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中谷潤人が元王者の難敵を圧倒 6階級制覇を狙えるその実力とは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
Photo Credit: Mikey Williams/Top Rank

10日(日本時間11日)、アメリカボクシングWBO世界フライ級タイトルマッチが行われ王者の中谷潤人(23=M.T)が、指名挑戦者で同級1位のアンヘル・アコスタ(30=プエルトリコ)と戦った。

試合の展開

両者が入場しリングに上がると、まず身長差が目についた。

中谷はフライ級では異例の171cm(リーチ170cm)、対するアコスタは163cm(リーチ161cm)、8cmも差がある。

アコスタはKO率が87%と非常に高く強打が持ち味の選手だ。

そのため近距離でパンチを当てようとするアコスタと、高身長を活かせる遠距離で戦う中谷という構図となった。

試合が始まるとお互いに前の手で牽制し合っていたが、先手をとった中谷が左ストレートをヒットさせぺースを掴む。

続く2ラウンド目にはアコスタも距離をつめてきたが、中谷は近距離でもボディを打ちペースを譲らない。

ラウンド終盤には再び中谷の左ストレートがヒットしポイントを連取。

途中アコスタの鼻から出血があり試合が何度か止められた。

鼻から血が出ると呼吸しづらくなるだけでなく、ジャッジにも影響する。

中谷も好機とみるや、アコスタを追い詰めるようにパンチを浴びせ一気に攻める。

そして4ラウンド目、中谷がパンチを打った直後にレフリーが試合続行不可能と判断しストップ。

中谷が元王者相手を圧倒し、4ラウンドTKO勝利で初防衛に成功した。

Photo Credit: Mikey Williams/Top Rank
Photo Credit: Mikey Williams/Top Rank

中谷の強さとは

童顔で人の良さそうな顔つきとひょろっとした長身の中谷だが、パンチの破壊力は世界トップクラスだ。

アコスタは中谷のパンチで鼻骨が骨折していたという。

以前、中谷のパンチを体感するためミットを持たせてもらったが、高い身長と長いリーチから繰り出されるパンチは遠心力が加わりキレと重さがあった。

試合後のインタビューでも「いいタイミングでパンチが入ってペースを掴んだ。最初のストップで折れたのがわかった」と話していた。

また、高身長の選手はリーチを活かした遠距離を得意とする選手が多いが、中谷は近距離での攻防も巧みだ。

相手からしたら顔面が高い位置にあるのでパンチが当てにくい。それに加え、高い位置からの打ち下ろしのパンチは脅威だろう。

今回の試合でも小回りのきくアコスタに対し、接近戦でも勇敢に打ち合いペースを握っていた。

目指すは6階級制覇

中谷は今後について「統一戦やりたい気持ちが強い」と話していた。

この階級には以下の王者たちが君臨している。

WBA アルテム・ダラキアン

WBC フリオ・セサール・マルティネス

IBF サニー・エドワーズ

中谷はフライ級での長期防衛を希望しているが、23歳と若く体も成長中だ。そんな中での減量は決して楽ではないだろう。

階級アップも視野に入れていかなければならない。

ひとつ上のスーパーフライ級は選手層が厚く、日本人王者の井岡一翔をはじめ、ファン・フランシスコ・エストラーダやローマン・ゴンサレス、ヘルウィン・アンカハスなど強豪ぞろいだ。

ボクシングの本番アメリカでもSuperfly(スーパーフライ)と銘打たれた興行が組まれるほど人気が高い。

この階級への挑戦も興味深いが、まずはフライ級で実績を積んでいくようだ。

以前のインタビューでは、最終目標として6階級制覇を口にしていた中谷。

フライ級からスーパーフェザー級の長い道のりになるが、目指せるポテンシャルはある。

まずはフライ級での王座統一に期待したい。

著者撮影 長いリーチを持つ
著者撮影 長いリーチを持つ

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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