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GM兼監督就任の石井一久 メジャーでのチームメイトには監督経験者がたくさん

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
ドジャース時代の石井一久・楽天新監督とデビッド・ロス現カブス監督(撮影:三尾圭)

 三木肇監督の退任により、東北楽天ゴールデンイーグルスの新監督に就任したゼネラル・マネージャー(GM)の石井一久。

 監督経験どころかコーチ経験もない石井の監督就任を不安視する声も上がっているが、かつてメジャーで戦った仲間の中にはコーチ未経験で監督に就任して成功を収めた仲間がいる。

 現役時代にはロサンゼルス・ドジャースで3シーズン、ニューヨーク・メッツで1シーズンの合わせて4シーズンをメジャーで過ごした石井。4年間で一緒に戦ったチームメイトの数は123人に上る。

 そのなかで3年間チームメイトとして一緒に過ごした選手は、現在はサンディエゴ・パドレスのアドバイザーを務める野茂英雄を含めて12人。その12人中3人がメジャーリーグの監督を務めるのだから、驚くべき高い確率だ。

ドジャースを32年ぶりの優勝に導いた日系人監督のロバーツ

 今季、悲願の世界一を達成したドジャースの日系人監督、デーブ・ロバーツは石井がメジャー・デビューを果たした2002年にリードオフマンとしてチーム最多の45盗塁を記録。2004年シーズン半ばにドジャースからボストン・レッドソックスへトレードされ、その年のアメリカン・リーグ・チャンピオンシリーズ第4戦の9回裏に代走に出ると、盗塁を決めて同点のホームを踏んだ。ニューヨーク・ヤンキース相手に0勝3敗と追い詰められていたレッドソックスは、ロバーツの盗塁をきっかけに同点とすると、延長でサヨナラ勝ち。そこから奇跡の3連勝をして、メジャーの歴史で初めて3連敗から4連勝したチームとなった。その勢いでワールドシリーズも制して、86年ぶりとなる世界一の座に着いた。レッドソックスの呪いを解く原動力となったロバーツの盗塁は、今でもボストン市民の間では語り草となっている。

 2009年に現役を引退するとパドレスのコーチに就任。2015年には半年だけ代理監督を務め、2016年からドジャースの監督に抜擢された。

 ドジャースでは就任1年目からチームを地区優勝に導いて最優秀監督に選ばれ、2年目と3年目はワールドシリーズまで勝ち進むも、あと一歩のところで世界一の栄冠を逃す。今季、3度目の正直となったワールドシリーズを制覇。ドジャースを32年ぶりのワールド・チャンピオンに導いた沖縄生まれのロバーツはワールドシリーズ優勝監督の名誉を手にした。

現役時代は盗塁の名手として活躍したデーブ・ロバーツ(写真:三尾圭)
現役時代は盗塁の名手として活躍したデーブ・ロバーツ(写真:三尾圭)

指導者経験なしでカブスの監督に就任したロス

 現シカゴ・カブス監督のデビッド・ロスがメジャー初安打を放ったのは2002年9月2日。ロバーツの代打として打席に立ち、二塁打を打った。ドジャースの控え捕手として、石井と3シーズン一緒にプレーしたロスは、メジャー生活15年間で7球団を渡り歩き、11人もの日本人投手の球を受けてきた。

 2016年にはカブスの控え捕手として、カブスの108年ぶりの世界一に貢献。第7戦ではシリーズ史上最高齢でのホームランを放ち、ワールドシリーズ優勝を手土産に現役を引退。引退後は石井と同じようにカブスのフロントや解説者を経験した後、昨オフに指導者経験なしでカブスの監督に就任。1年目からカブスをプレイオフに導いた。

ドジャース時代に何度かバッテリーを組んだ石井一久とデビッド・ロス(写真:三尾圭)
ドジャース時代に何度かバッテリーを組んだ石井一久とデビッド・ロス(写真:三尾圭)

監督就任1年目で世界一になったコラ

 3人目は来季からレッドソックスの監督に返り咲くアレックス・コラ。

 1998年から2004年までドジャースの内野手として活躍。メジャーで14年間過ごした後、2011年に引退。テレビ解説者を4年間担当して、2017年にヒューストン・アストロズのベンチコーチ(ヘッドコーチ)に就任。ワールドシリーズではロバーツ率いるドジャースを退けて、球団初となる世界一に輝き、翌18年からはレッドソックスの監督に就任すると、またしてもロバーツのドジャースを破り、監督就任1年目でワールド・チャンピオンになった。

 しかし、アストロズのサイン盗み問題で主導者として働いていたことが明らかになり、昨オフにレッドソックスの監督の座を解任されたが、今オフに復帰して、また来季からはレッドソックスの指揮を執る。

現役時代はいぶし銀の働きでチームに貢献したアレックス・コラ(写真:三尾圭)
現役時代はいぶし銀の働きでチームに貢献したアレックス・コラ(写真:三尾圭)

ヤクルト・高津監督ともメジャーでチームメイト

 この3人以外にも、石井は監督経験者と一緒にメジャーでプレーしている。

 古巣の東京ヤクルトスワローズで監督を務める高津臣吾は2014年にメッツでチームメイト。埼玉西武ライオンズで二軍監督を務める松井稼頭央もこのときのチームメイトだった。

 石井がシーズン13勝目を上げた2004年8月29日のメッツ戦で満塁本塁打を放ったロビン・ベンチュラは、この2004年シーズンを最後に引退。2011年のオフにコーチ、指導者未経験でシカゴ・ホワイトソックスの監督に就任して、5年間チームを率いた。

 また、北海道日本ハムファイターズで投手コーチを務める木田優夫も2003年と2004年にドジャースでチームメイト。

 石井はメジャー生活4年間で、引退後に監督になる数多くのチームメイトに囲まれてプレーしてきた。その経験を生かせば、指導者経験がなくても、監督としての成功に役立つはずだ。

 ドジャースで3年間ともにプレーしたロバーツ、ロス、コラの存在と監督としての成功は、石井にとって心強い支えになるだろう。

メジャー時代のチームメイトのように、監督としても成功を収めたい石井一久(写真:三尾圭)
メジャー時代のチームメイトのように、監督としても成功を収めたい石井一久(写真:三尾圭)
スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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