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井上尚弥に再び立ちはだかる5階級王者ドネアとは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:REX/アフロ)

ボクシングWBA世界スーパー&IBFバンタム級王者の井上尚弥(28=大橋)と、WBC同級王者ノニト・ドネア(39=フィリピン)による3団体王座統一戦が発表された。

試合は6月7日、さいたまスーパーアリーナで行われる。

WBSSバンタム級トーナメント

井上とドネアは2年半ぶりの再戦となる。

前回の試合は2019年11月、WBSSバンタム級決勝戦で対戦した。

WBSS(ワールドボクシング・スーパーシリーズ)は、階級の最強を決めるトーナメントで、各団体からトップレベルの選手、8名が選出された。

井上は1回戦で、元WBAバンタム級スーパー王者のファン・カルロス・パヤノ(ドミニカ共和国)を右ストレート一撃で仕留めKO勝利。

続く準決勝では、元IBFバンタム級王者のエマヌエル・ロドリゲス(プエルトリコ)を相手に3度のダウンを奪いTKO勝利。圧倒的な強さで決勝に駒を進めた。

一方ドネアは、1回戦にWBAスーパー王者のライアン・バーネット(イギリス)と戦ったが、バーネットが右側の腹斜筋を痛め棄権。4回終了でTKO勝ちを収めた。

続く準決勝では、WBO王者のゾラニ・テテ(南アフリカ)と対戦予定だったが、テテが肩の負傷を理由に離脱。代役のステフォン・ヤング(アメリカ)と対戦し、6回KO勝利で決勝に駒を進めた。

両者の勝ち上がりを見ると圧倒的な強さで決勝に進んだ井上に対し、ドネアは運も重なり決勝まで勝ち上がった印象を受けた。

井上とドネアの決勝戦

試合前の予想では井上圧勝の声が多く聞かれたが、互角の展開となった。

好調な立ち上がりを見せた井上だったが、2回にドネアの左フックを浴びて眼窩(がんか)底などを骨折。途中ダウン寸前まで追い込まれる場面もあり、苦戦を強いられた。

11回で井上がダウンを奪い、3-0の判定勝利を収めたが、ドネアが予想以上に健闘したことで語り継がれる名勝負となった。

今回はその試合から2年半ぶりの再戦となる。

井上はその後も、ジェイソン・モロニー(オーストラリア)、マイケル・ダスマリナス(フィリピン)、アラン・ディパエン(タイ)など強敵に勝利し、無敗レコードを伸ばしている。

一方ドネアも、WBC王者のノルディーヌ・ウバーリ(フランス)を相手に4RKOで勝利し、無敗の暫定王者だったレイマート・ガバリョ(フィリピン)もKOで下している。

ドネアは今回の試合に向けてインタビューで「あの試合が私を生き返らせてくれた。バンタム級に落として約2年、スピードが戻ってきた。前からあるパワーを加えて、スピードとパワーが融合した。井上は強かったが倒せたはずだ、という思いがある」と自信を見せる。

正直なところ、ドネアがフェザー級を主戦場としている時は、得意のパンチが発揮されていないように感じた。

元WBAフェザー級スーパー王者のニコラス・ウォータース(ジャマイカ)にはKOで敗れ、元WBOフェザー級暫定王者のカール・フランプトン(イギリス)にも判定で敗れている。

いきなり2階級も下げてバンタム級トーナメントに出場した時は驚いたが、井上と互角に戦ったことで本来の実力を示した。

対戦の行方は

井上は今回の試合に対して「ドネアとの再戦が決まったとき、正直ワクワクというか、2019年11月7日の試合を鮮明に思い出した。一度決着はついていますが、決まったからには必ず前回以上の内容で勝ちます」と抱負を語っている。

井上は、バンタム級での4団体統一を目指しており、その後にはスーパーバンタム級への進出も視野に入れている。

予想では前回の試合に勝利した井上が有利だろう。しかし、ドネアの井上戦に対するモチベーションは非常に高く「お互い強くなっているから興奮度は増している。もう一度やりたいと思っていたから本当に楽しみ」と語っていた。

年齢も39歳となっているドネアだが、井上というライバルのおかげで、全盛期の勢いを取り戻しつつある。フライ級からフェザー級まで5階級を制覇したレジェンドが、再び井上の前に立ちはだかる。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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