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大谷翔平のエンゼルスがゴールドグラブ賞正捕手のマルドナードを放出した理由

三尾圭スポーツフォトジャーナリスト
地区ライバルのアストロズに放出されたエンゼルスの正捕手マルドナード(三尾圭撮影)

 7月26日(日本時間27日)に守備の要であるマーティン・マルドナードをヒューストン・アストロズに放出したロサンゼルス・エンゼルス。

 昨季はゴールドグラブ賞に輝いた守備の名手を地区ライバルに放出したのはなぜか?

 大谷翔平の相棒でもあるマルドナードは、今季エンゼルスで78試合に出場して打率.223、5本塁打、32打点だったが、打撃は「オマケ」みたいなもの。マルドナードがエンゼルスで正捕手の座を勝ち取ったのはメジャー屈指の守備力を誇るから。自慢の鉄砲肩で今季も27盗塁機会中12人の走者を刺して、盗塁阻止率44.4%を記録。

 「たくさん勉強させてもらった」と大谷はマルドナードへ感謝の言葉を口にしたが、鋭く落ちる大谷のフォークを安定して捕球してきたように捕球技術にも優れたメジャーを代表する守備型捕手だ。

 守備の要であるマルドナードのトレードにエンゼルスが踏み切ったのは、「トレードには驚いたけど、僕はこのオフにFA(フリーエージェント)となるからね」とマルドナード自身がトレード発表直後に語ったように、彼がFAとなることが最大の理由だ。

 31歳のマルドナードの今季年俸は390万ドル(約4億3290万円)。オフにエンゼルスがマルドナードをFAで失った場合には、補償としてドラフト指名権が与えられるが、エンゼルスはドラフト指名権よりもマイナーリーグの投手を選んだ。

 マルドナードとの交換でエンゼルスが得たのは、21歳の左腕、パトリック・サンドバルと、昨オフに大谷がエンゼルスに入団した際にも使われた25歳未満のドラフト対象外の外国人選手との契約金枠25万ドル(約2750万円)分を得た。

 サンドバルは2015年のドラフト11巡目指名でアストロズに入団したが、入団したときの契約金は2巡目指名選手と同等の90万ドル(約1億円)を手にしており、今季はマイナーの1Aで9勝1敗の成績を残している。先発投手陣にケガ人が続出しているエンゼルスにとって、2、3年後にはローテーション入りが期待できる左腕投手を獲得できたのは大きい。

 このトレードに踏み切ったビリー・エプラーGMは、「マーティン・マルドナードをシーズンの残り60日間キープして、その後に得られるものと、21歳の若い左腕投手を獲得できるチャンスを比較したときに出した答え」がマルドナードの放出だと説明。「速球は94マイル(150キロ)で、カーブとスライダーも良いし、チェンジアップも武器になりそうだ。地元で育った子でもあり、楽しみな逸材だ」とサンドバルに期待を寄せる。

 エンゼルスはこのオフにマルドナードと再契約を結ぶことも可能で、マルドナード自身も「この決断はビジネスだ」と納得していてエンゼルスに悪感情は抱いていない。エンゼルスに戻ってくる可能性に関しても、「ドアは開けておく」と前向きなコメントを口にした。

 アストロズは同地区の球団だが、昨年は世界一になったチームで、今季もプレーオフ出場はほぼ確実。プレーオフでのプレー機会だけでなく、世界一になれるチャンスが高いアストロズは、マルドナードにとっても良いトレード先と言える。

 マイク・ソーシア監督は、このトレードが今シーズンのプレーオフ出場を諦めたものであることを否定するが、今季のプレーオフ出場よりも来季に向けたチーム再建を優先したトレードなのは明らか。

 トレードを発表した時点でのエンゼルスは、アメリカン・リーグ西地区首位のアストロズから15ゲーム差も離された地区4位。地区の順位表の上にはアストロズだけでなく、シアトル・マリナーズとオークランド・アスレチックスもいて、残り2ヶ月で逆転の地区優勝をするのは現実的ではない。そもそも、大逆転での地区優勝を諦めていないのであれば、首位のアストロズの弱点を埋める存在であるマルドナードを差し出したりはしない。

 プレーオフ出場権が与えられるワイルドカード枠争いでも、マリナーズ、アスレチックス、そしてニューヨーク・ヤンキースからも大きく離されていて、こちらも非常に険しい道だ。

 今回のトレードはマルドナードを残り60日間キープすることを諦めただけでなく、シーズンを2ヶ月残してプレーオフを諦めたことを示すものだ。

スポーツフォトジャーナリスト

東京都港区六本木出身。写真家と記者の二刀流として、オリンピック、NFLスーパーボウル、NFLプロボウル、NBAファイナル、NBAオールスター、MLBワールドシリーズ、MLBオールスター、NHLスタンリーカップ・ファイナル、NHLオールスター、WBC決勝戦、UFC、ストライクフォース、WWEレッスルマニア、全米オープンゴルフ、全米競泳などを取材。全米中を飛び回り、MLBは全30球団本拠地制覇、NBAは29球団、NFLも24球団の本拠地を訪れた。Sportsshooter、全米野球写真家協会、全米バスケットボール記者協会、全米スポーツメディア協会会員、米国大手写真通信社契約フォトグラファー。

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