JDG48。

 ジャカルタを拠点として活動するJKT48のような秋元康氏がプロデュースするAKB48の海外グループではなく、ニューヨーク・メッツの背番号48番、ジェイコブ・デグロム(Jacob deGrom)を筆者が勝手に命名したニックネームだ。

 今季でメジャー5年目を迎えるJDG48は、とんでもない記録を達成しようとしている。

 今季は9月6日(日本時間7日)までの時点で、28試合に先発して、8勝8敗。この数字だけ見ると、先発3番手か4番手の平凡な投手に思えてくる。

 これまでは先発投手の実力は勝ち星で判断するのが当たり前だったが、JDG48の凄さは勝利数には現れていない。

 ナショナル・リーグ2位となる188イニングを投げているJDG48の防御率は、驚異の1.68!この部門でリーグ2位のアーロン・ノラ(フィラデルフィア・フィリーズ)の防御率が2.23なので、0.55も離したぶっちぎりのリーグ1位だ。

 1969年にマウンドの高さが現在の位置まで下げられてから、JDG48の1.68よりも良い防御率を記録した投手はドワイト・グッデンの1.53(1985年、メッツ)とザック・グレンキーの1.66(2015年、当時はロサンゼルス・ドジャースで、現在はアリゾナ・ダイヤモンドバックス)の2投手しかいない。

JDG48の防御率1.68は過去50年の中でもトップ3に入る驚異的な数字だ(三尾圭撮影)
JDG48の防御率1.68は過去50年の中でもトップ3に入る驚異的な数字だ(三尾圭撮影)

 JDG48が失点を許さないのは、ホームランを打たれないのと、ピンチで確実に抑えることの2つの理由が挙げられる。

 ホームランに関しては、28先発、188イニングを投げて、9本しか許していない。9イニング辺りの被本塁打は0.4本。

 今季は満塁のピンチで打者を13度迎えているが、13人全員を抑えている。得点圏に走者を背負ったときの被打率は.146である。

 JDG48の驚くべき記録はまだまだある。

 前回登板となった9月3日のドジャース戦で、6回を2安打、1失点に抑えたJDG48は、1985年にグッデンが記録した24先発連続3失点以下を抜いて、過去100年間でのメジャー新記録となる25先発連続3失点以下に記録を伸ばした。

 好投を続けるJDG48の勝ち星が伸びないのは、貧打のメッツ打線が援護できないからで、1失点以下で降板しながらも勝利投手になれなかった試合が10回もあるし、8敗を喫した試合全てで3失点以下で降板している。

 イニング辺りに許した走者を表すWHIPはリーグ2位の0.963で、規定投球回数を超えてWHIP1.0以下を記録している3投手の中の1人である。

 セイバーメトリクス派は防御率よりもWHIPを重視するが、彼らがもう1つ重要視するFIPも2.08で堂々のリーグ1位にランクする。FIPとは運や味方の守備力などに左右されずに投手の自己責任だと考えられている奪三振、与四球、被本塁打の3部門の数字を基に算出する疑似防御率のことだ。

 

 平均球速95.9マイル(約153キロ)のフォーシームを投げるJDG48は、パワー投手ながら制球力が非常に良く、今季の9イニング辺りの与四球数は2.0。

 速球とほとんどスピードが変わらない95.2マイル(約152キロ)のパワーシンカー、速球との球速差が7.1マイル(約11キロ)のチェンジアップ、スライダー、カーブと5つもの球種をコントロールよく投げ分ける。

JDG48は5つの球種をコントロール良く投げ分ける(三尾圭撮影)
JDG48は5つの球種をコントロール良く投げ分ける(三尾圭撮影)

 大学2年生まではショートを守っており、投手に転向したのは3年生になってからなので、打撃センスも良い。メジャー5年間で11度のマルチ安打を記録しており、これはその期間ではメジャーの投手として1位の数字だ(大谷翔平が打者として出場した試合を除く)。

 ナショナル・リーグのサイ・ヤング賞投票は、JDG48、マックス・シャーザー(ワシントン・ナショナルズ)、ノラの3投手の争いになりそうだが、勝利数と奪三振数で二冠のシャーザーを抑えて、JDG48を最有力候補に推す声は多い。