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村田諒太が衝撃KOで王座奪還 リベンジに成功した勝負のポイントとは

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
写真 全てスタッフ撮影(写真:松尾/アフロスポーツ)

12日エディオンアリーナ大阪で、WBA世界ミドル級タイトルマッチが行われた。挑戦者の同級3位の村田諒太(33=帝拳)が、チャンピオンのロブ・ブラント(28=米国)と対戦し、2RTKO勝ちで王座を奪還した。

今回は、試合前の控え室の様子から、何か起こりそうな予感があった。

リラックスしていた村田諒太

私は、同じ帝拳ジムの村田を、試合前に激励しようと控室に訪れた。笑顔で迎え入れてくれ、自然体でリラックスしているようだった。

ピリピリする様子もなく、時には冗談を言いながら試合に備えていた。

試合直前の最終調整のミット打ちでも、キレのあるストレートとボディ打ちをみせ、仕上がりの良さを感じさせた。

今回はしっかり相手の対策をしてきて、調整も上手くいき、自信がある様子がうかがえた。

アップが終わると、あとはもうやるしかない、と覚悟を決めていた。入場曲の音楽が流れ、大歓声の中、村田が入場した。

リングアナウンサーは世界的にも有名なジミー・レノン・ジュニアだ。

両者の名前がアナウンスされ、会場のボルテージもマックスになる。

村田にとって進退をかけた運命の一戦が始まった。

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相打ち覚悟で手数をだす

前回の試合では、ブラントの圧倒的な手数にペースを握られてしまった。再戦では序盤のペース争いが大事になる。

まず、先手を取ったのはブラントだった。1ラウンド目が始まるとブラントが積極的に仕掛けてきた。

今回もハイペースでの戦いが予想された。村田も、前回のガード一辺倒のスタイルから、相打ち覚悟で手数を出していく。

村田の距離とブラントの距離は違う。遠距離で足を使って戦うブラントに対して、村田は近距離で戦う。

ブラントが打ちに来る時、距離が詰まるので、そこにチャンスがある。

打ち終わりに攻撃して、相手にダメージを与えていった。そして、1ラウンド後半に村田の右がヒットして場内が大きく沸いた。

前回とは明らかに違う状況に、ブラントも困惑気味だった。

村田がリベンジに成功

2ラウンド目になると、村田コールが湧き、会場全体が村田を後押しした。

試合では、サイドに動くブラントに対し、村田は積極的に前に出て、距離を詰めていった。

前回は受け手に回ってしまったが、今回は相手の攻撃と同時に反撃した。

「肉を切らせて骨を断つ作戦」で、前より一歩踏み込みんでいく。

相手との距離が詰まっていき、パンチが当たっていく。

そして、2ラウンドの1分経過後に、ブラントが放ったパンチの打ち終わりに、村田の右ストレートが炸裂した。

ブラントは効いた様子で、防戦一方になる。村田もチャンスと見るや、怒涛の連打でパンチを放つ。

ただ、打つだけでなく、パンチを打ち分け、渾身のパンチを振りかざして、猛ラッシュをかけていく。

ブラントも、村田が上下左右に様々なパンチをまとめてくるので、対処できなかった。

ロープに釘付けにして、足元がおぼつかないブラントからついにダウンを奪う。

立ち上がったが、明らかにダメージを残していた。その後は、防戦一方になって、村田が再びラッシュをかける。

そして、村田のパンチでブラントがよろめいたのを見て、レフリーが試合をストップした。

村田がTKO勝利で王座を奪還、リベンジに成功した。

勝敗のポイント

今回の試合の勝因は、前回より「一歩先に踏み込んだ距離」だった。

足を使いながら戦うブラントに対して、村田は前回より積極的に前に出て、パンチを打っていた。

打たせて打つから、同時に打つ。ブラントのパンチに対して相打ち覚悟で打っていった。

初めから打ち合いに巻き込んだことで、ペースを掴んで一気に流れを引き寄せた。

おそらく、一度対戦した事で、ブラントのタイミングや特徴、スタイルなどがわかったのだろう。

一発のパンチが劣るブラントに対し、パワーでは、村田が大きく上回っている。

中に入り込めば、村田が有利だ。

ボクシングでは自分の距離に持ち込んで戦う事が大切だ。前回の反省を踏まえ、きっちり修正し立て直してきた。

言うことは簡単だが、実際にやるのは難しい。再戦で戦い方を大きく変えてきた、村田の能力の高さに驚いた。

自分もパンチをもらう危険性があるので、前に出るのには勇気がいる。

KOされる危険性もあるので、相当な覚悟がないと、この戦い方はできないだろう。「絶対に勝つ」村田の気持ちが前面に出た試合だった。

試合後のインタビューでは、サポートしてくれた帝拳ジムや、会場の声援が後押しとなった。と話していた。

応援は、リングで戦うボクサーに、戦う勇気をくれる。みんなの期待に応えた村田は、ヒーローとしての器を持っている男だ。

村田の復活で、日本ボクシング界も更に盛り上がっていく。

世界的に、大きな盛り上がりを見せるミドル級での、今後の活躍が楽しみだ。

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元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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