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なぜ拳四朗は京口紘人に打ち合いで勝つことができたのか 勝敗のポイントは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供 FUKUDA NAOKI

11月1日、さいたまスーパーアリーナでボクシングライトフライ級統一戦が行われ、WBC王者の寺地拳四朗(30=BMB)と、WBAスーパー王者の京口紘人(28=ワタナベ)が対戦した。

日本の選手同士の世界戦は、2012年に行われた井岡一翔と八重樫東戦以来、10年ぶりとなる。

試合の展開

試合が始まると、寺地がジャブをつき先手を取る。京口は様子をみながら距離をつめようとするが、寺地のジャブが鋭く前に進めない。

寺地は中間距離からキレのあるストレートを打ち込み、ポイントを取っていく。京口は接近戦に持ち込みたいところだが、寺地の距離の取り方が上手くなかなかパンチが届かない。

中盤になると、距離感を掴んだ寺地が多彩なパンチを見せ始める。接近戦では激しい打ち合いとなるが、絶妙な距離感でパンチを外していた。

そして第5ラウンド、寺地のワンツーがヒットして京口がダウン。勝負どころと見た寺地は、距離を詰めてパンチをまとめていく。

しかし、接近戦は京口が一枚上手だった。すかさず得意の左フックを当てて、寺地をロープに詰めると、パンチをまとめて見せ場を作った。

そして第7ラウンドの終盤、寺地が放ったワンツーがヒットし京口がダウン。同時にレフリーが試合を止めた。

これにより寺地が7RKOで勝利し、ライトフライ級2団体統一を果たした。

勝敗のポイント

寺地は得意のジャブで終始ペースを譲らなかった。試合後に京口も、「思った以上に強いジャブで、戦いながらどうしようかと考えてしまった」と語っていた。

通常ジャブは、相手との距離感を測ったり攻撃の流れを作るパンチだが、寺地のジャブはストレートのように強い。

ジャブだけで相手にダメージを与え、見栄えも良いのでポイントも取れる。更にモーションが少なく、非常に見えにくいタイミングで放つため気づいたら目の前に飛んでくる。

ジャブに気を取られていると、フックやアッパー、ストレートなど他のパンチも来るため、攻撃の予測が難しい。

寺地自身も「一番自信があるのはジャブ。ジャブが当たれば距離感がわかる」と話していたが、まさにこの試合もジャブを基点に試合を組み立てていた。

また、京口の得意な接近戦でも打ち合い、互角に渡り合っていた。

防衛戦で矢吹に敗れ、自身のボクシングの幅を広げるために、接近戦での攻防を徹底的に練習していたようだ。

「敗戦で学んで対応力がついて、色々な面で成長ができた」と話すようにレベルアップが感じられた。

敗れはしたが、京口も見せ場を作って試合を大いに盛り上げた。ライバルの京口だからこそ、あの熱戦が生まれたのは間違いない。

試合後に京口は「拳四朗は強かった。結果を出せなかったのが悔しい。進退は明言できない、ダメージもあるので少しゆっくりしたい」と話している。

両者ともに素晴らしいパフォーマンスを発揮した見事な試合だった。

寺地の今後

今後はこの階級での4団体統一を目指すようだ。

寺地は試合後のインタビューで「ゴンザレス選手。勝ったので次やりましょう」と階級の統一に向けて呼びかけた。

セミファイナルでは、ライトフライ級WBOタイトルマッチが行われ、チャンピオンのジョナサン・ゴンザレス(プエルトリコ)が、挑戦者の岩田翔吉(帝拳)を破り、防衛に成功した。

寺地は試合前に「一般の人が見てもよく分かるし、シンプルに(ベルトが)4つあればすごい。流れ次第だが4団体統一したい」と語っていた。

残るベルトは、WBO王者ゴンザレスの他、IBF王者のシベナティ・ノンティンガ(南アフリカ)が所持している。

世界的にも4団体統一はトレンドだ。その階級で最も強い王者を決めるのに一番わかりやすい指標であり、全階級でも8名しか達成していない偉業だ。

更にライト級以下の軽量級では達成した選手はいない。

寺地は減量がきついため、上の階級に上がる可能性もあるが、ライトフライ級初となる4団体統一へのチャレンジにも期待したい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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