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「ウィ・ウォント・アベ!」 BRICs名付け親ジム・オニール氏が自民党の安倍晋三総裁にラブコール

木村正人在英国際ジャーナリスト

新興国の頭文字を取った造語「BRICs」の名付け親として有名な米資産運用会社ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのジム・オニール会長は最新のニュースレターで、「2~3%のインフレターゲットを目指す」という次期首相の最有力候補、安倍晋三・自民党総裁の発言を受け、1985年のプラザ合意以降、続いてきた円高傾向が、これから数カ月の間に円安に反転する可能性があるとの見方を示した。

ニュースレターによると、オニール氏はプラザ合意以降、1995~97年の一時期を除いて円に対して強気だった。日本の貿易収支、そして経常収支が常に大きな黒字だったからだ。

バブル経済が崩壊した後の1990年代半ば以降、海外からインフレターゲットの導入を求める声が強まり、為替相場が円安に振れると読んで、円売りを仕掛けたトレーダーの多くが引退に追い込まれた。

しかし、今年9月の経常収支が現行統計を開始した1996年1月以来、初めて赤字に転落。政府債務残高は国内総生産(GDP)の240%になんなんとし、「ギリシャの債務危機が大した問題に見えない」とオニール氏はいう。

超円高で輸出産業は総崩れとなって、経済の立て直しは進まず、その上、領土問題や歴史問題で中国や韓国との関係が悪化。日本銀行は1%のインフレターゲットを定めながら、市場が期待するほど積極的な金融緩和策を取らず、さらに経済が弱体化するという悪循環が続いてきたとオニール氏は分析する。

ここ2~3年、次第に円に対して悲観的になり、円売りのタイミングを慎重に見計らってきたオニール氏だが、それにもかかわらず円高水準に張り付いたままだった。

日本銀行に2~3%のインフレターゲット導入を強く求めた安倍総裁の発言に、オニール氏は「円は現在の水準にだらだらと留まるか、そうでなければ向こう数カ月間に急激に円安に向かう」と歓迎する。

安倍総裁へのオニール氏のラブコールは、国内リフレ派が期待するデフレ脱却の光明になるのか、それとも「日本売り」のノロシなのか。国際市場も固唾をのんで日本の総選挙の行方を見守っている。

(おわり)

在英国際ジャーナリスト

在ロンドン国際ジャーナリスト(元産経新聞ロンドン支局長)。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。masakimu50@gmail.com

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