ドネアの伝家の宝刀が炸裂し衝撃KO 浮上する井上尚弥との再戦の行方は
ボクシングWBC世界バンタム級タイトルマッチが29日(日本時間30日)アメリカで行われ、元世界5階級王者ノニト・ドネア(38=フィリピン)とWBC王者ノルディーヌ・ウーバーリ(34=フランス)が戦った。
ともに日本で2019年11月に戦ってから、1年半ぶりの試合となった。
ドネアがウバーリを衝撃KO
リングに並び立つ両者。フェザー級で戦っていたドネアと比べて、ウーバーリは2階級くらい小柄に見えた。
試合開始のゴングがなると、ドネアはジャブをつきながら強いパンチを振ってプレッシャーをかけていく。
2ラウンドでは仕返しだと言わんばかりにウーバーリも積極的に攻勢を仕掛けていく。
ドネアは、ウーバーリの打ち終わりに得意のフックを合わせていき、ほぼ同じタイミングで両者のパンチが交錯する。
そして、3ラウンドに試合が大きく動く。ドネアがウーバーリをロープに追い詰めたところで、左フックが炸裂。ウーバーリがパンチを打つと同時に、鋭いカウンターを打ち込んだ。
なんとか立ち上がったウーバーリだが、かなり効いた様子で足元がおぼつかない。
ドネアは仕留めにかかり前に出ていく。そこで試合終了のゴングと同時のタイミングで、再びドネアの左フックが炸裂しダウン。
3ラウンドはゴングに救われる形になった。
続く4ラウンド、ドネアは試合を決めようと距離をつめていく。
そして1分半過ぎ、ロープに追い込んだところでドネアの左アッパーがヒットし、ウーバーリはダウン。
そのまま立ち上がれずレフリーが試合をストップ。
ドネアが4回1分52秒TKO勝ちでWBC王者となった。
伝家の宝刀左フックがカウンターで炸裂
38歳となるドネアが全盛期を思わせるような動きでウーバーリを圧倒した。
パンチにもキレとスピードがあり、一撃で試合を決めるパワーも健在だ。
ドネアが初めて世界タイトルを獲得したとき、当時無敵を誇っていた王者ビック・ダルチニアンを左フック一撃で決めた。
すでにその試合から14年近く経っているが、当時のパンチを思い起こさせた。
ドネアの特徴は、相手が打つと同時に自分の強打を打ち込む鋭いカウンターだ。
ボクシングでは相手の打ち終わりが一番の狙い目だが、一歩間違えば、自分がパンチをもらうリスクもあるのでカウンターを狙うのは危険な戦い方だ。
ドネアの場合は更に相手のパンチと同時に打つ、まさに肉を切らせて骨を断つ戦い方でKOに繋げた。
今回の試合で完全復活を遂げたドネア。まさに5階級王者の貫禄を見せつけた戦いだった。
バンタム級の統一
ドネアは試合後のインタビューでこう答えた。
「井上が次の目標。私が本当のチャンピオンになるために次の試合に臨みます」
38歳になっても戦い続けるドネアのモチベーションは、井上尚弥というライバルの存在だ。
井上は全階級でNO1を決めるパウンド・フォー・パウンドランキングで2位につけている。
世界でも高い評価を受けている井上の存在が、ドネアの闘争本能に火をつけているようだ。
現在バンタム級は下記の世界王者たちが君臨している。
井上尚弥は6月19日にIBF王座の指名戦で同級1位のマイケル・ダスマリナス(28=フィリピン)と戦う予定だ。
また、WBO王者ジョンリル・カシメロは、WBAレギュラー王者ギレルモ・リゴンドーと対戦が決まっている。
おそらくドネアの次戦は、WBC暫定王者レイマート・ガバリョと団体統一戦だろう。
下半期に向けて、バンタム級王者たちの試合が続々と決まっている。
井上はドネアの勝利の後に下記のツイートを残した。
2019年に熱戦を繰り広げた両者だが、今回ドネアがWBCのベルトを獲ったことで再戦の可能性が出てきた。
井上が目指す4団体統一の道に、再びドネアが立ちはだかることになりそうだ。
ドネアの存在が井上を更なる境地へ導くだろう。2人のライバル対決にも注目していきたい。