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スーパーフライ大激突!王者シーサケットがエストラーダに完敗

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
(写真:ロイター/アフロ)

カリフォルニア州イングルウットで、WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチが行われた。

王者のシーサケット・ソー・ルンヴィサイ(タイ)とWBC同級1位フアン・フランシスコ・エストラーダ(メキシコ)が対戦した。

両者は昨年2月に対戦し、シーサケットが僅差の判定(2-0)で勝利した。日本人も活躍しているスーパーフライ級での頂上決戦となり、注目の対決となった。

サウスポーとオーソドックス

今回の試合で驚かされたのが、チャンピオンのシーサケットが、本来のサウスポーから、右構えのオーソドックスで戦い始めた事だ。

オーソドックスとサウスポーでは戦い方が大きく異なる。サウスポーが相手だと、構えている前の手が邪魔になりジャブが当てにくい。

どっしりと構えたシーサケットに対し、エストラーダはフットワークを活かし出入りで攻める。

両者の体格を比較すると、シーサケットは160cm(リーチ 161cm)に対し、エストラーダは、163cm (リーチ 168cm)となる。

サウスポーと違い、オーソドックス同士だとジャブが起点となるため、リーチの差が大きく影響する。

エストラーダが先手で攻勢をかけ、パンチを当てていき主導権を握っていった。

またエストラーダは、上下左右にパンチを散らし、アッパーを交えて攻撃のリズムを作っていた。

シーサケットはいつもの勢いがなく、足もあまり動いておらずパンチをもらっていた。

フットワークが苦手

タイ出身の選手は、フットワークが苦手だと言われている。それは、タイ国内の試合は、野外で行うことが多いからだ。

暑い野外でフットワークを使うと体力の消耗が早い。その為、タイの選手は上体を巧みに使うボディワークでパンチを避けることが多い。

なので、相手に足を使われた戦い方をされると、追いかけられず、相手を捉えきれない。

今回の試合でも、エストラーダが多彩なフットワークを見せたのに対して、シーサケットは、追いきれていなかった。

前回の試合では、サウスポースタイルで戦っていたため、エストラーダのジャブが当たりにくかった。

今回は、エストラーダがジャブを起点とした、巧みな出入りでコンビネーションに繋げていた。

途中からサウスポースタイルに戻したが、エストラーダのペースになっていたため、ポイントを挽回するには至らなかった。

おそらくエストラーダからしたら、前回の試合よりも戦いやすかっただろう。

ジャッジの判定は、3-0(116-112、115-113×2)となったが、実際のポイント以上に差があったように感じた。

シーサケットは、ローマンゴンザレスに勝利し長期政権が期待されたが、4度目の防衛戦でベルトを手放す事となった。

一方勝利したエストラーダは、フライ級に続き2階級制覇を達成した。

盛り上がりを見せるスーパーフライ級

スーパーフライ級は、日本人選手も多い階級で盛り上がりを見せている。

5月4日には、ワタナベジムの船井龍一が、IBF王者ジェルウィン・アンカハス(フィリピン)に挑戦する。

また、日本復帰を果たした井岡一翔が、6月19日に千葉・幕張メッセで、アストン・パクリテ(フィリピン)と王座決定戦を行う。

他にも、4階級制覇を狙う八重樫東や、近いうちに階級を上げると噂される、無敗の3階級王者の田中恒成もいる。

海外では、全階級でNO1と言われた、パウンドフォーパウンドのローマンゴンザレスの復帰も待ち遠しい。

井上尚弥が階級を上げて、タレントが不在となったが、ここに来て新たな流れができている。

ライバルがいるとその階級も盛り上がる。ますます目が離せなくなりそうだ!

元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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