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イレギュラーな世界戦で初防衛の谷口将隆 勝敗のポイントはサイドの動きとアッパー

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供 FUKUDA NAOKI

22日、後楽園ホールでボクシングWBO世界ミニマム級タイトルマッチが行われ、王者の谷口将隆(28=ワタナベ)が、同級5位の石沢開(25=M・T)と戦った。

前日計量で石沢が体重超過したため、谷口が勝てば初防衛、負ければ王座が空位となる変則的な試合となった。

試合の展開

序盤は、強打の石沢が迫力のあるパンチを繰り出し、谷口は攻撃をかわしながら慎重に出方をうかがっていた。

中盤になると、一発を狙う石沢に対して、谷口は打ち終わりにカウンターを合わせ始めた。

正面での打ち合いでは石沢に分があるとみた谷口は、サイドに動きながら手数を出す。

石沢も更に前に出て手数を出すが、なかなかパンチが当たらず、空振りも目立ち始めた。

中盤以降は谷口がクリーンヒットでポイントを稼ぎペースを握った。ボディによるダメージで動きが鈍った石沢に、追い討ちをかけるようにアッパーやストレートなど多彩なパンチを集めていく。

ダメージが蓄積した石沢にとって苦しい展開が続くが、負け時と打ち返し意地を見せる。

最後は、谷口のアッパーが当たり顔が跳ね上がったところで、レフリーが試合をストップ。

谷口が11ラウンドTKO勝利で初防衛に成功した。

勝敗のポイント

今回の試合では、谷口の絶妙なポジショニングが勝敗を分けた。オーソドックスとサウスポーが戦う場合、位置取りが何より重要だ。

強打を活かすため正面で戦いたい石沢に対し、谷口は常にサイドに動き続け、的を絞らせなかった。

また、谷口のアッパーも勝因の一つだ。自分より身長の低い相手に対して、アッパーは有効だ。石沢が距離をつめようとするたびに谷口のアッパーが効果的に決まっていた。

さらにボディにもパンチを集めることで、じわじわとダメージを与え、石沢の強打を鈍らせた。

マイクロ・タイソンの異名を持ち9割のKO率を誇る石沢だったが、谷口のテクニックの前に強打は不発だった。

挑戦者を気遣う王者

谷口は試合後のインタビューで、真っ先に石沢を労った。

「体調不良の中、試合に出てくれた石沢選手や大変な中、試合を組んでくれた皆さんに感謝します。石沢選手は罰も受けてすごく反省したと思う。失敗から何かがあると思うので頑張って欲しい」

試合前は、挑戦者の計量オーバーに大きなショックを受けただろう。WBOは他の団体と違い相手が計量をオーバーしたとしても、負ければベルトを失う。

リスクが高い状態で、リングに立たなければならない。しかも、相手の石沢はKO率が高く、過去にダウンを奪われた経験もある危険な相手だ。

複雑な思いもあっただろうが、応援してくれるファンや世界戦を組んでくれたジムのためにリングに立った。

負けられないプレッシャーの中で、見事なボクシングで打ち勝った。

「防衛してこそチャンピオン」と語っていた谷口だが、今回の試合で精神的にも成長し、さらに自信をつけたことだろう。

今後に向けては「今回の試合は良い経験になった。同門の京口紘人と関西でダブル世界戦をやりたい」と口にした。

勝負強さを貫いた、谷口の今後に期待したい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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