ボクシング界のレジェンド パッキャオはなぜ負けたのか?
21日(日本時間22日)ボクシングWBA世界ウェルター級タイトルマッチが行われ、6階級王者のマニー・パッキャオ(フィリピン)が同級スーパー王者のヨルデニス・ウガス(キューバ)と戦った。
当初この試合はパッキャオとWBC&IBF同級王者エロール・スペンスJr.(アメリカ)の対戦が予定されていたが、スペンスが目の負傷で欠場、前座で出場を予定していたウガスが代役として抜擢された。
試合の展開
試合会場のラスベガスT-モバイルアリーナは超満員。
パッキャオが入場すると大歓声で迎えられ、人気の高さがうかがえた。
対するウガスはWBA世界ウェルター級スーパー王者だが、今回の試合では脇役的な存在であった。
試合開始のゴングがなると、サウスポーのパッキャオが積極的に攻めに行った。
パッキャオより身長10cm以上、リーチは5cm上回るウガスは距離を取りながら様子を見る。
2ラウンド目からは、ウガスが積極的にジャブをつきペースを握る。
パッキャオは隙をついて距離をつめようとするが、ウガスの距離の取り方がうまくなかなか入れない。
追い討ちをかけるように、ウガスの右のオーバーハンドのフックがパッキャオの勢いを止める。
パッキャオは中盤以降もウガスのペースを崩せず攻めあぐねていた。
試合の終盤には、パッキャオも積極的に攻撃を仕掛けるが、疲労の色は隠せない。
勝敗は判定に持ち込まれ、115-113、116-112、116-112の3-0でウガスが勝利、王座防衛に成功した。
なぜパッキャオは負けたのか
攻勢と手数ではパッキャオが優勢だが、試合運びやクリーンヒットではウガスが上回った。
パッキャオはこれまでプロ戦績71戦62勝(39KO)8敗2分を誇るが、年齢は42歳とピークは過ぎている。
今回の試合をキャリア集大成としてリングに上がった。
当初予定されていた試合は、急遽スペンスの怪我で中止となった。
試合直前に対戦相手が変わると、これまで練ってきた対策も全て変えなければならない。
もちろん相手も同じ条件だが、対戦相手がスペンスからウガスに変わったパッキャオと、レジェンド・パッキャオに変わったウガスでは、モチベーションは大きく違っただろう。
パッキャオと対戦するだけで名前が売れ、ファイトマネーも段違いだ。
試合に向けてのモチベーション違いが、この試合の勝敗を分けた一因だろう。
また、パッキャオにとって前回の試合から2年ぶりの試合だった。さすがに年齢やブランクからの衰えからか、試合後半では疲労を隠せなかった。
かつての絶対的な強さから、動きや勢いが落ちてきたことは否めない。
試合後にパッキャオは「相手が変わって対応しなきゃいけなかったが、微調整できなかった。もっと対応力が必要だった」と話していた。
スペンスの怪我は残念だったが、当初の予定通りの試合が組めていればパッキャオのモチベーションも変わっただろう。
試合前には「この試合に勝ってスペンスか、クロフォードとやりたい」と話していたが、伏兵のウガスに番狂わせで敗れる結果となった。
今後のパッキャオ
試合後は「全力を尽くしました。ファンの皆さん、応援本当にありがとうございました。今後についてはちょっと休んで考えて判断する」と話すに留めた。
パッキャオは前人未到のフライ級からスーパーウェルター級まで6階級を制覇している。
ボクシング界に留まらず、絶大な知名度もあり、誰もが知っている世界的なスターだ。
スポーツ科学の進歩で30代中盤になっても戦い続けるボクサーも増えたが、パッキャの場合は40を超えてなお活躍している。
驚異的な身体能力と努力によって勝ち続けていたパッキャオだが、衰えやこれまでの激戦で負ったダメージの蓄積はあるだろう。
パッキャオの今後の進退に関心が集まる中、来年のフィリピン大統領選に出馬する話も出ている。
「大統領選については来月発表する。幸せなキャリアでした」と引退も匂わせる発言もあった。
パッキャオがこれまでボクシング界にもたらした影響は計り知れない。
アジアのボクサーとして異例の活躍で、アメリカンドリームを叶えたレジェンドの今後に注目したい。