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五輪出場経験を持つボクサー成松大介「オリンピックは特別視する必要もない」

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真撮影はすべて FUKUDA NAOKI

ボクシング競技の東京五輪に向けてのアジア予選が、ヨルダンの首都アンマンで開催されている。

日本選手団は男子6名、女子5名の選手が本戦出場を目指し、決戦の舞台に立つ。

本日初戦を迎えるのが、ライト級(63kg)代表の成松大介(30=自衛隊体育学校)だ。

成松は日本選手団の中で、唯一、オリンピック出場経験を持つベテランだ。東京五輪に向けて単独インタビューした。

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ディフェンスに強み

ーーー今までの戦績は分かりますか。

成松:120勝24敗です。

ーーーボクシングはどういうきっかけで始めましたか。

成松:入学した高校にボクシング部があったので、興味を持ちました。

ーーーこれまでのボクシング人生は、どういう経歴ですか。

成松:3年生でインターハイ3位になり、国体で優勝しました。少しずつ上がって来ています。

ーーーそこから大学へ行ってから、結構ブレークしたというか。

成松:少しずつです。1年生の時は全日本にも出ていないし、2年生から少しずつ結果がついてきました。

ーーー自分のボクシングの強みは、どういうところにあると思いますか。

成松::パンチを派手にもらわないところですか。

ーーーディフェンスのほうですか。

成松:はい。

ーーーでは攻撃よりはディフェンスに自信がある感じですか。

成松:そうですね。

二度目のオリンピックは目前

ーーーボクシングの魅力はどういうところにありますか。

成松:選手目線で言うと、1対1で相手に勝った瞬間ということが言えるかと思います。

ーーー今まで挫折や苦労は何かありましたか。

成松:挫折はないです。もともと、うまくいかないと思ってボクシングを始めていたので、しかも最初から強かったわけではなく、逆にそこが良かったなと思います。

ーーー今回予選に出るメンバーの中で、唯一オリンピックに出ているメンバーです。成松選手にとって、どういう舞台ですか。

成松:特別な舞台であることに変わりはありません。ただ特別視する必要もないのかなと思います。

オリンピックとほかの大会と何が違うかというと、世界が注目してくれるということですが、そのぐらいですかね。

ーーー前回出場したリオオリンピックはどうでしたか。雰囲気や自分の内容などは。

成松:雰囲気は、すごいなと思いました。テレビで見るようなイメージのままというか、華やかな感じです。

選手村もすごかったです。試合に関しては、その時は自分の力は出せましたが、最高のパフォーマンスだったかと言われると、そうではないかなと思います。

ーーー年齢的に引退している選手も多いですし、もう1回オリンピックを目指そうと思ったのは、何か思いがあったのですか。

成松:体もきつかったので辞めても良かったのですが、ただ東京オリンピックだったので。

現役の間に東京オリンピックを迎えられるのは、なかなかないと思います。

オリンピックが終わって数年後に「目指しておけば良かったな」とは思いたくなかったから、また「東京オリンピックを目指して頑張ろうかな」という気持ちになりました。それで今に至ります。

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自分のスタイルを貫く

ーーー二度目のオリンピックまでもうひと息というところです。

先日カザフスタンで合宿もやっていましたが、今の自分のボクシングと海外のボクシングのトップ選手との違いは何かありますか。

成松:違いはそれほどないと思います。でも、キューバの選手などを見ると、体つきが全く違って瞬発力があります。

リーチが長いのでパンチの伸びは全然違うと思いました。

ただ僕のスタイルが通用しないということはなかったので、合宿をやってすごく自信になりました。

ーーーでは実力差などはあまり感じない感じですか。どんな選手とやっても戦える自信はありますか。

成松:はい。

ーーー同じ階級だと、アジアにどういう強い選手がいますか。

成松:アジアならタジキスタンとヨルダンの選手は、結構強いです。ヨルダンの選手などはもうめちゃめちゃファイターです。

僕は60kg級の時にその選手と1回試合をして勝っていると思います。相当タフな試合だったので、もし当たるとしても、かなりきつくはなると思います。

ーーーなるほど。今後の目標はどういうところにありますか。

成松:ただ、目の前の試合を全部勝つというだけなので、今は目標などありません。

ここへ来て「1回戦突破を目指します」などとは、別に言う気にならないですね。

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練習について

ーーー練習の雰囲気もすごく明るいというか、ピリピリした様子もないですね。前と比べて、今はどうですか。

成松:明るくなっています。

ーーー練習もやりやすいですか。

成松:はい。シンさん(日本代表コーチの)は「決められた練習メニュー以外はやらないように」という人なので、その辺りは変わりましたね。

ーーーなるほど。自主練も駄目ですか?

成松:駄目ですね。「やめろと言っただろう」と言われます。

ーーー戸惑いはありましたか。

成松:最初はありましたが、従ってみると、それはそれでまた良いなと思います。練習をやり過ぎてしまうので。

「自分のため」が「周りのため」に

ーーー最後に今後の目標のようなものはありますか。

成松:僕のことを応援してくれている人が地元や職場や家族など、いろいろなところにいると思います。

オリンピックで良い結果を残せばその人たちは喜んでくれるし、幸せになってくれると思うので、そういうふうになってほしいです。

ーーーなるほど、ではもう本当に自分のためというよりも、周りのためですか。

成松:自分のためにやったことが人のためになると思っています。

ーーーそこを目指していく感じですね。

成松:皆でハッピーになりたいので。

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成松大介(なりまつ・だいすけ)

1989年生まれ。熊本県熊本市出身。

熊本農業高校でボクシングに出会い、競技を始める。高校では3年時にインターハイ3位、国体優勝の成績を残し、東京農業大学へ進学。

大学進学後、徐々に頭角を現し、全日本選手権で階級を上げながら通算9回優勝している。

2016年にはリオデジャネイロオリンピック出場を果たし、二度目のオリンピック出場を目指す。現在は自衛隊体育学校に所属。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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