現役王者の高橋悠斗がコロナの影響で引退「今の状態では選手のメンタルがもたない」
4月3日、ボクシング日本ライトフライ級王者の高橋悠斗(27)がタイトル返上と現役引退を発表した。
高橋はチャンピオンカーニバルで1位の矢吹正道(27=緑ジム)を迎え、初防衛戦を行う予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で試合が延期となっていた。
その後、自身のブログで「自分がベストな状態で試合に挑むことは不可能だと感じたため引退を決めました」と発表した。
引退表明した高橋にインタビューを試みた。
引退について
現役の日本王者がこの若さで引退表明したことに衝撃を受けた。
高橋は昨年10月に日本タイトルを獲得し、今回の試合が初防衛戦だった。
当初は3月15日に指名挑戦者の矢吹と試合が決まっていたが、新型コロナウイルスの影響で試合が延期。
5月6日に再スケジュールが決まったが、日本ボクシングコミッション(JBC)が興行中止の要請期間を5月15日まで延長。これにより再度延期となった。
度重なる延期で、モチベーションを維持できず引退を決めたようだ。
引退について高橋は「環境を作れなかった自分の責任。練習は自信を持ってやっていたが、試合が流れて気持ちが切れてしまった」と答えた。
ボクサーは試合が決まると、その日に向けて練習や体調などを細かく調整していく。過酷な減量もあるため、コンディション調整は容易ではない。
また、試合に向けてチケット集客を行うなど試合以外にも様々な業務がある。
一度決まった試合が流れると、調整も含めて一からやり直しだ。
新型コロナウイルスの影響で先行きが見えない状況のため、試合が決まっても再度延期になる可能性もある。
高橋も「(試合を)するしないですごく消耗した。先が見えない中で頑張るのがきつい。無理やり気持ちを作っていた」と話していた。
今は試合をするべきではない
引退の原因には所属していたK&Wボクシングジムの閉鎖もあったようだ。
今回の初防衛戦が決まった時にジムの閉鎖が決まった。
その後、白井・具志堅スポーツジムに移籍したが、実際にはK&Wボクシングジムで4月までトレーニングする予定だったようだ。
延期となった5月の試合に向けて練習に励んでいたが、試合が2度目の延期。その時点で引退を決意したようだ。
ボクシング業界としても、先の見通しが立たず、多くの試合スケジュールが未定だ。
試合を控えている選手には苦しい状況だろう。
高橋も「周りの選手でもコロナの影響を考えたら、引退する選手も出てくると思う。先の見えない状態で頑張る辛さを感じた」と気持ちを吐露した。
興行の延期や中止は、関係者や選手にとって負担が大きい。
今後の対策も必要になってくるだろう。
変わるボクシング界
高橋は今後に向けて「パーソナルトレーナーや飲食店、YouTube、執筆家など日本をスポーツで明るくするための活動を始めています」と話していた。
飲食店では自ら店舗に立ち、忙しい日々を送っている。
高橋のようにボクサーを引退しても、自身のキャリアを活かして活躍できる選手は稀だろう。
高橋も今後のボクシング界に対し、
「正直このままいったらボクシングは終わってしまう。ボクシングをやるメリットより、今やろうとしていることに時間を費やした方が将来的に自分に返ってくる」と話していた。
選手が稼げない環境で、生活がままならない状況が続けば、引退を考える選手も多くなるだろう。
高橋も「今の状態では選手のメンタルがもたない。今年は試合をやらないなど、決めた方がいい」と話していた。
減量中の選手は免疫力が落ちて新型コロナウイルスに感染するリスクも大きい。選手の安全を考えたら、事態が終息し万全の環境が整うまで試合をするべきではないだろう。
新型コロナウイルスの影響で、改めてボクシングは安全な環境があるからこその競技だと痛感している。
高橋のように才能のある選手が、引退を決めざるを得ない状況を変えていかなければならない。