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女子ボクシング史上初のメダル獲得に王手の入江聖奈 競技を始めた意外なきっかけ

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

2012年のロンドン五輪から正式種目となった女子ボクシング。

東京五輪では日本代表として2名の女子ボクサーが出場する。

女子フライ級代表の並木月海(22)と、女子フェザー級代表の入江聖奈(21)だ。入江は男女日本代表チームの中でもっとも若く勢いのある注目選手だ。

24日に行われた初戦では、ヤミレトソロルサノ(エルサルバトル)と対戦。初出場ながら見事なボクシングでフルマーク判定勝利を収めた。

続く26日に行われた試合では、フルド・ハリミエプムラヒ(チュニジア)に2戦連続のフルマークで勝利し、ベスト8入りを決めた。

31日の準決勝を突破すれば女子日本初のメダルが確定する。

入江のファイトスタイル

入江のボクシングの特徴は、ボディ打ちと手数だ。

プロ顔負けのボディ打ちを駆使し手数で圧倒する。3分3ラウンドの短期決戦のアマチュアボクシングでは、お互いにクリーンヒットがない場合「積極的な姿勢」がポイントになり、勝利に繋がる。

そのため、ディフェンシブな選手よりアグレッシブな選手が判定でも有利になる。

入江も自身のファイトスタイルについて「相手を下がらせることで次の一手に繋がる。格好つけたくなるけど、勝つ事が一番大切。ガムシャラにいきます」と話していた。

ボクシングを始めた地元ジムの会長からの「獰猛なイリエワニのようになれ」というアドバイスを受け、攻めるボクシングスタイルを貫く。

写真:ロイター/アフロ

ボクシングを始めた意外なきっかけ

入江はボクシング漫画「がんばれ元気」を読み、ボクシングに興味を持った。

初めは両親にも言い出せず、漫画の主人公を真似てパンチの練習をしていたという。

女の子だからいう理由で反対していた両親も、入江のボクシングへの情熱に負け、今では1番の応援団となり「両親に金メダルを見せてあげたい」と話していた。

小学2年生から地元のボクシングジムでボクシングを始め、そこからメキメキと頭角を表し、小・中学生が出場するアンダージュニア大会では無敵を誇った。

高校1年生では社会人を含む全日本選手権で優勝。

海外での実績も豊富で、2018年の世界ユース選手権で銅メダルを獲得、2019年には世界選手権でベスト8に輝いている。

2020年に行われたアジア・オセアニアの五輪予選では、フライ級の並木と共に決勝戦まで勝ち進み自力での出場権を獲得した。

今回の五輪に向けては「やるべきことは金メダルに向けて頑張るだけ。初めてオリンピックの舞台に上がれるので元気に楽しんでいきたい」と話している。

関係者の評価も非常に高く、ここのところ急成長を遂げており、メダル獲得への期待も高まっている。

チームメイトは元ライバル

同じ日本代表女子で、フライ級の並木月海とはライバル関係にある。

当時高校1年生で連戦連勝を続けていた入江にインターハイで初黒星をつけたのが並木だった。

チームメイトではあるが「並木さんにはリベンジできていないので今もメラメラしています」と話していた。

五輪を意識し始めたのは小学6年生。東京での開催が決まってから東京五輪に照準を合わせて勝ち進んできた。

同じ階級でライバルとなるのは、アジア・オセアニア最終予選の決勝戦で入江を負かしたリン・ユーティン(台湾)だろう。

長身のリンに対して「クリンチ側に抵抗しようとしてスタミナを削られた。今回は体力を消耗しないように、もみ合いには付き合わない」と対策を立てる。

一時期は新型コロナウイルスでモチベーションにも影響があったようだが、仲間や応援してくれる人の声が支えになったようだ。

「プレッシャーも力にもなる。応援してくれる人たちのために勝ちたい。日本は舐められているが並木さんとメダルを取ってドヤ顔したい」

初となる五輪で存分に暴れてほしい。

写真撮影FUKUDA NAOKI
写真撮影FUKUDA NAOKI

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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