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ダルビッシュとスネルのWエースを獲得したパドレス。有望株を放出せずに、大物釣りに成功!

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
パドレスに移籍したダルビッシュ有とビクター・キャラティニ(撮影:三尾圭)

 ダルビッシュ有とブレイク・スネル。サンディエゴ・パドレスはメジャーを代表する先発投手を2人も電撃大型トレードで獲得した。

 34歳のダルビッシュはオールスターに4度選ばれ、2013年と20年の2度に渡ってサイ・ヤング賞投票で2位に入り、28歳のスネルは2018年にアメリカン・リーグのサイ・ヤング賞に選ばれている。

 今回のトレードでパドレスが凄かったのは、年俸もお手頃で実績のあるエース級投手を獲得するのに、交換要員としてメジャーでレギュラークラスの選手を手放さず、球団のトップ・プロスペクト(有望株)のマイナーリーガーも1人しか手放さなかった点。こんな離れ業を成功できたのも、パドレスがマイナー組織に他球団が欲しがるような選手を何人も抱えているからだ。

 数年をかけてマイナー組織を整備して、2つのトレードを成功させたパドレスのA.J.・プレラーGMの手腕は見事だった。

 MLB公式サイトは、「シーズン前」と「シーズン中」の年に2回、ファームの充実度を測る「ファーム・システム・ランキング」を発表しているが、パドレスは「2017年シーズン中」から最新の「2020年シーズン中」まで7回連続でトップ3にランクインしている。とくに「2018年シーズン前」から「2019年シーズン中」までは4回連続で1位に輝くほどにファーム・システムが充実している。

 パドレスのファームには「2020年シーズン中」のプロスペクト・ランキングで100位以内に入った選手が5名もいる。

パドレスの有望マイナーリーガー。順位はMLB公式サイトの最新プロスペクト・ランキング。「メジャー」欄の年はメジャー・デビュー予想(表作成:三尾圭)
パドレスの有望マイナーリーガー。順位はMLB公式サイトの最新プロスペクト・ランキング。「メジャー」欄の年はメジャー・デビュー予想(表作成:三尾圭)

 プロスペクトの才能は20から80の間で評価され、80点満点は「MVPやサイ・ヤング賞レベル」、75点が「リーグを代表するエース/中心打者レベル」、65点は「オールスター選手レベル」、50点が「平均的なメジャーリーガー」、40点は「メジャーの控え選手レベル」といった目安になっている。

 2017年のドラフトで1巡目全体3位指名を受けてパドレスに入団したマッケンジー・ゴアは、速球、カーブ、スライダー、チェンジアップのどれもが一級品で、制球力にも優れた左腕。もしも21年シーズン序盤にゴアがメジャー・デビューを飾れば、ナショナル・リーグの新人王最有力候補に推すアナリストは多い。

 パドレスではフェルナンド・タティースJr.と並んでアンタッチャブルな存在で、ゴアのトレード価値はダルビッシュの3倍以上と算出されている。(トレード価値とは選手の実力だけでなく、年齢、メジャーリーグ経験年数、契約内容などが加味されるので、若い選手の方が高くなる傾向がある)

パドレスの将来のエースとして期待されるマッケンジー・ゴア
パドレスの将来のエースとして期待されるマッケンジー・ゴア写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ダルビッシュは2021年の年俸が2200万ドル、22年は1900万ドル、23年が1800万ドルと契約が3年残っているが、ダルビッシュ・クラスの投手をこの年俸で3年保持できるのは非常にお得である。

 ダルビッシュは20年のナショナル・リーグのサイ・ヤング賞投票で2位だったが、3位に入ったニューヨーク・メッツのジェイコブ・デグロムの21年度年俸は3350万ドル。1位のトレバー・バウアーはフリーエージェントでまだ来季の所属先は決まっていないが、バウアーを獲得するのには年俸3000万ドル以上が必要になると言われている。

 ダルビッシュの市場価格は3000万前後であり、年間1000万ドルほど安い価格で球界屈指の投手を手にできたのだから、パドレスのプレラーGMは大きな仕事を成し遂げた。

 ダルビッシュとセットで専属捕手のビクター・キャラティニも獲得したが、この2選手の交換相手は来オフにはFAになるメジャー3番手レベルの投手と、4人の若いマイナーリーガーだった。

