今、キックボクシング界にオープンフィンガーグローブが流行の兆しを見せている。RISEのリングでまだ数試合しか行われていないものの、本来は総合格闘技で使用される薄いグローブを使うことで、リングに新しい流れが生まれているのだ。2022年、格闘界のトレンドとなりそうな動きをいち早く紹介したい。

海外の影響が日本に及ぶ

オープンフィンガーグローブとは、読んで字の如く、指を開くことのできるグローブである。元来は寝技のある総合格闘技で使用されるものであったが、立ち技競技で使用されることも増えてきた。そのきっかけはシンガポールの格闘技団体、ONEの存在だ。巨大資本を持つ同団体はアジアのみならず、世界中から一流の格闘家を集め、独自ルールを採用。ムエタイ部門ではオープンフィンガーグローブが使われている。ONEが日本の団体とも提携を進めたことによって、国内のムエタイ興行にも影響が及び、少しずつオープンフィンガーグローブが採用されるようになってきたというのが、ここ2年ほどの流れである。

女子選手たちも志願

そして、今年5月にはRISEが、無観客テレビマッチの企画として、オープンフィンガーグローブを試験的に導入した。総合格闘技用のグローブとは仕様が異なるものの、通常のボクシンググローブより小さいため、リング内では選手同士の距離が近くなる。距離が近いと当然、パンチが当たる確率は上がる。薄いグローブは当たれば、ダメージが大きく、KOが生まれやすいというわけだ。試験的に組まれた2試合は案の定、白熱した。筆者が見る限り、オープンフィンガーの小さなグローブは腕のスイングが大きくなり、見た目にわかりやすく、顔面に当たって倒れるときのインパクトは通常のグローブマッチの比ではない。薄いグローブは殴っても殴られても危険度が高く、通常とは異なる技術体系が求められるはずだが、やりたいと公言する選手は予想以上に多く、その中には女子選手も含まれるから驚きだ。

チャンスを掴んだ選手

さらに、オープンフィンガーグローブの導入によって、新しいスターも生まれている。「キックボクシングをやる前、高校生まではストリートファイトをやっていた」と語るYA-MANである。それまでは無名だった男は今年5月に山口侑馬、9月に北井智大という格上の相手をオープンフィンガールールで次々にKOし、さらに11月には通常ルールで中村寛と迫力の殴り合いを展開。中継の解説を務めた那須川天心に「こんな試合をYA-MANと名付けたい」と言わしめた。中村との試合中にはYA-MANの名がツイッターのトレンド入り、試合後には大会MVPを獲得するなど、オープンフィンガーグローブに変えたことで、人生もがらりと変わってしまったのである。YA-MANを指導する元RISEバンタム級王者、宮城大樹は「オープンフィンガーは距離が近くなるので、YA-MANみたいなボクシング好きな選手には向いていますよ。拳のリスクは高いかもしれませんが、オープンフィンガーだと拳で当てようという意識が高くなって、通常のグローブよりしっかり拳を握るのがいいですね」と分析する。

オープンフィンガーから主役が生まれるか

予想外の反響の大きさにRISEは来年、63キロ級でYA-MAN含めた4人によるオープンフィンガールールのトーナメント開催を予定しており、出場選手の発表が待たれるところだ。「通常のグローブと比べると、どうしても外傷や指のケガが多くなりますし、装着したときに拳を握りやすいかどうかも含めてグローブの改良は試合を終える度に進めています」と運営サイドは急ピッチで準備を進める。殴り合いを好む選手たちが目の色を変えている中、来年4月2日には、RISEの看板である那須川天心のキックボクシングファイナルマッチが発表された。2022年は、階級を超えた“新たな主役争い”がRISEのテーマになることは間違いない。KOが多く、刺激的な試合を生み出すオープンフィンガーグローブの使い手が、その座を射止める可能性も決して少なくはないだろう。

※文中敬称略