井上岳志が無敗の王者ムンギアを苦しめたが判定負け 

nikushima Photo Credit: Tom Hogan

 WBO世界ウェルター級タイトルマッチが、26日(日本時間27日)にアメリカのヒューストンで行われた。チャンピオンで無敗のハイメ・ムンギアに同級3位の井上岳志が挑戦した。

 試合では井上が接近戦に持ち込み、持ち味を発揮したが、ムンギアに粘られ3-0の判定で敗れた。

ボクシングと身長差

 まず試合が始まって気になったのは、両者の身長差だ。リーチ、身長差ともに10cm以上ある。ボクサーは互いに自分のパンチが、いいタイミングで当たる距離で戦おうとする。

 今回の試合でも、身長173cmと小さい井上が積極的に前に出るのに対して、ムンギアは距離を保とうと離れて戦っていた。近い距離では井上のパンチも当たっていたが、井上のパンチが届かない距離ではムンギアがペースをつかんでいた。

 試合の中盤以降は、井上の意表をついた右も当たりだし、巻き返しを測った。対するムンギアは、中間距離からのフックやボディを打って見せ場を作った。

中間距離ではムンギア近距離では井上

 ムンギアは体のバネを活かし、駒のように体の軸を回して強打をふってくる。中間距離では遠心力を生かしたパンチは効果的だが、近距離では体の軸を回せない。そのため井上は積極的に前に出て、相手のパンチを殺しながら戦っていた。

 距離が近くなれば、回転が速く小回りがきく方が有利だ。井上も近い距離ではいい攻撃を見せていた。しかし、距離が離れると、1発1発に迫力があるムンギアのパンチが見栄えがよく印象的だった。井上のパンチも当たっていたため、1発当たればと期待感も高まった。

世界のトップレベルと紙一重

 ジャッジの採点は離れたが(120-108が2人、119-109)、内容は紙一重だった。ポイントを振り分ける時、どっちつかずの場合はチャンピオンに振り分ける場合がある。そのため、王者にポイントが流れ差が離れた。しかし、決してムンギアも楽な試合ではなかっただろう。

 戦績だけ見れば(31勝26KO)化け物のような数字だが十分に戦えた。敗れはしたが、評価の高いチャンピオン相手に勇敢に戦い、井上もよく健闘した。世界的に層が厚い、重量級のトップクラスでも戦える実力を示した。オッズも10倍以上離れていたようだが、パンチのヒット数では負けていなかった。

 最近、日本勢も木村翔、伊藤雅雪など海外でのベルトを奪取した例も増えてきている。一昔前なら世界の重量級の舞台で日本人が活躍できる時代ではなかったが、日本人ボクサーのレベルも上がっている。

世界戦という最高の舞台

 試合前に井上にインタビューをする機会があり、本人はこの大舞台を本当に楽しみにしていた。「不安はもちろんありますが、今までの試合よりワクワクが大きい。ムンギアと何回も戦いたいなと思ってます。一回しかないのが、もったいないと思うくらい」と話していた。

 世界戦はボクサーの集大成だ。井上はプロキャリア4年半でここに漕ぎ着けた。20代後半に差し掛かるが、世界のトップと戦える実力を示しただけに、もう一度世界で戦うチャンスに期待したい。