12.4のトレード価値と交換で、25.6のトレード価値を得たパドレス

 メジャーリーガーとマイナーリーガーのトレード価値を算出するサイト「トレード・バリューズ」によると、ダルビッシュのトレード価値は20.1で、トレード価値5.5のキャラティニを足すとパドレスが得た選手の合計トレード価値は25.6。見返りとして差し出した5選手の合計トレード価値は12.4で、半分にも満たない。

パドレスとカブスのトレードに絡んだ選手の2020年シーズン年俸とトレード価値(表作成:三尾圭)
パドレスとカブスのトレードに絡んだ選手の2020年シーズン年俸とトレード価値(表作成:三尾圭)

 カブスとしてはもう少し強気に出て、マイナーリーガーを4人ではなく2人にして、その代わりとしてトレード価値29.5のジェイク・クロネンワースをもらうべきだった。

 2020年に打率.285を打って、新人王投票で2位に入ったクロネンワースだが、パドレスは4年総額2500万ドルの契約で金河成を獲得したばかり。韓国ではショートを守った金だが、パドレスには不動のショートのタティースJr.がいるので、クロネンワースと正二塁手の座を争うことになる。金の加入により、クロネンワースは控えに回る可能性が高くなり、タイミング的にもクロネンワースは獲得できたはずだ。

 もしくは、キャラティニの穴を埋める存在として、有望株のルイス・キャンプサーノを要求しても良かった。キャンプサーノのトレード価値は32.1なので、パドレスが簡単に手放す選手ではないが、ダルビッシュという切り札を持っていたのだから、もっと強気に出てもよかった。カブスはキャラティニに続いて、正捕手のウィルソン・コントラレスの放出も画策しているので、キャンプサーノを獲得して、ミゲル・アマヤと正捕手争いをさせるべきだった。

トレード上手なレイズからスネルを獲得

レイズのワールドシリーズ出場に貢献したブレイク・スネル
レイズのワールドシリーズ出場に貢献したブレイク・スネル写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 サイ・ヤング賞投手のブレイク・スネルを獲得したタンパベイ・レイズとのトレードでも、プレラーGMは敏腕ぶりを発揮している。

 スネルは2021年の年俸が1050万ドル、22年は1250万ドル、23年が1600万ドルと非常にお買い得な契約が3年も残っており、52.9のトレード価値を持った選手。

 交渉相手のレイズはトレード上手な球団として知られており、これまでに何度も主力選手との交換で多数のマイナーリーガーを獲得して、金満球団のニューヨーク・ヤンキースやボストン・レッドソックスに対抗できるチーム力を維持してきた。カブスとのトレードのような「一方的」な交渉はできずに、52.9のトレード価値を持つスネルを獲得するために、60.9のトレード価値を失った。

パドレスとレイズのトレードに絡んだ選手の2020年シーズン年俸とトレード価値(表作成:三尾圭)
パドレスとレイズのトレードに絡んだ選手の2020年シーズン年俸とトレード価値(表作成:三尾圭)

 スネル獲得の代償として、パドレスのマイナーで有望株ランキング3位(30球団全体のランキングでは23位)のパティーニョを手放したが、残りの3選手は「2018年シーズン中」のランキングでは30球団全体26位だったフランシスコ・メヒア(19年にメジャー昇格を果たしたために、19年以降はランキング対象外に)、パドレスのランキング7位のコール・ウィルコックス、パドレスのランキング14位のブレイク・ハント。ウィルコックスは評価50、ハントは45の選手だ。

 球団内ランキング・トップ10に入るプロスペクトを2人も差し出したパドレスだが、まだ超有望株のゴアと2世選手のライアン・ウェザーズがいるので、ダメージはそれほど大きくはない。

 パドレスとカブスのトレードはパドレスが圧倒的に得をする可能性が高いのに対して、パドレスとレイズは両チームにとってプラスとなる「Win-Win」なトレードになりそうだ。

サイ・ヤング賞投手のブレイク・スネルに匹敵するトレード価値を持つルイス・パティーニョ(写真:三尾圭)
サイ・ヤング賞投手のブレイク・スネルに匹敵するトレード価値を持つルイス・パティーニョ(写真:三尾圭)

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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