としてパイレーツと契約したネバラスカスは、マイナーで経験を積み重ねて、2017年にメジャー・デビュー。

 ンゴエペがメジャーに初昇格したとき、代わりにマイナーへ降格させられたのはネバラスカスだった。

 メジャーで4年間、合計76試合に登板したネバラスカスは、今季からNPBの広島東洋カープでプレーしている。

世界中の野球選手にチャンスを与えるパイレーツ

 インド、アフリカ大陸、リトアニアなど他のメジャー球団が出ていかない野球未開拓の地からも選手を受け入れ、チャレンジする土壌を与えるパイレーツが、アメリカと並ぶ野球大国である日本で結果を残した筒香に3度目のチャンスを与えたのは必然とも言える。

 筒香はドジャース傘下のマイナーリーグで調子を取り戻しており、パイレーツにとってはローリスク・ハイリターンが期待できるお買い得な投資物件だった。