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バンタム級のレジェンド山中慎介が語る井上尚弥「ボディでKOも十分ありえる」

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
著者撮影

6月19日(日本時間20日)、ボクシングの聖地ラスベガスで防衛戦に臨むWBAスーパー&IBF世界バンタム級王者・井上尚弥(28=大橋)。

挑戦者のIBF同級1位のマイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)とスパーリング経験を持つ、第29代WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏(38)に、ダスマリナスの強さや今回の試合の予想を聞いた。

ダスマリナスについて

ーーー井上選手とダスマリナス選手の試合についてどう思いますか。

山中:ダスマリナス選手には(スパーリング)パートナーとして来ていただいたことがありますね。

ーーーどうでしたか。

山中:1ヶ月半くらいずっとやっていましたが、パンチが当てづらく上手い選手という印象です。ガンガン来るって感じではなかったですね。

ーーーフィリピンの選手にしては珍しいタイプですね。

山中:そうですね。足も使って、攻めるときはパンチをまとめてくる感じでした。あんまりいないタイプですね。身長も僕と同じぐらいなのでバンタム級にしては高いですね。あとはパンチを打つタイミングが少し遅く感じました。

ーーー遅いですか。

山中:サウスポー対サウスポーっていうのもありますが、フック系のストレートを外から巻いて打ってくるので見えにくいのかもしれません。

気をつけるべきはそのパンチぐらいでしょう。過去にはそのパンチで強烈なKOもしているので。戦績は33戦30勝(20KO)2敗1分ですが、1発が脅威的というわけではないですね。

ーーー思ったよりやりづらい選手ですか。

山中:そうですね。でも、井上選手相手では攻めきれないでしょう。

井上尚弥とダスマリナス  Mikey Williams/Top Rank
井上尚弥とダスマリナス  Mikey Williams/Top Rank

試合の予想

ーーー今回の試合はどう予想されますか。

山中:井上選手が圧勝するでしょう。ダスマリナス選手はパワーがめちゃくちゃあるわけでもなく、怖さもないので。

前回戦ったジェイソン・モロニー選手よりパンチはあるかもしれませんが、普通に井上選手が勝つのではないでしょうか。

ーーー判定、KOどちらだと思いますか。

山中:KOすると思います。今まで倒していない右ストレートボディでのKOも十分ありえますね。

ーーーなるほど、角度的に。

山中:はい。相手が長身なので、そういうパンチが有効だと思います。

ーーー井上選手の活躍についてどう思いますか。

山中:日本の誇りですね。パウンド・フォー・パウンドランキングでも2位ですし、そんな選手がバンタム級で、しかも日本にいるなんて。本当に誇らしいことです。

そんな選手もいれば、今月試合をする中谷正義選手のように、あのロマチェンコと戦う選手もいたりして、今の日本ボクシング界はすごいですよね。

井上尚弥への期待

ーーー今後、井上選手に期待することはありますか。

山中:まずは4団体を制覇して、その後、階級を上げたとしてスーパーバンタム級でどこまで通用するのか興味があります。バンタム級とスーパーバンタム級は全然違いますからね。

ーーー何が違いますか。

山中:パンチはもちろんフィジカルなど、ちょっともみ合いになっただけでも体格差を痛感します。

ーーーまずは4団体を制覇してスーパーバンタム級でどこまでいけるか、というところでしょうか。

山中:そうですね。8月にはカシメロがリゴンドウと試合しますし、WBCにはドネアが待っています。なので、まずは4団体制覇。今回もそれを期待させてくれる試合をするでしょう。

これまでぐだぐだな内容だった試合なんてないですから、そんな試合をするなんて想像もできないです。

ーーー山中さんから見て、井上選手はどこが優れていますか。

山中:よく聞かれますが、全部です(笑)。

足を使ったアウトボクシングはやろうと思えばできるでしょうし、下手したらサウスポーだけでも勝つのではないかというくらいどのパンチでも倒せるでしょう。

ーーー伝説になるでしょうね。

山中:はい。相手のダスマリナス選手も世界ランキング1位で、決して弱くない相手ですが、井上選手の相手としては物足りないと言う声が聞かれるくらいです。

「なんだ、他団体のチャンピオンじゃないんだ」って。

そんなこと普通ではありえないですよね。良い勝ち方で統一戦につながるような試合を期待したいです。

山中慎介(やまなか・しんすけ)

滋賀県湖南市(旧甲賀郡甲西町)出身、38歳、第65代日本バンタム級王者、第29代WBC世界バンタム級王者。元帝拳ボクシングジム所属。プロ戦績は31戦27勝(19KO)2敗2分。バンタム級王者で日本歴代2位となる12度の世界戦防衛を達成した。

写真:ロイター/アフロ

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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