なぜ悪童ネリは負けたのか

(写真:REX/アフロ)

ボクシングWBA&WBC世界スーパーバンタム級王座統一戦が行われ、WBC王者のルイス・ネリ(26=メキシコ)がWBA王者のブランドン・フィゲロア(24=アメリカ)と戦った。

試合の展開

試合が始まると173cmと長身のフィゲロアに対し、165cmと小柄なネリはプレッシャーをかけていった。

序盤は近距離で小回りがきくネリがペースをにぎり、距離をつめて大ぶりなパンチを振り回す。

フィゲロアはペースを変えようと時折サウスポースタイルに切り替え、打ち合いに応じた。近距離でボディを叩きネリの突進を止めようとする。

中盤になると、さらに試合がヒートアップ。ラウンド開始直後から激しい打ち合いが続いていく。

接近戦が強いネリもフィゲロアのプレッシャーにおされクリンチに逃げていく。

分が悪くなったネリはさらにフットワークで逃げようとするが、フィゲロアはパンチを被弾してもかまわずにプレッシャーを強めていく、ネリが追い詰める序盤とは逆の展開になった。

打ち返してはいるがネリも苦しい状況が続いた。次第に消耗していっているのが表情からもわかった。

そして、迎えた第7ラウンド。フィゲロアのオーバーハンドの左が入りネリが後退。

打ち合いの中、良いタイミングでフィゲロアのボディが入りネリはその場に崩れ去った。

ネリは立ち上がれず、レフリーが試合をストップ。フィゲロアが7回TKO勝ちでWBA王座防衛とWBCタイトルを獲得した。

勝敗のポイント

ネリは昨年の9月に階級を上げ、WBC世界スーパーバンタム級王座決定戦でアーロン・アラメダに判定で勝利しタイトルを獲得した。

バンタム級ではKOを量産し続けていたネリだが、この階級ではパワー不足が目立ち勢いも落ちている。

今回の試合でも、良いパンチを入れていたもののダメージは与えられず、フィゲロアに打ち返されていた。

ひとつ階級を上げてからは、今までのパワーを活かしたボクシングができていなかった。

勝利したフィゲロアは、頻繁にサウスポーにスイッチした戦術が有効だった。

オーソドックスの選手とサウスポーの選手の場合、お互いの前の手が邪魔してレバーブローは打ちにくい。

サウスポーにスイッチすることで、外と中からボディを打ち分けやすくなる。KOしたパンチも、スイッチしてからのカウンターだった。

KOしたボディをスローで見ると、ネリの肋骨あたりにヒットしていた。

ボディへのパンチはじわじわ効いてくると言われてるが、良いタイミングで当たれば決定打になりえる。

悪童ネリの今後

ネリは2017年8月、当時WBC世界バンタム級王者の山中慎介氏からタイトルを奪った。

しかし、試合後のドーピング検査で陽性反応となり、調査の結果故意ではないと判断され王座剥奪は免れたが、疑惑の勝利とされていた。

続く再戦では、計量オーバーでリングに上がり山中氏と戦った。試合はネリの2ラウンドKO勝利となったが、多くの批判が集まった。

筆者は元王者の山中慎介氏とは同じジムに所属していた。決して驕ることなく見習うことが多かった。尊敬する先輩でもあり偉大な王者だった。

そんな山中氏があのような形で敗れ、非常に無念だった。

ネリはその後も計量オーバーを繰り返し、全く反省した素振りを見せなかった。

バッドボーイ(悪童)と呼ばれるネリだが、それでもチャンスをもらえていたのは無敗の世界王者という商品価値があったからだ。

今回の敗戦で今までの勢いや評価も急落し、これまでのような振る舞いは許されなくなる。

ひとつ上の階級にあげると、途端に勝てなくなったのを見ると体重超過という、有利な状態だったからこそ勝てていたとも言える。

この一敗が今後のキャリアに大きく影響するだろう。