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フューリーがワイルダーをKOで完全決着 史上初のヘビー級4団体統一の行方は

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
Mikey Williams / Top Rank 提供

9日(日本時間10日)、アメリカのラスベガスでボクシングWBC世界ヘビー級タイトルマッチ12回戦が行われ、王者タイソン・フューリー(33=イギリス)と前王者デオンテイ・ワイルダー(35=アメリカ)が戦った。

この試合は1年7ヶ月ぶりのダイレクトマッチとなった。

試合の展開

試合が始まるとワイルダーがボディジャブを起点に先手を取る。対するフューリーは距離をとりながら様子を見る。

第2ラウンドでは、フューリーも攻め始めるが手数でワイルダーがペースを握る。

試合が動いたのは第3ラウンド、フューリーの右がワイルダーのテンプルにヒットしダウンを奪う。

しかし、第4ラウンドでは、ワイルダーのショートの右がフューリーにヒットしダウンを奪う。

そこからダウンの応酬が続いた。

ダメージを受けているフューリーに対し、ワイルダーがショートの右で2度目のダウンを奪う。

一進一退の攻防が続くなか、徐々にワイルダーの勢いが落ちてくる。

フューリーがボディを織り交ぜたパンチを集め、ワイルダーを追い込んでいく。

そして第10ラウンドにはフューリーの右がワイルダーにヒットし再びダウンを奪う。

なんとか立ち上がったワイルダーだが、かなり効いている様子だった。

そのラウンドはなんとか逃げ切ったが、続く第11ラウンドに勝負は決まった。

フューリーがパンチをまとめ、最後は強烈な右でワイルダーを仕留めた。

激しい試合を制し、フューリーが連勝を果たした。

上機嫌のフューリーはリングの上でマイクを握り熱唱、会場が歓喜に沸いた。

写真:ロイター/アフロ

勝敗のポイント

今回ワイルダーは、過去最重量231ポンド(約108.1キロ)、対するフューリーは277ポンド(約126キロ)で試合に臨んだ。

最重量級では体重の上限がないからこそ体格差がものを言う。

前回の試合より増量したワイルダーだが、体重を増やした影響からかスタミナ不足が見受けられた。

前半にハイペースで戦っていたせいもあるだろうが、後半になるにつれ動きが落ちていった。

また、スタイルの違いも勝敗に影響した。

ワイルダーは前に出てワンツー主体の単調なボクシングだったのに対して、フューリーはサイドに動いたり接近戦で多彩なパンチを打ち分け巧みに戦った。

パワーVSテクニックで、ボクシングのスキルの差が出た試合となった。

フューリーは試合後のインタビューで「ワイルダーはタフで強いパンチを当ててきたが彼を3度倒した。世界最強は自分だ。どんな戦いでも勝ってみせる」と話していた。

今後の展開

ワイルダーとの再戦を制したフューリー、気になるのは今後の動向だ。

現在ボクシングは主要4団体に分かれているが、ヘビー級でこの4つのベルトを統一したボクサーはいない。

この階級での最強を目指していくことになるだろう。

フューリーの対抗王者となるのは、WBA、IBF、WBOの3つのベルトを持つオレクサンドル・ウシク(ウクライナ)だ。

ウシクはロンドン五輪で金メダルを獲得し、プロデビュー。

ヘビー級の一つ下の階級であるクルーザー級で4団体統一に成功している。

2021年9月には、フューリーのライバルだったアンソニー・ジョシュア(イギリス)を3-0の判定で破り、ヘビー級で3つのベルトを獲得した。

2mを超えるフューリーやワイルダーに対し、191cmと小柄だがサウスポースタイルでテクニックに優れた選手だ。

4団体統一がかかるフューリーVSウシクの対戦はぜひ見たいところだ。

しかし、ウシクの次戦は前王者のジョシュアとの報道もある。

この階級で史上初の4団体統一を果たすボクサーは誰になるのか。

混戦を極めるヘビー級に注目だ。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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