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不可能を可能にしてきたボクサー村田諒太「試合を楽しみにしてほしい」

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供全て FUKUDA NAOKI

23日に横浜アリーナでボクシングトリプル世界戦が行われる。

今回の試合では、3階級制覇王者の八重樫東(36=大橋)がスーパーフライ級から階級をひとつ下げ、WBOフライ級チャンピオンのモルティ・ムラザネ(南アフリカ)に挑む。

また、6度の防衛を果した拳四朗(27=B.M.B)が、元WBC世界ライトフライ級暫定王者で同級12位のランディ・ペタルコリン(フィリピン)を迎え、7度目の防衛戦を行う。

そして注目は、7月に王座をリベンジで奪取した村田諒太(33=帝拳)のWBA世界ミドル級タイトマッチ。

同級8位のスティーブン・バトラー(カナダ)を迎え、初防衛戦を行う。

村田諒太のスタイル

前回の7月の試合は、一度負けているロブ・ブラント(アメリカ)とダイレクトリマッチとなった。

その試合は、村田が積極的な攻撃で2ラウンドに猛烈なラッシュを仕掛けKO勝利した。

村田の強みは爆発的な「攻撃力」にある。

一発で試合を終わらせるパンチ力があり、戦績は15勝12KO。高いKO率を誇っている。

筆者は現役時代、同じジムで村田とトレーニングしていたが、当時から彼のサンドバッグやミット打ちの音には迫力があった。

他の選手とは比べ物にならないパンチ力を持ち、ミットを持つトレーナーがパンチの衝撃で肘を痛めたと聞いた事がある。

また、身体能力も非常に高く、短距離走、長距離走は誰よりも速い。

12ラウンド戦い抜ける無尽蔵のスタミナを持っている。

練習でも非常に細かい視点を持ち、誰よりも考えながらトレーニングしている姿が見受けられた。

村田が真価を発揮するのは、中間距離から近距離になる。

体幹の安定性に加えパワーがあるので、接近戦での打ち合いは世界トップクラスだろう。

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挑戦者バトラー

今回の対戦相手はカナダのスティーブン・バトラーだ。

戦績は30戦28勝(24KO)1敗1分。KO率80%を誇る。

長いリーチを活かしたストレートが特徴の選手だ。

弾丸のようなパンチを打つ事から「BANG BANG」の異名を持ち、現在はWBA8位、WBO1位にランクされる。

今回の試合で注目すべきポイントは「中間距離」だ。

両者体格は似通っているが、得意な距離が違う。

バトラーは身長181cm(リーチ190cm)村田は身長183cm(リーチ190cm)。

村田はパンチ力を活かした「近距離戦」が得意なのに対し、バトラーは右ストレートを活かした「長距離戦」が得意だ。

そのため、間の「中間距離」での戦いが鍵となる。

村田はペースを掴むために、攻撃の起点となるジャブを多くつきたいところだ。

バトラーは今回が初の世界挑戦。練習も公開練習以外では非公開で、手の内を明かさない不気味な存在だ。

また、これまでの試合の多くはカナダ国内で行われている。

世界トップクラスとの対戦経験も無いことから、実力は未知数だ。

過去の試合では、ボディでダウンした経験もあり、決して打たれ強いとは言えないだろう。

村田のパンチは破壊力がある。中に入り込んで、ボディ打ちからチャンスを掴みたい。

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今後の村田諒太

村田はロンドン五輪男子ミドル級で金メダル。WBA世界ミドル級王者という実績をもつ。

日本人では戦えないと言われた階級で、世界を獲ったボクサーだ。

今回の試合に向けて「非常に良い練習を積んできた。良い調整はできているので自信を持ってリングに上がる。試合を楽しみにしてほしい」とコメントしている。

村田が戦うミドル級は世界で注目される階級だ。

メキシコのスターボクサー、カネロ・アルバレス(WBAスーパー&WBC王者)を中心に、ミドル級の帝王ゲンナジー・ゴロフキン(IBF王者)。

また、デメトリアス・アンドラーデ(WBO王者)、ジャーモール・チャーロ(WBCレギュラー)など、無敗で勢いのあるボクサーが王座に君臨している。

どの選手も非常にレベルが高く、対戦することになれば世界中から注目が集まるだろう。

23日の試合会場には、村田をプロモートするトップランク社のCEOのボブ・アラム氏が訪れる予定だ。

世界のボクシング界で中心的な人物であるアラム氏も、村田の動向に注目しているようだ。

村田が望むのは東京ドームでのビッグマッチ。

この試合に勝つことで、村田の道も開かれていくだろう。

近年、日本選手の活躍は目覚ましいものがある。その立役者である村田にまだまだ夢を見せてもらいたい。

日本人ボクサーから世界的スターが生まれることに期待したい。

試合の模様は、12/23(月)に19時からフジテレビでライブ中継される予定だ。

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元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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