日米のリングで頂点に立ったゴールデン☆ラヴァーズ。飯伏対オメガの頂上決戦は実現するか?

日米のリングで頂点に立った飯伏幸太とケニー・オメガのゴールデン☆ラヴァーズ

 1月4日に東京ドームで開催された「WRESTLE KINGDOM 15」でIWGPヘビー級とIWGPインターコンチネンタル王者の内藤哲也に勝って二冠王者となった飯伏幸太。

 翌5日にはシングルマッチで3連敗中だったジェイ・ホワイトの挑戦を退けて、「最強のベルト」であるIWGPヘビーと「最高のベルト」のインターコンチネンタルの初防衛にも成功して、新日本プロレスの頂点に立った。

 飯伏が悲願のIWGPヘビー級のベルトを腰に巻く1ヶ月前。飯伏の盟友だったケニー・オメガは、アメリカでWWEに次ぐ2番目のプロレス団体、AEWの象徴であるAEW世界ヘビー級のベルトをジョン・モクスリーから奪い、AEWの頂点に立っていた。

ゴールデン☆ラヴァーズ結成

 鹿児島県出身の38歳の飯伏と、カナダのウィニペグ出身の37歳のオメガが初めて出会ったのは2008年のこと。

 カナダやアメリカのインディー団体を中心に活動していたオメガは技術の高い日本のプロレスに惚れ込み、何度も日本行きを画策。なかなか、日本の団体から声がかからなかったため、DDTに自ら売り込みをかけ、ようやく日本のリングに上がるという夢が適ったのが2008年だった。

 この初来日時にオメガとシングルマッチを戦ったのが飯伏。リング上と路上が舞台の変則マッチでの戦いを通して友情とリスペクトが芽生え、タッグを結成。二人のコンビは「ゴールデン☆ラヴァーズ」と呼ばれ、KO-DタッグとIWGPジュニアタッグの王者に輝いた。

 小学生のときからプロレスの自主興行を開催していたオメガと、小学校卒業直後にプロレス団体の入団テストに合格した飯伏は、どちらも子供の頃からプロレスが大好きで、ジュニアヘビー級からヘビー級へ転向、インディー団体からメジャー団体の頂点まで駆け上るなどの共通項がある。

 二人ともDDTに所属しながら、新日本のリングにも上がっていたが、飯伏は2013年にDDTと新日本に異例のダブル所属。翌14年にはオメガもDDTから新日本へ移籍して、二人の主戦場はDDTから新日本へと変わったが、ゴールデン☆ラヴァーズとしての活動は休止。

 オメガは外国人ヒール・ユニットのバレット・クラブ(BC)に加入して、3代目リーダーに就任した。

ゴールデン☆ラヴァーズ復活

 3年以上も活動がなかったゴールデン☆ラヴァーズは2018年に復活。

 1月上旬にBCのメンバーであるCodyに襲撃された飯伏をオメガが救出すると、1月下旬にはBCのメンバーから袋叩きにされていたオメガを飯伏が助けに入った。

 二人は「ゴールデン☆ラヴァーズ」の復活を宣言。6月には飯伏をセコンドに付けたオメガがオカダ・カズチカからIWGPヘビー級のベルトを奪取して、初めて新日本プロレスの頂点に立った。

 しかし、2019年1月にはオメガが新日を退団して、ゴールデン☆ラヴァーズの復活はわずか1年でピリオドを打たれた。

コーナーポスト上から合体攻撃を狙う飯伏幸太とケニー・オメガ(写真:三尾圭)
コーナーポスト上から合体攻撃を狙う飯伏幸太とケニー・オメガ(写真:三尾圭)

