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「内容は最悪」逆転KO勝ちも反省 田中恒成が2度目の防衛戦をKO勝利 

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
本人提供

8月24日に愛知・武田テバオーシャンアリーナで、WBO世界フライ級タイトルマッチが行われた。無敗の3階級制覇王者の田中恒成(24=畑中)が、同級1位のジョナサン・ゴンサレス(28=プエルトリコ)を迎え、2度目の防衛戦を行った。

序盤は相手がペースを握る

両者向かい合うと、身長が一回り大きい田中(7cm差)との体格差が目立った。

序盤は静かな立ち上がりで、お互いに牽制のジャブをつきあっていた。

前に出ようとする田中に対して、サウスポースタイルのゴンサレスは巧みにサイドに動き、田中の動きを封じていた。

田中が強引に前に出ようとすると、ノーモーションの左ストレートを放ち牽制。

スピードがあり、小回りがきくゴンサレスに手を焼いてた。

ペースがゴンサレスに傾きかけた3Rに、田中のボディストレートが決まり、ゴンサレスがうずくまりダウン。

田中がボディ打ちに活路を見出し、ペースを奪いかけたが、次のラウンドではゴンサレスのカウンターを受けてスリップ気味のダウンを奪われる。

その後も、一進一退の攻防が続いていく。

サウスポーに効果的なボディ打ち

田中はそこから攻勢を強めて、ボディ打ちを軸に攻撃を組み立てていく。

サウスポーは構え方の特性上、急所であるレバーが前面に出ているためボディが弱い。そこを打たれると失速する。

ゴンサレスもパンチを出していくが、田中の圧力が勝りペースを奪われていく。

そして迎えた第7ラウンド。田中のボディ攻撃が有効に決まり、ゴンサレスが下がる。

ロープに詰めたところでボディでダウンを奪う。立ち上がったゴンサレスだが、明らかにボディが効いている。

その後、田中が強引に攻めていき、ダウンを2度追加したところで、レフリーが試合をストップした。

田中が2度目の防衛戦を宣言通り、KOで飾った。

田中のKO勝ちとなったが、6回までの採点では、ジャッジ1者が56−56。残る2人は57−55、58−54とゴンサレスを支持していた。

結果として逆転KO勝ちとなった。

スタイルの変化

究極のスピード対決と言われた今回の試合だが、今回の試合では田中がパワーで押し切った形となった。

下の階級から上げてきて、田中のスタイルに変化も出てきている。

階級が上がれば体重も増える。体重が増えると体も重くなりスピードは遅くなる。

スピードを維持しながら階級を上げていくには、筋力をつけるなど工夫が必要となってくるだろう。

前回の初防衛戦の田口選手との試合時に目がついたのは、スピードより力強さだった。

階級を上げたことによりパワーが増した。

上の階級で戦うためには、相手を怯ませるためのパワーも必要になってくるだろう。

フライ級でも減量がきつい田中は、近い将来、上の階級も視野に入れている。

本人はバンタム級まで階級を上げる構想があるので、スタイルチェンジも必要になってくる。

ちょうど今は、体の変化に合わせてスタイルの変わり目になってきているようだ。

写真提供 FUKUDA NAOKI
写真提供 FUKUDA NAOKI

統一戦に向けて

今後気になってくるのは田中のモチベーションだ。

高校4冠の実績を引っ提げてプロデビューしてから、日本最速となるプロ5戦目での世界王座獲得。

その後、井上尚弥に並ぶ日本最速タイ記録となるプロ8戦目での2階級制覇を達成。

そして世界最速タイ記録となるプロ12戦目での3階級制覇を達成している。

プロキャリア5年ちょっとで、ここまでの偉業を成し遂げている。

同じボクサーとしても、他にありえない記録とキャリアを持つ。

しかし、国内のボクシング界では、井上尚弥や村田諒太、井岡一翔が中心だ。

田中ももっと評価されてもいいし、世間にも知られる存在になってほしい。

今回の試合後のインタビューでは、「内容は最悪。自分のボクシングに納得がいかなかった」と話していた。

誰よりも自分に厳しく、求めるところも高いのだろう。

また今後の目標に対しては、「何も決めてないしやりたいこともない。何ができるかわからない。いい舞台作ってください」と自分の心境を吐露した。

翌日の会見では、「統一戦を、できればやりたい」と希望。

今後のマッチメークとしても本人が希望する相手や、心踊る舞台が用意できないとモチベーションが心配な部分もある。

将来的に5階級制覇を掲げているため、年内の試合後にはこの階級も卒業していく予定だ。

大きな目標に向けて一歩ずつ進んでいく。田中の今後に注目だ。

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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