ノルウェーで8年ぶり政権交代、右派政党が初の連立入り

移民排斥など極右思想を持つノルウェー人アンネシュ・ブレイビク受刑者がオスロの官庁街で爆弾を爆発させ8人を殺害、南部ウトヤ島で労働党青年部の若者69人を射殺した事件から2年余り。そのノルウェーで9日、総選挙(一院制、定数169)の投票が行われた。

ストルテンベルグ首相率いる労働党はウトヤ島の惨劇を生き延びた若者を「ウトヤの声」と名付けて多数候補者に擁立。「私たちはノルウェーの価値を決して捨てない。私たちの答えはより民主的な、より開かれた、より人間的な社会だ」と訴えたが、労働党など中道左派の与党連合は、市場メカニズムを重視する中道右派の野党連合に破れ、8年ぶりに政権が交代した。

「ウトヤの声」となった候補者の1人は英紙ガーディアンに「ブレイビク受刑者が一時期でも党員として属していた進歩党が政権入りすることに傷ついている。進歩党のメンバーは今でも強烈な反移民のレトリックを弄している。そうしたレトリックがより敵意に満ちた環境を作り出している」と憤りをあらわにした。

保守党のソルベルグ党首が、移民規制を訴える右派・進歩党と連立を組んで首相に就任する見通し。ソルベルグ首相が誕生すれば同国では2人目の女性首相となる。

ブレイビク受刑者は「進歩党の移民規制は軟弱」と批判して同党を脱退していた。進歩党の主張がノーベル平和賞を授与しているノルウェーのノーベル賞委員会の精神と反することなどから、これまで進歩党が他の政党と連立を組んで政権に参加したことはなかった。しかし、2005年以降、政権奪還を目指す保守党が、勢力を伸ばす進歩党との連立を模索していた。

進歩党のイェンセン党首は財務相に就任するとみられている。中道右派のうちキリスト教民主党や自由党は進歩党との連立を敬遠して政権に入るかどうかは微妙。保守党と進歩党が少数与党を形成する可能性もある。

開票率93%で、中道右派は96議席(保守党が48議席、進歩党が29議席、キリスト教民主党10議席、自由党が9議席)。進歩党はブレイビク受刑者との関係を否定したが、前回総選挙より12議席減らした。中道左派は72議席(労働党が55議席、中央党が10議席、左派社会党が7議席)の見通し。

ノルウェーの国民1人当たりの国内総生産(GDP)は購買力平価で見た場合、世界4位と非常に裕福で、昨年のGDP成長率も3.1%。北海油田、水力発電とエネルギーに恵まれ、ノルウェー海、バレンツ海には天然ガス、石油が埋蔵されていることがわかっている。

保守、進歩両党はインフラ整備や教育への公的支出を増やすよう訴えていた。保守党は石油収入を原資にした7500億ドルにのぼる世界最大の政府系基金の運営形態見直しを検討。国営企業の一部民営化も視野に入れている。

進歩党のイェンセン党首は石油基金の4%を政府支出に回せる現在のルールの上限を見直し、インフラ整備に回す考えを示している。

労働党のストルテンベルグ首相はタクシー運転手に扮して有権者の本音を聞き出すパフォーマンスで巻き返し、議会第1党の座を死守したが、中道左派の連立政権に対する飽きを払拭できなかった。また、独立調査委員会の報告書が、警察がしっかりしていればブレイビク受刑者のテロは防げたと結論づけたことから、現政権の警察運営に批判が集まった。

ノルウェーの移民人口は全体の14%。進歩党は、欧州以外からの移民を大幅に制限すべきだと主張している。これまで移民に寛大だった北欧にも非寛容の暗雲が垂れ込めている。(おわり)