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5度の先発で3度も同日に他の投手がノーヒッターを達成する「ミスター・ノーヒッター」有原航平

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
メジャー通算5度の先発中3度も他の投手が同日にノーヒッターを達成している有原航平

 今季からメジャーリーグのテキサス・レンジャーズへ移籍してきた有原航平が先発登板すると不思議な現象が起こっている。

 ここまで有原は5試合に先発しているが、有原が先発した日には3度も他の投手がノーヒットノーランを達成している。その確率は6割で、偶然の一言では片付けられない。

 今季のメジャーでのノーヒッターは3度(7イニングの参考記録を含む)で、その3度が起こった日は全てで有原が先発。こちらの確率は驚異の10割である。

 最初の偶然は、有原にとってメジャー2度目の登板となった4月9日(日本時間10日)のこと。

 このときはサンディエゴ・パドレスを相手に4イニングを投げて3失点を喫して、メジャー初黒星を喫した有原。NHKで日本でも生中継されたこの試合で有原と投げ合ったパドレスのジョー・マスグローブは、9イニングを無安打無得点、無四球、死球1つの準完全試合で、パドレス球団初のノーヒットノーランを達成した。

 本拠地のグローブライフ・フィールドで地元ファンの前で初めて投げた有原は、「(マスグローブは)本当に素晴らしいピッチングだった。コントロールもすごく良くて、ああいうピッチングを僕もしたい。チームが負けて凄く悔しいので次の投球で貢献したい」とマスグローブの快挙を讃えた。

 昨季にオープンしたばかりのグローブライフ・フィールドでは、もちろん球場初となるノーヒッターだった。

レンジャーズ戦でノーヒットノーランを達成してチームメイトたちに祝福されるパドレスのジョー・マスグローブ
レンジャーズ戦でノーヒットノーランを達成してチームメイトたちに祝福されるパドレスのジョー・マスグローブ写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 マスグローブのメジャー今季初のノーヒットノーランから5日後の4月14日(日本時間15日)、敵地でのタンパベイ・レイズ戦に先発した有原はメジャー初勝利を飾った。

 そしてこの日、シカゴで行われたシカゴ・ホワイトソックス対クリーブランド・インディアンズ戦では、ホワイトソックスのカルロス・ロドンがメジャー今季2度目となるノーヒットノーランを達成。9回1死までは一人の走者も許さない完全試合ペースだったが、パーフェクトゲームまで後2人に迫った時点で死球を与えてしまい、マスグローブと同じく無安打無得点、無四球、死球1つのノーヒッターだった。

 マスグローブがパドレス創設53年目にして球団初となるノーヒッターだったのに対して、ロドンは昨季のルーカス・ジオリトに続いてホワイトソックスの投手として2年連続となる記録を達成。ホワイトソックスの投手として球団20度目となる記録で、これはアメリカン・リーグの球団としては最も多い。

インディアンズ戦でノーヒッターを記録してチームメイトから祝福されるカルロス・ロドン
インディアンズ戦でノーヒッターを記録してチームメイトから祝福されるカルロス・ロドン写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 マスグローブとロドンのノーヒットノーランは5日の間隔で達成されており、メジャーの先発投手は中4日登板が多いので、4月9日と14日に先発した投手は多くいても不思議ではない。

 9日には9試合が行われたので、18人の投手が先発している。その18投手の中で、14日にも先発したのは以下の10投手。

  • 有原航平(レンジャーズ)
  • ジョー・マスグローブ(パドレス)
  • ザック・プリサック(インディアンズ)
  • タイラー・マーリー(レッズ)
  • ザック・ウィーラー(フィリーズ)
  • チャーリー・モートン(ブレーブス)
  • ランス・マッカラーズ(アストロズ)
  • ジョー・ロス(ナショナルズ)
  • ジョニー・クエイト(ジャイアンツ)
  • コーリー・クルーバー(ヤンキース)

 ノーヒッターが行われた9日と14日の両方で先発した投手は10人もいるのだが、有原が今季5度目の先発を果たした4月25日(日本時間26日)に、またしてもノーヒッターが達成された。

 25日にノーヒッターを達成したのは、アリゾナ・ダイヤモンドバックスのマディソン・バムガーナー。ただし、ダイヤモンドバックスはこの日にダブルヘッダーを戦っており、昨季と今季はコロナ禍の特別ルールとしてダブルヘッダーの試合は7イニング制となっている。7イニング制でのノーヒッターは公式記録としては扱われないが、ノーヒッターであることには間違いはない。

7イニングの非公式ノーヒットノーランを達成して、チームメイトから祝福されるバムガーナー
7イニングの非公式ノーヒットノーランを達成して、チームメイトから祝福されるバムガーナー写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 9日と14日に先発した上記の10投手の中で、25日にも先発したのは有原、マスグローブ、マッカラーズの3投手だけ。

 次の有原の先発予定は4月30日(日本時間5月1日)のレッドソックス戦。マッカラーズも同じく30日の試合に先発登板予定だが、マスグローブは先発の予定はない。この30日には、ニューヨーク・ヤンキースのゲリット・コールがアメリカン・リーグ最低のチーム打率の貧打線、デトロイト・タイガース戦で先発する予定なので、またしても快挙が起こるかもしれない。

 ちなみに、日本のプロ野球では昨シーズンに1度だけノーヒットノーランが達成されている。ヤクルトスワローズの小川泰弘が8月15日に達成したものだが、その日には有原も千葉ロッテマリーンズ相手に7回を無失点に抑えて、シーズン2勝目を挙げている。

 小川の前に日本球界でノーヒットノーランを達成したのは、2019年9月14日に記録した大野雄二(中日ドラゴンズ)だが、もちろん有原はこの日も先発していた。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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