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伊藤雅雪がKO防衛 防衛回数よりも強い相手とやりたい!

木村悠元ボクシング世界チャンピオン
撮影 福田直樹(FUKUDA NAOKI)

 トリプル世界戦のメインで、WBO世界スーパーフェザー級王座を防衛する伊藤雅雪が、挑戦者で同級1位のエフゲニー・チュプラコフと対戦した。伊藤は日本人ボクサーとして37年ぶりに米国で世界タイトルを獲得して、今回はチャンピオンになってから初の凱旋試合となった。

ボクシングは距離感が全て

 今回の試合では、相手のしつこいクリンチが目についた。174cmの伊藤に対して、チュプラコフは166cmと10cmの開きがあった。スーパーフェザー級では小さい部類に入るだろう。そのため中間距離で戦おうとする伊藤に対して、距離が短く接近戦に持ち込みたいチュプラコフとの間で距離が噛み合わなかった。

 ボクサーはお互い得意な距離で戦おうとする。自分のリーチやパンチの届く距離で戦うことが、試合を有利に進めることができるからだ。そのため体格やスタイルによって、得意な距離が変わってくる。今回の試合では、背が低い相手が下から潜り込んできて距離がつまりすぎた。お互いパンチが出せない状態でのクリンチが続いた。

 距離ができれば伊藤の踏み込みを活かしたパンチが当たるため、相手もしつこくに前に出てきて距離を潰してきた。また、チュプラコフは背が小さいが、体幹部分が非常に厚く前に出てての押し合いでパワーがある様子だった。伊藤もポイントは取っていたが、ペースを掴むまでには至ってなかった。

サイドへの動きで流れが変わる

 前半はお互いに距離が掴めなかったが、徐々に伊藤の右ストレートがヒットしてきた。試合の中盤あたりから、サイドに動き始めたことで相手の前進をヒラリとかわしリズムを掴んできた。それまでは直線的な動きで相手の前身を受け止めていたが、横に動くことで直線的な相手の動きを封じていった。

 打ち終わりにパンチを打ち込み的確にヒットを重ね、ストレートとボディを交えた攻撃で徐々に相手にもダメージが溜まったきた。リングサイドで観戦していたが、相手の表情からも焦りと苦しさが伺えた。次第にチュプラコフは前に出ることしかできなくなり、出てもクリンチに逃げる苦しい展開となり策が無くなっていった。

 伊藤のボディ打ちが効果的に決まり、相手も中盤から徐々に失速していった。そして、7ラウンド目にコーナーに追い込みパンチを連打した。そこで相手陣営からタオルが投入され試合がストップ。7回2分11秒TKO勝ちで、トリプル世界戦のメインをKO勝ちで飾った。やりにくい相手に見せ場を作って、ノックアウトできた経験は大きい。トリプル世界戦のトリをKO勝利で締めくくった。

撮影 福田直樹(FUKUDA NAOKI)
撮影 福田直樹(FUKUDA NAOKI)

防衛回数よりも強い相手とやりたい

 スーパーフェザー級は少し前まで日本人王者が主役として世界で活躍していた。WBA王者だった内山高志は11度の防衛回数を誇り、WBC王者の三浦隆司が海外を主戦場にして活躍していた。この階級は海外の競合も多くビックマッチも多い。メイウェザーやパッキャオも、この階級で激戦を繰り広げており人気も非常に高い階級だ。

 伊藤はアメリカを拠点としてトレーニングをしていて、海外の強豪とのビックマッチを目指している。私はタイトル獲得直後に、ボクシング専門サイトでインタビューをしている。伊藤は、「防衛回数よりも強い相手とやりたい。誰からも逃げないし、怖いと思っていた選手とやることでレベルアップをして成長ができた。それをこれからも求めていきたい」と言っていた。

 敵地でタイトルを獲得した気持ちの強さもある。本場アメリカでメインを張る日も近いかもしれない。ニューヒーロー伊藤のこれからの活躍に期待したい。

撮影 福田直樹(FUKUDA NAOKI)
撮影 福田直樹(FUKUDA NAOKI)
元ボクシング世界チャンピオン

第35代WBC世界ライトフライ級チャンピオン(商社マンボクサー) 商社に勤めながらの二刀流で世界チャンピオンになった異色のボクサー。NHKにて3度特集が組まれ商社マンボクサーとして注目を集める。2016年に現役引退を表明。引退後に株式会社ReStartを設立。解説やコラム執筆、講演活動や社員研修、ダイエット事業、コメンテーターなど自身の経験を活かし多方面で活動中。2019年から新しいジムのコンセプト【オンラインジム】をオープン!ボクシング好きの方は公式サイトより

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