日米のリングで頂点に立ったゴールデン☆ラヴァーズ

 新日を退団したオメガは、BCから派生した「ジ・エリート」の盟友だったヤング・バックスやCodyが設立したAEWへ移籍。

 そして前述した通り、昨年12月2日にジョン・モクスリーに勝利して、第3代AEWヘビー級王者となった。

 オメガが東京ドームでIWGPヘビー級王者を奪われてから丁度2年経った今年1月4日、飯伏は東京ドームで内藤に勝って、念願のIWGPヘビー級のベルトを手にした。

メイ前社長退任により囁かれる噂

 AEWが設立された2019年に新日本プロレスのトップに立って世界戦略を進めていたハロルド・メイ前社長は、新型コロナウイルスによって経済的なダメージを受けた昨年10月に退任。AEWとの提携に消極的だったメイ社長が退任したことで、新日とAEWが提携するのではという噂がアメリカのマット界では流れている。

アメリカでの放送を失った新日本

 新日の試合はアメリカでは「AXS」というテレビ局で2015年から週1回放送されていたが、2019年9月にアンセム・スポーツ&エンターテインメント社がAXSを買収すると、19年の年末で新日の放送が打ち切られた。

 これはアンセム社が傘下にプロレス団体の「インパクト・レスリング」を抱えているため。AXSは新日の放送を止め、代わりにインパクトの試合を放映するようになった。

 AXSから新日を追い出したインパクトとAEWがここに来て手を結び始めた。

AEW王者のオメガがインパクトに登場

 オメガがモクスリーからAEWヘビー級のベルトを奪った試合で、オメガの古くからの友人で現在はインパクト・レスリングの副社長を務めているドン・キャリスが特別ゲスト解説に呼ばれた。AEWの大会はAXSではなく、AXSよりも規模が大きいTNTで放映されており、キャリスがTNTで解説を務めるのは異例のことである。

 試合の山場になると放送席に座っていたキャリスがリングサイドに近づき、オメガの勝利をアシストした。

 AEWヘビー級王者になった翌週、オメガはAXSで放映されたインパクトの大会に登場。昨年春にWWEを解雇され、夏にインパクトへ移籍した元BCのカール・アンダーソンとドク・ギャローズと合体。オメガが予告登場した週のインパクト放送は前週と比べて40%近く視聴者を増やして、オメガの注目度の高さを証明した。

 そして、1月16日に開催されたインパクトのPPV大会「ハード・トゥ・キル」でオメガはアンダーソン、ギャローズと組んでの6人タッグマッチでインパクト・デビューを果たした。

 6人タッグマッチながら、オメガは現インパクト世界王者のリッチ・スワンからピンフォールを奪った。AEWのベルトだけでなく、メキシコのプロレス団体「AAA」の世界ヘビー級王者でもある二冠王者のオメガは、三本目のベルトとしてスワンが持つインパクト世界王者のベルト奪取にも興味を示している。

キーマンはインパクト副社長のキャリス

 AEWとインパクトが接近したが、その中に新日本も加わるとするならば、インパクトのキャリス副社長がキーマンとなる。

 キャリスは2017年から19年まで新日本プロレスの月額視聴サービス「NJPWワールド」の英語解説を務めており、新日との関係は深い。

 2018年1月4日の東京ドーム大会のセミでオメガ対クリス・ジェリコのIWGP USヘビー級戦が組まれたが、この試合を実現させたのがキャリスだった。

 オメガ、ジェリコ、キャリスの3人はウィニペグの出身。キャリスをNJPWワールドの解説者に推薦したのはオメガで、キャリスをインパクトの副社長に推したのはジェリコだと言う。(ちなみに、アンセム社のレオナルド・アスパー社長もウィニペグ出身)

 インパクトはTNAと名乗っていた2008年から11年まで新日と提携していたが、TNAへ海外武者修行に来ていたオカダ・カズチカを粗末に扱ったりして、新日に不信感を与えてしまった。

 アンセム社体制になってから、インパクトの幹部は新日のオフィスを訪れてオカダの件を謝罪しているが、新日との関係は修復できていない。アンセム社がキャリスを副社長として迎え入れた理由の1つが、新日との関係を修復して、再び提携を結ぶためだと言われている。

 1.4のオメガ対ジェリコはNJPWワールドの海外加入者を大幅に増やすのに貢献したが、それだけではなくAEW設立にも影響を与えたとキャリスは言う。

 「俺のアイデアでジェリコ VS オメガの試合を実現させた。そして、トニー・カーン(AEW社長)は、あの試合がなければAEWは生まれなかったと言っている」

 キャリスだけでなく、インパクトはアンダーソンとギャローズにも新日本との関係修復を頼んでいる。

 昨年12月に行われたスーパーJカップには、インパクト所属のクリス・ベイがサプライズ参戦したが、これは新日とインパクトの距離が縮まっている証でもある。

AEW前王者のモクスリーが新日に再参戦?

