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衰えしらずのドネアが無敗王者を衝撃KO 一撃ボディの地獄の苦しみとは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

12日、アメリカでWBC世界バンタム級タイトルマッチが行われ、WBC世界バンタム級王者ノニト・ドネア(フィリピン)が、WBC世界同級暫定王者レイマート・ガバリョ(フィリピン)と団体内王座統一戦を戦った。

試合の展開

試合が始まると、お互いに様子を見ながらジャブをつく。ドネアはパンチを当てようと攻めに行くが、ガバリョの距離の取り方が上手く、なかなか当たらない。

ガバリョはドネアの打ち終わりにパンチを合わせ、様子を見ながら戦っていた。

2ラウンド目に突入すると、ドネアがプレッシャーをかけて攻めにいくが、ガバリョも負けじとパンチを打ち返しヒートアップしていく。

3ラウンド目の終盤には、ドネアのパンチでガバリョがカット。負傷したものの、攻撃の勢いは止まらない。

4ラウンド目になると、ドネアは上下にパンチを散らしながら活路を見出す。ドネアの右ストレートに対して、ガバリョが左フックを合わせてくる。そのタイミングを見計らいドネアは右ストレートをボディに打ち込んでいた。

そして4ラウンド終盤。ドネアの右フックに対し、ガバリョが右ストレートを打ち返した。その攻撃でできた隙にドネアが鋭い左ボディを放った。

ガバリョはたまらず崩れ去りダウン。レフリーがカウントを数え、一度は立ち上がる素振りを見せたが再度崩れ落ちた。

ドネアが無敗の王者を相手に圧勝し、4ラウンド終盤にKO勝ちを収め団体内の統一に成功した。

勝敗のポイント

ベテランのドネアが勝負強さを見せつけた試合だった。

距離が遠く、顔面に当てづらいと見極め、途中からボディ中心の攻撃に切り替えた。

試合を決めた左ボディは、ガバリョがパンチを放ったタイミングでレバー(肝臓)に突き刺さった。

ボディの中で特に効くと言われている部位がレバーだ。さらにパンチを放った直後は息を吸うため、その時にパンチを打たれると効いてしまう。

私も経験があるが、レバーに良いタイミングで入ると呼吸ができなくなり、全身の力が抜けて動けなくなる。

ボディはジワジワ効いてくると言われているが、レバーへのパンチは相手を一撃で仕留めるほどの威力がある。

ドネアは試合後のインタビューで、「これまで様々な試合の経験があります。左のフックを警戒していたからこそ、ボディを狙っていた」と話している。

年齢も38歳となったドネア、経験を重ねた王者の貫禄勝ちといったところだろう。

バンタム級統一に前進

試合後には井上との統一戦についての話もあった。

「お互いにリスペクトしている。ハードなトレーニングが自信を生んで成果を生んだ。まだまだできます」

ここ数日、立て続けにバンタム級の世界戦が行われている。

11日には、WBO世界バンタム級タイトルマッチで、王者のジョンリル・カシメロ(フィリピン)とポール・バトラー(イギリス)の試合が予定されていた。しかし、カシメロが体調不良で、前日計量をキャンセルしたことにより中止となった。

カシメロの代わりに元IBF同級王者ジョセフ・アグベコ(ガーナ)が出場し、暫定王座決定戦として行う話もあがったが、バトラーが拒否。

現時点ではWBOからは正式なアナウンスがないため、今後どのような判断になるか注目される。

また、14日にはWBAスーパー &IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(28=大橋)が、IBF世界同級5位のアラン・ディパエン(タイ)と防衛戦を行う。

井上は、ドネアの試合後に自身のTwitterで「期待が膨らむドネア2。まずは明後日の試合に集中。ドネア2は必ず実現させる」とコメントしている。

ドネアも井上との再戦を目指しているため、14日の試合で井上が勝利すれば、再戦が実現するかもしれない。

バンタム級の統一に向けて、着実に動き始めている。

ボクシング史上バンタム級の4団体統一を成し遂げた王者はいない。初の栄冠を掴むのは、いったい誰になるのだろうか。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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