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スーパーバンタム級で更なる進化を遂げる井上尚弥 フルトンとの展開予想は

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:松尾/アフロスポーツ)

ボクシングバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(29=大橋)とスーパーバンタム級2冠王者のスティーブン・フルトン(28=アメリカ)の対戦が発表された。試合は5月7日に横浜アリーナで開催される。

高いモチベーション

今回の試合に向けて、井上は「過去、階級を上げたここぞという試合では良い試合ができている。自分自身に期待している」と話していた。

井上が初めて世界王座を獲得したのは2014年、ライトフライ級で王者のアドリアン・エルナンデス(メキシコ)を6RTKOで下した試合だ。

その後、階級を上げていき、2014年スーパーフライ級の初戦では、王者オマール・ナルバエス(アメリカ)2RKOを下し、2018年バンタム級での初戦では王者ジェイミー・マクドネル(イギリス)に1RTKOで勝利している。

階級を上げたばかりの試合で、世界王者達を圧倒してきた。多くの選手が階級を上げた直後は苦戦を強いられるものだが、井上は強さを増している。

辛い減量からの解放や、新しい階級への挑戦がモチベーションを上げているのだろう。

今回のスーパーバンタム級での挑戦も、「自分の挑戦ということにもなってきます。過去最大のモチベーションをもってトレーニングに励んでいけると思っています」と自信を語った。

階級を上げて初めての試合、更にこの階級で最強との呼び声も高いフルトンとの試合が決まったのも井上の実力が評価された結果だ。

本人も話していた通り、最もモチベーションが高まるチャレンジとなるだろう。

対戦相手フルトン

井上を迎え撃つ王者フルトンは「ボクシングファンから逃げていると言われてきたが、そうでない事を証明するために井上との対戦を熱望していた」と語った。

当初は、減量苦からフェザー級へ階級を上げ、元統一王者のブランドン・フィゲロアとの再戦が内定していた。しかし、フルトン自ら井上との対戦を望みこの試合が実現した。

井上と対戦すればビッグマネーが手に入り、勝利すれば世界中に名が知れ渡る。フルトンにとって過去最大のビッグマッチとなるだろう。

「私はチャレンジすることや興奮できるような試合をすることが好き。断る理由はない。重要なことはリングの上でどう対応して調整できるか。どんな相手にも対応できて勝てると思っている」と抱負を語った。

試合の行方は

試合では距離を詰めていく井上と、距離を取りながら戦うフルトンという構図が予想される。

フルトンはパワーがあるタイプではないが、引き出しが多く、適応能力が高い。特徴的なのは179cmの長いリーチだ。フルトンの懐に入り込み、どう崩していくかが焦点となりそうだ。

井上にとって、階級を上げたばかりの初戦。対戦相手の耐久力も増し、今までのように一発のパンチで倒せる可能性は低くなる。着実にポイントを重ね、フルトンが疲労したラウンド終盤でのTKO勝利が妥当だろう。

しかし、井上は我々の常識を超えた戦いを見せてきた。モチベーションの高さやフィジカルの好調も考えれば、序盤から中盤でのKO勝利も期待できる。

この階級でどんなパフォーマンスを見せてくれるか楽しみだ。

今回の試合で井上が勝利すれば、二つのベルト(WBA&IBF)を持つムロジョン・アフマダリエフとの対戦が見えてくる。

その試合にも勝利すれば、一年でこの階級を制覇できる。だれも達成したことがない快挙となるだろう。

ボクシング界の歴史を塗り替えていく井上の快進撃に期待したい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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