【大阪都否決】橋下市長はなぜ、敗れたのか

大阪都構想をぶち上げ、主要政党を震え上がらせた大阪維新の会代表、橋下徹大阪市長はどうして敗れたのか。住民投票が1万741票差で否決された理由を考察するため、データセットを作ってみた。

まず、表計算ソフトに(1)大阪市24区の賛成・反対票(2)2010年度市税(3)人口1人当り税収(4)生活保護率(5)15年の65歳以上人口推計(6)高齢化率(7)大阪市議選の結果を入力した。

次に埼玉大学・谷謙二研究室が提供しているフリーの地理情報分析支援システム「MANDARA」を使ってデータを地図上に表現してみた。

(1)大阪都構想への賛成率

まずは都構想への賛成率から。大正区44%、平野区44.7%が低く、北区59%、西区57.7%が高い。特別区の区割り案は赤色マーカーで記した。

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(2)賛成票―反対票の票数

次は賛成票から反対票を引いてみる。平野区マイナス10,887票、住吉区マイナス7,327票。一方、北区はプラス11,018票、淀川区プラス9663票。

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高齢者の反対に屈した!?

朝日新聞・朝日放送(ABC)の出口調査で反対が賛成を上回ったのは70代以上だけ。読売新聞・読売テレビの出口調査では20~50代は賛成が優勢、60代は賛否が拮抗し、70代以上は反対が多かった。

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共同通信の出口調査では20~50代は賛成が上回ったが、60代以上では反対が多数を占めた。期日前・不在者投票を加えた結果からみると、高齢者の反対が多かったことがうかがえる。

(3)大阪市の65歳以上人口

65歳以上の人口をみると、勝負の分かれ目となった平野区は55,327人で24区中、断トツ。住吉区は42,829人で5位だ。

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政党支持別では公明党支持者と共産党支持者の反対はそれぞれ79%、88%(朝日新聞・朝日放送の出口調査)にのぼっていた。

賛成率と先の大阪市議選での公明党と共産党の合計得票率を調べたところ、負の相関関係はみられたが、関連性はそれほど強くなかった。生活保護率も関連性が薄かった。

都構想への賛成率と一番強い関連性を持っていたのは高齢化率だ。

24区ごとの賛成率を横軸に、高齢化率を縦軸にとり散布図を作ってみた。賛成率50%と右肩下がりのグラフの交点をみると、高齢化率25.9%が賛否の分岐点になったと推察できる。

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次に関連性がうかがえたのは1人当たりの税収だ。

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24区の賛成率を横軸に、各区の人口1人当たりの税収を縦軸にとり散布図を作ってみた。賛成率50%と右肩上がりのグラフの交点は、1人当たりの税収が28万円ぐらいを指している。

今度は人口1当たりの税収のデータを地図に落としてみた。

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次に5つの特別区に分けた場合、それぞれの特別区で見た1人当たりの税収がどうなるのか、調べてみた。

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豊かな新「北区」から反対に回った区はない。一番裕福な新「中央区」からは天王寺区と、西成区(高齢化率は39.3%と24区で断トツ)が反対に回った。

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天王寺区と西成区における維新支持率は先の市議選の得票率を参考にすると、それぞれ33.3%(24区中19位)、32.6%(同20位)と下から数えた方が早い。

税収が乏しい新「東区」から東成区、城東区、鶴見区が賛成したのは逆に維新の浸透率が高く、高齢化率も比較的低いためとみるのが妥当だろう。

最大の敗因は?

橋下市長と維新の戦略は、バブル時代の乱開発で財政赤字を膨らませた大阪府と大阪市の二重行政のムダを強調し、「府市合併で大阪都を作れば、二重行政の弊害は解消される」と訴えた。

政令指定都市の大阪市が廃止されれば市の財源と権限は大阪府に吸い上げられると反対派から批判されると、財政調整制度による東京都の特別区の配分率は55%だが、大阪都の特別区は77%だと反論した。

しかし5つの特別区では、勝ち組の「北区」「中央区」と、負け組の「湾岸区」「南区」「東区」に二分されるのではないかという懸念がなかなか払拭できなかった。「湾岸区」「南区」「東区」の住民は、大阪市がなくなると貧しくなると心配したのではないか。

開票後の記者会見で、大阪維新の会幹事長の松井一郎府知事は「(大阪都という)制度の話がいつの間にか(住民サービスという)政策が争点になってしまった」と敗因を分析した。

勝負の分かれ目は、新しくできる特別区同士の間で住民サービスなどの格差が生じないよう財源をいかに配分するかを説明したか否かだったと筆者は総括する。

(おわり)