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カシメロがまさかの減量失敗で離脱 井上尚弥が目指すバンタム級統一の行方は

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

11日(日本時間12日)に予定されていたWBO世界バンタム級タイトルマッチ、ジョンリル・カシメロ(フィリピン)とポール・バトラー(イギリス)の対戦は、カシメロの体重超過により、対戦相手をジョゼフ・アグベコ(ガーナ)に変更して行われる。

体重超過で王座剥奪

当初ドバイで予定されていたこの試合は、主催であるプロベラム社公式ツイッターからの「カシメロは体重を作ることができず、明日の試合には出ない」との発表により、急遽、対戦相手を変更して行われることになった。

世界戦の前日計量を欠席すると失格になるため、WBOはカシメロの王座を剥奪した。

カシメロは以前から体重が重く、太りやすい選手だと言われていた。2014年にも体重超過により王座を剥奪されている。

試合のない時期には、バンタム級のリミットから10キロ以上も増加し、別人のような体になる。

井上尚弥を盛んに挑発して対戦をアピールしていたのも、減量がきつくバンタム級で戦える期間が限られていたからかもしれない。

前日計量の前にまさかの事態となった。

ボクサーと減量

ボクサーは試合の前日までに決められた体重まで落とさなければならない。

体重超過で計量失格となると原則試合はできないが、興行という特性上、そのまま試合が行われるケースもある。

世界王者クラスでも減量の失敗は少なくない。その失敗原因の一つとして、短期間で体重を落とす水抜きが挙げられる。

水抜きとは、読んで字のごとく体から水分を抜く減量法だ。

サウナや練習などで汗をかき、水分補給も制限する。喉の渇きは耐え難いものがあるが、筋肉量を落とさずに体重を落とせるため、この方法を実践しているボクサーは多い。

水分は飲めばすぐ体に戻るので、計量後に補給する。

ボクシングは階級制のスポーツではあるが、前日計量さえをクリアすれば、あとは自由だ。そのため選手によっては、計量後から試合当日までの1日で、8キロ以上増量する選手もいる。

しかし、大幅な体重の増減や無理な減量法は、脱水症や熱中症などのリスクもあり、最悪の場合、命を落とす危険もある。

「減量は地獄だ」と話すボクサーもいるが、まさにそうだ。しかし、ボクシングと減量は切り離せない。

前日計量までに規定の体重をつくれなければ、プロを名乗る資格はないだろう。

バンタム級統一の行方は

今週から来週にかけてバンタム級戦線は大きく動く。

12月12日にはWBC世界バンタム級タイトルマッチが行われ、王者のノニト・ドネア(フィリピン)が暫定王者のレイマート・ガバリョ(フィリピン)と対戦する。

また、14日にはWBAスーパー &IBF世界バンタム級王者の井上尚弥(28=大橋)が、IBF世界同級6位のアラン・ディパエン(タイ)と防衛戦を行う。

ドネアとバトラーが勝利した場合、両者は同じプロモーターに所属する選手のため、そのまま統一戦に進む可能性が高い。

井上もバンタム級で4団体統一を目指しているがなかなか実現しない。14日の試合で圧勝し、他王者にアピールしたいところだ。

カシメロの離脱で混乱するバンタム級戦線は、今後どうなっていくのだろうか。来週末には統一戦の見通しが立つと期待したい。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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