ソーシャルメディアの極論や過激ツイートに気をつけろ 左派を標的にするロシアのトロール部隊

トロール部隊が暗躍するソーシャルメディア(写真:ロイター/アフロ)

フリージャーナリストをリクルート

[ロンドン発]フェイスブックは2017年以降、不正な活動に関わるネットワークを100以上取り除いていますが、1番目も100番目もロシアのトロール部隊「インターネット・リサーチ・エージェンシー(IRA)」だったそうです。IRAに関係する個人が運営する十数もの偽キャンペーンを削除しました。

IRAはロシアに有利なようにオンライン上でプロパガンダを実行する悪名高きトロール部隊です。16年のアメリカ大統領選にも介入したことが米国家情報長官の報告書で指摘され、米司法省に起訴されています。

今年8月、フェイスブックは米連邦捜査局(FBI)の通報を受け、IRAに関係する個人が運営する13のアカウントと2つのフェイスブックページを削除しました。約1万4000の利用者がIRA関連のページをフォローしていました。標的はアメリカ、イギリス、アルジェリア、エジプト、中東・北アフリカで英語を話す国々です。

彼らはアメリカを含む国々の編集者になりすまして何も知らないフリージャーナリストをリクルートし、特定のトピックについて英語とアラビア語で記事を書かせていました。善意の利用者を通じ米国内で政治広告を掲載する承認をフェイスブックから取り付けるのも狙いの一つです。

ターゲットは左派のオーディエンス

政治的に左派のオーディエンスを主なターゲットとしてネットワークを構築したばかりでした。彼らは架空の左派系ニュースメディア「ピース・データ」を立ち上げるなど、ネットワークを通じて国際ニュースを投稿。

アメリカやイギリスの社会正義や人種差別など、それぞれの国や左派コミュニティーに響く時事問題を取り上げていました。

その他のトピックは北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)政治問題、西側が関係する戦争犯罪や腐敗、パンデミック、シェールガス採掘への批判、米大統領選の民主党キャンペーン、ドナルド・トランプ米大統領とその政策、アフリカにおける米軍事政策などです。

陰謀論を信じる極右を含む「Qアノン」もトピックの一つ。Qアノンはトランプ大統領の熱狂的な支持者が多く、反エスタブリッシュメント。Qアノンは「首都ワシントンのピザ店でヒラリー・クリントン元国務長官が児童売春に関わった」という陰謀論を主張しています。

中道左派のバイデン前副大統領を攻撃

ソーシャルメディア分析会社グラフィカの報告書によると、アメリカやイギリスでは左派の選挙区が継続して標的にされており、米民主党や英労働党で中道寄りの大統領候補や党首を支持しないよう誘導していました。

「ピース・データ」の投稿はジョー・バイデン前副大統領から支持者が離れていくよう試みていました。16年の大統領選でもクリントン氏に対して同じような攻撃が行われたそうです。

「ピース・データ」は、白人警官による黒人男性ジョージ・フロイドさん暴行死事件に端を発する黒人差別撤廃運動「ブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命は大切だ)」など人種間の緊張、政治的な対立に特別な関心を示していました。

BLMの抗議運動や共和党のトランプ大統領、民主党のバイデン前副大統領、カマラ・ハリス副大統領候補への批判も取り上げていました。

中でも、バイデン・ハリスペアへの批判は痛烈で「この2人は右派ポピュリズムに服従している」「道徳的な基準を示さず、意図的に説明責任を逃れた」「バイデンはバルカン諸国と道徳的に堕落した有害な関係を持っている」と追及しています。

ツイッターも同じネットワークの5つのアカウントを停止しました。

中国のトロール部隊

プロパガンダやデマゴーグはインターネットが普及するかなり前の時代から存在します。しかしソーシャルメディアの登場で、その威力は倍加しています。

イギリスではEU離脱、アメリカではトランプ大統領の誕生で中道右派と中道左派が後退し、国民もメディアも真っ二つに分かれています。

日本でも「戦後レジームからの脱却」を掲げる安倍晋三首相は右派と左派、国民とメディアを二分しました。安倍首相の辞任表明で勢いづく左派と右派の対立がオンライン上で先鋭化しています。

新型コロナウイルスの影響で経済が落ち込めば、中道勢力がさらに衰退し、右と左の極端な意見が幅を利かせる恐れがあります。

米中対立が激化する中、中国のトロール部隊が暗躍しています。アメリカでは親中派ネットワークが英語でトランプ大統領のコロナ対策を厳しく批判する一方で、中国を持ち上げていたことがやはりグラフィカの調査で明らかになっています。

オンライン上のプロパガンダやデマゴーグと日本も決して無縁ではありません。ご注意を。

(おわり)