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世界王者の井岡一翔 対戦相手がもっとも恐れるパンチとは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供 FUKUDA NAOKI全て

12月31日、ボクシングWBO世界スーパーフライ級タイトルマッチが行われ、同級王者の井岡一翔(32=志成)が同級6位の福永亮次(35=角海老宝石)と戦った。

井岡にとって4度目の防衛戦となった。

試合の展開

試合が始まると、挑戦者の福永が積極的に攻撃を仕掛ける。福永はこの階級で驚異のKO率を誇り、15勝のうち14のKO勝利している。

自慢の強打を武器に攻める福永に対して、井岡は距離を取りながら様子を見る。

次のラウンドでは、井岡もボディにパンチを集めて攻撃を仕掛けていく。徐々にお互いの距離が詰まり、激しい攻防が繰り広げられた。

前半は、福永に勢いがあり互角の展開を見せていたが、徐々に井岡がペースを掌握していった。

井岡は、追い討ちをかけるようにボディにパンチを集める。更にモーションのない鋭い右ストレートで、福永の勢いを止めていた。

攻撃が単調になってきた福永に対し、井岡はボディ、フックと多彩なコンビネーションを繰り出す。

しかし、後半になると井岡もペースダウン。福永が盛り返しをはかり、ロープでパンチを集めて逆転を狙うが、井岡の防御は崩せない。

最後は井岡がポイントをリードして流すのに対し、福永は攻めて見せ場を作った。

勝敗は判定となり3-0(115-113、116―112、118―110)で、井岡が4度目の防衛に成功した。

勝敗のポイント

採点は競っていたが、試合内容を見れば井岡の完勝だった。

井岡のボクシングは職人芸のようだ。パンチを当てるタイミングが独特で、気づいたらパンチが相手に届いている。

試合後のインタビューで福永も「パンチが芯に当たらなかった。顔色も変わらないし、モーションがなくてパンチが見えなかった」と話していた。

試合になるとパンチを強く打とうとして、力みが出るものだ。しかし、井岡のパンチには気配がない。

これまで井岡と対戦した選手たちからも「気づいたらパンチをもらっていた」という話を聞く。気づけないパンチというのは、向かい合った相手からすれば恐怖だろう。

決して派手なスタイルではないが、じわじわと相手を追い詰めていく。高い技術と忍耐力がある井岡だからこそできる芸当だろう。

統一チャンピオンになる

試合後には「世界戦は簡単に勝ち続けられない。舞台慣れしていても結果を残すことができてよかった」と安堵の表情を浮かべていた。

今回は直前に対戦相手が変更するなどイレギュラーな試合だった。当初決まっていた対戦相手のアンカハスと福永が同じサウスポーということで、試合を引き受けたようだ。

後半に攻められ、防御に徹する場面も見受けられたが「リスクをとって戦いたくなかった。打ち合いでダウンや怪我をしたくなかった」と話していた。

前半でポイントをリードしていたので、無理に攻めに行かなかったのだろう。

今後、井岡が目指すのは統一戦だ。春ごろにIBF王者のアンカハスとの対戦を目指す。

この階級は以下の世界王者たちが君臨している。

WBA&WBC ファン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)

IBF ヘルウィン・アンカハス(フィリピン)

WBO 井岡一翔

アンカハスは、2月にフェルナンド・ダニエル・マルティネス(アルゼンチン)と対戦する。その試合に勝利すれば、井岡との対戦に合意している。

また、統一王者のエストラーダは、元王者のローマン・ゴンサレス(ニカラグア)との対戦が決まっている。

順当に勝ち進めば、4つのベルトをかけた試合も見えてくるだろう。

井岡は「来年は統一チャンピオンになる。アンカハスに勝てばそれにグッと近づく。2本ベルトがまとまれば、次を引き寄せられる」と抱負を語った。

32歳となった井岡の戦いは続く。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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