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人気上昇中 具志堅用高氏の記録更新を狙う世界王者「拳四朗」とは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真提供 FUKUDA NAOKI

現在日本人の世界王者は7名いる。バンタム級で圧倒的な強さを誇る井上尚弥(26=大橋)を筆頭に、先日ミドル級のタイトルを衝撃的なKO勝ちでリベンジを果たした村田諒太。

そして、日本人初となる4階級制覇を果たした井岡一翔(30=Reason大貴)など、日本人ボクサーの活躍が著しい。

その中で日本人最多の6度の防衛回数を誇り、ブレイク中のボクサーがいる。

名前は「拳四朗」(27=BMB)。WBC世界ライトフライ級王者だ。

名前の由来は、あの有名な漫画の北斗の拳のケンシロウから取られたものだ。

拳四朗とは

父親は、OPBF東洋太平洋ライトヘビー級王者の「寺地永」。父の影響でボクシングを始め、2人3脚で世界王者までたどり着いた。

タイトルを獲ったのは2017年。アマチュアで国体優勝の実績を得て2014年にプロ入り。その後、僅か3年で世界王者に輝いた。

戦績は16戦全勝で、9つのKO勝ちをしている。軽量級でありながらKO率も高い。

7月に行われた6度目の防衛戦では、最強挑戦者の同級1位ジョナサン・タコニン(32=フィリピン)を4RでKOした。

これまでの防衛戦の相手は、元世界王者や統一王者も多数含まれている。そんな強い選手達を圧倒的なKOで下し、実力を示している。

その強さ故にランキング上位選手でも相手にならない。強い相手を求めて、自ら最強挑戦者を募集するほどだ。

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拳四朗のボクシング

試合後には恒例のダブルピースをする。にこやかな顔つきからは、決してボクサーには見えない。

彼と街ですれ違っても、世界王者だとは気づかないだろう。

しかし、一度リングに立てば、表情がガラッと変わる。そのボクシングスタイルには油断も隙もない。

軽快なフットワークとジャブを起点にして、相手をコントロールする。序盤で自分のペースに持っていき、相手を弱らせてKOに繋げてきた。

また、得意の右ストレートは、一撃で相手を仕留めるキレと破壊力がある。

私は以前ミット打ちで、彼のパンチを受ける機会があった。鋭い踏み込みからのパンチは、体重がのっていて手が痺れるほどだ。

KO率が高いのも納得だ。

加えて、フットワークの出入りが速いため、相手のパンチをもらわない。

ヒットアンドアウェイで、ここまで危なげなく勝ち続けてきた。

ライトフライ級は、最軽量級のミニマム級から1.3kg重い階級となる。

手数とスタミナ重視のミニマム級に比べて、この階級ではKO率もグンと高まる。

拳四朗もキレとタイミングで、6度の防衛戦のうち4試合を序盤から中盤で倒している。

本人もこの階級が適正のようで、これからも防衛回数を伸ばしていくだろう。

FUKUDA NAOKI 提供
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拳四朗の目標

拳四朗の目標は、レジェンド具志堅用高氏の持つ、日本歴代1位の13回の最多防衛記録を超える事だ。

近年では、神の左の山中慎介氏が、日本歴代2位の12回の防衛記録。ノックアウトダイナマイト内山高志氏は、日本歴代の3位の11回の連続防衛記録を持つ。

最近は、複数階級制覇が主流となり、一つの階級に留まる選手が減っている。

特に若い選手が王者になると、体の成長に合わせて階級を上げていくケースが多い。

そのため、具志堅氏の記録を超える選手はなかなか出てこない。その中で唯一、可能性があるのが拳四朗だ。

相手がいない拳四朗は、他団体への王者との統一戦も歓迎している。

この階級には、対抗王者としてWBA王者の京口紘人(25=ワタナベ)もいるため、統一戦への期待も高まる。

両者ライバル関係で意識しているので、このまま勝ち進めば、対戦の可能性も大いにあるだろう。

国内ボクシングを、どんどん盛り上げていって欲しい。今最も勢いに乗り、人気急上昇中の拳四朗に注目だ。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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