 オメガにAEWヘビー級のベルトを奪われたモクスリーだが、まだIWGP USヘビーのベルトは保持している。

 2020年の1・4でランス・アーチャーに勝ってIWGP USヘビー級王者となったモクスリーだが、2月に鈴木みのる相手に2度目の防衛を果たしてから1年近く新日のリングに上がっていない。

 新型コロナウイルスで海を渡っての移動が難しくなったことが大きな原因だが、2月末にジェリコに勝って第2代AEWヘビー級王者となり、AEWのリングから離れられなくなったという理由もある。

 AEWヘビー級のベルトをオメガに奪われたモクスリーは、今年の1.4で大型スクリーンを通して、新日への復帰を表明。

 AEWとの契約では新日本のリングで試合をすることは許可されているが、それは日本国内のリングでという条件付きだ。

 その契約内容がここに来て見直されたという話もあり、モクスリーが新日のロサンゼルス道場で挑戦権を持つKENTAを相手にIWGP USヘビー級の防衛戦を行うのではという期待が高まっている。

 この一戦がアメリカ国内で実現すれば、AEWと新日の距離も縮まってくるはずだ。

日米のプロレス・ファンが待ち望む「ゴールデン☆ラヴァーズ」による頂上決戦

 飯伏がIWGPヘビー級とIWGPインターコンチネンタルの二冠王者になると、AEWヘビー級とAAA世界ヘビー級二冠王者のオメガは、「ようやくですね。おめでとう」とかつてのパートナーを祝福した。

 新日本への移籍も、ジュニアヘビー級からヘビー級への転向も飯伏が先だったが、G1制覇、IWGPインターコンチネンタル、IWGPヘビー戴冠とヘビー級ファイターとして結果を出したのはいつもオメガが先だった。

 「ようやく」追いついた飯伏がオメガを超えるには、王者同士の直接対決で勝つしかない。

 オメガは飯伏への思いをこう告白している。

 「俺と飯伏は今は離れ離れになっているけど、俺達のストーリーは大きく膨らんでいる。離れているからこそ、逆に大きなストーリーを生んでいるんだ」

 二人の再戦の舞台として、二冠王者同士の頂上決戦以上に適した場所はない。

 オメガのマネージャー役を務めるキャリスは、「イブシは素晴らしいレスラーだが、世界一のレスラーであるケニー・オメガの足元にも及ばない」と二人の格の違いを主張する。

 その理由をキャリスは次のように説明する。

 「イブシの問題は能力の欠如ではなく、想像力の欠如だ。ケニーを偉大にしているのは、運動能力だけではなく、次元を超えた思考力。イブシはIWGPの枠の中で考え、戦っている。イブシが本当に進化するためには、ケニーのように飛行機に乗り、世界中でタイトルを守る必要がある」

 コロナが落ち着いて、レスラーたちが日米のリングを自由に行き来できるようになるのが大前提だが、そのときにはゴールデン☆ラヴァーズでマット界を盛り上げてもらいたい。

 コロナによって多くの大会が中止になり、観客数も制限され、大きな声を上げての応援もできず、プロレスラーだけでなく、プロレス・ファンも苦しい思いを強いられている。ゴールデン☆ラヴァーズ同士による頂上決戦が実現すれば、「令和の10.9」としてドーム球場が超満員札止めになることだろう。

 人類とプロレス界がコロナに打ち勝ったときには、日米のファンが待ち望む黄金カード以上に相応しい対戦はない。