Yahoo!ニュース

2021年ベストバンプはこれだ!新日本プロレス“最高の受け身”ベスト3を実況アナウンサーが独断で発表

清野茂樹実況アナウンサー
ベストバンプ賞に選出したのは飯伏幸太のこの受け身(写真:新日本プロレス/アフロ)

ファンが選ぶ2021年の新日本プロレスのベストマッチ30試合が、28日の午後8時よりCSテレ朝チャンネルの『テレ朝チャンネルpresents新日本プロレスアワード2021』で発表される。ファンに今年最も支持されたのはどの試合なのか?生放送で発表される集計結果が楽しみだが、ここではそれとは別に試合の中で相手を光らせた受け身(バンプ)に注目して、ベスト3を選んでみたい。題して筆者が選ぶ「2021年ベストバンプ」である。

第3位 ディック東郷

反則を繰り返す悪の集団・BULLET CLUBの中に、HOUSE OF TORTUREという凶悪グループが生まれたことで、今年の新日本プロレスの風景は大きく変わった。彼らは反則で暴れ回るだけではなく、巧みな試合運びが特徴である。メンバーのひとり、ディック東郷の技術力の高さは、得意技ダイビングセントーンの美しさに集約されていることは、古くからのファンならご存知だろう。そんな得意技をBULLET CLUB加入後は封印していたものの、8月8日の後楽園ホール大会で、外道と組んでエル・デスペラード、金丸義信と対戦した試合では、コーナー最上段から急降下。仰向けのデスペラードにヒザを立てられて悶絶する姿は「ついに得意技を解禁した!」と思わせてからの失敗というインパクトがあったので第3位に選びたい。また、EVILのセコンドとして介入したSANADA戦では場外に設置したテーブルに叩きつけられたり、鷹木信悟戦ではHOUSE OF TORTURE全員で場外フェンスに叩きつけられたりと、乱入した後にスポイル(排除)される際のやられっぷりも見事だったと思う。

第2位 KENTA

今年は、テーブルや椅子、ラダーなどを使った、いわゆる“ハードコアスタイル”の試合が増えた一年だった。反則裁定がなく、思う存分に凶器が使える特別ルールは、受け身によって試合内容が左右されると言って過言ではない。タイチとタマ・トンガによるアイアンフィンガーフロムヘル争奪ラダーマッチ、チェーズ・オーエンズと矢野通によるノーDQアイ・クイット・マッチでの壮絶な受け身も捨てがたいが、通常ルールにもかかわらず、棚橋弘至のハイフライフローをテーブル上で浴びたKENTAの受け身をベストバンプ第2位に挙げたい。11月6日、エディオンアリーナ大阪で行われたUS王座戦で、棚橋がコーナー最上段から場外へダイブしたことによって、木製テーブルはVの字に折れ曲がり、KENTAの背中には破片が刺さって出血したほどの衝撃であった。命中した後、しばらく動けなかった二人の姿が目に焼き付いている。両者は再びUS王座を賭けて、来年1月5日の東京ドーム大会では反則裁定なしのノーDQマッチで再戦が決定しており、この試合を超える壮絶な受け身が見られそうな予感がする。

第1位 飯伏幸太

そして、今年の新日本プロレス最大のニュースは、やはりIWGP世界王座の新設だろう。年明けから統一計画が動きだし、3月に新ベルトが完成するも、4月には初代王者・飯伏幸太が一度も防衛することなく陥落してしまう急展開には本当に驚かされた。そんな衝撃の結末を迎えたIWGP世界王座戦、4月4日に両国国技館で行われたウィル・オスプレイとの一戦でランニング・ニーアタックで宙を舞った飯伏のしなやかな受け身こそ、今年ナンバーワンだったと思う。この後、オスプレイの必殺技ストームブレイカーで3カウントを奪われ、さらには乱入したジェフ・コブの必殺技ツアー・オブ・ジ・アイランドで投げられるなど、この日の飯伏の受けっぷりは、どれも相手の力強さを光らせたという意味で絶品だった。当時はIWGP世界王座新設に関して一部ファンからの批判を浴びた時期でもあり、そうした声にも「受け身」を取って好勝負を見せた姿に敬意を込めて、ベストバンプ1位を献上したい。誤嚥性肺炎や負傷による欠場で試合が少なかったのは悔やまれるが、来年はさらに進化した華麗な受け身に期待している。

以上が、筆者の個人的な視点から選んだ「2021年ベストバンプ賞」ベスト3である。試合映像は会員制動画配信サービス「新日本プロレスワールド」にアーカイブがあるので視聴可能な人は確認してもらいたい。プロレスの名勝負と言えば、どうしても勝者の姿や必殺技に目を奪われがちだが、その陰には必ず華麗な受け身が存在する。2022年に旗揚げ50周年を迎える新日本プロレスのリング上では、いったいどんな試合が展開されるのだろうか。筆者は実況アナウンサーの一人として、他の格闘技には存在し得ない受け身の迫力や美学も伝えていきたい。

※文中敬称略

実況アナウンサー

実況アナウンサー。1973年神戸市生まれ。プロレス、総合格闘技、大相撲などで活躍。2015年にはアナウンス史上初めて、新日本プロレス、WWE、UFCの世界3大メジャー団体の実況を制覇。また、ラジオ日本で放送中のレギュラー番組「真夜中のハーリー&レイス」では、アントニオ猪木を筆頭に600人以上にインタビューしている。「コブラツイストに愛をこめて」「1000のプロレスレコードを持つ男」「もえプロ♡」シリーズなどプロレスに関する著作も多い。2018年には早稲田大学大学院でジャーナリズム修士号を取得。

清野茂樹の最近の記事