オランダ対オーストリアでは、オーストリアのフランコ・フォーダ監督の不可解な采配に考えさせられた。

1つは、誰もが指摘していることだ。

昨日も書いたが、チーム最高のタレント、アラバを3バックの真ん中で使い続けていること。CKを任せられる高いキックの精度の持ち主を最後方で守備に専念させるのは、あまりにももったいない。

左に1つずらして左CBとするだけで上がって行ける。アシストの1つ手前になる局面を変えるパスを最前線に送り込むことができる。

特に、左サイドから走力ある右SBライナーへ送り込まれる、鋭く大きなサイドチェンジは強力な武器になったはず。3バックでサイドにスペースがありラインを上げる傾向のあるオランダなら、ピンポイントでライナーの前へ通せば、そのまま対角線ランからシュートということもあったろう。そうでなくとも右からのセンタリングをCFのグレゴリチュ、攻撃的MFサビツァーに合わせ、アラバは3列目から上がってミドルシュートを狙う、というシナリオが描ける。

が、監督の決断は3バックの真ん中。これはアラバ自身が相手の足を踏むPKを犯すことで、完全な裏目に出る。守備を固めるどころか失点の原因になったのだから。

■先制されてもアラバは不動の謎

2つ目は、もっと不思議な采配だった。1-0になってもアラバは動かなかった。

前回の北マケドニア戦では同点にされた時点で、アラバを左サイドへ移した。そしてそれが奏功して勝ち越し点を挙げることができた。なのに今回は、監督は不動、よってアラバも不動。やっと左サイドに移されたのは、オランダに追加点が入ってからだった。

この采配から伝わって来るメッセージは“1-0で負けるのは構わない”である。

これは勝ち上がりのための駆け引きだったのかもしれない。

というのも、次の対戦相手は先に試合を終えていたウクライナであり、1点差負けであれば勝ち点4で並んでも得失点差で上回る。オランダに続く2位になって勝ち上がりが確定する。

1点差負けでも勝ち上がれるから構わない、という采配は、我われにとっても記憶に新しい。こちらに書いたロシアW杯の日本対ポーランドで1点差負けを狙いにいった、西野朗監督の采配と同じである。

負けても良い、というのはスポーツマンシップに反するかもしれないが、あの采配が的中して勝ち上がったお陰で、ベルギー相手の日本サッカー史上に残る名勝負が見られたのである。

■最終節は予定調和の引き分けか?

首位突破が決まったオランダが次の試合でメンバーを落とすことを責められないのと同様、1点差負けを狙ったオーストリアを責められない。国際大会のグループステージは勝ち上がりこそがすべてなのである。

1点差負けを狙って2点差で負けるのもよくあることだ。スポーツマンシップに反したことによるサッカーの神様の罰である。が、人間レベルでは反することもやむを得ない。

懐かしの37歳パンデフのゴールはオフサイドで取り消されてしまった
懐かしの37歳パンデフのゴールはオフサイドで取り消されてしまった写真:ロイター/アフロ

さて、これで最終節はウクライナとオーストリアが勝ち点3、得失点差ゼロで並んだ。予定調和で引き分けで終えて「勝ち点4で両者勝ち上がり」という、もっと酷いスポーツマンシップに反する行為が暗黙のまま行われる可能性が出てきた。前回大会では3位であっても勝ち点4なら勝ち上がっているのだ。

八百長に近い行為だが、勝負の厳しさを承知しているUEFAだからこそ何もできないはずだ。この試合ブックメーカーも賭けの対象から外すのではないか。

■ウクライナ対北マケドニア

オランダ戦では十分に見られなかったウクライナの質の高さがよくわかった。

ワンタッチ、ツータッチで回すパススピードが速く、北マケドニアは奪えない。勇敢にプレスに行ってもトラップでボールを動かされて空回り。ヤルモレンコ、ヤレムチュク、そして昨日のMVPマリノフスキのFW陣、ジンチェンコ、シャパレンコのMF陣のクオリティは今大会でも有数だろう。

一方、北マケドニアのクオリティはパンデフ、バルディ、エルマスの3人に集中しており、彼らがボールを持てば勝負になるが、なかなかボールが届かない。結果的にスペース的にもチャンスの数でも前半は8対2くらいで、ウクライナが上回っていた。

これが後半は2対8くらいで北マケドニアの優勢に一転する。オランダ相手にボールを譲り過ぎて自滅した決断といい、采配にもプレーにも波があるのがウクライナらしさ。劣等感をぬぐえば決勝トーナメントでは優勝候補相手にもサプライズを起こせる力(北マケドニア戦の前半)もあるが、コロッと負ける(同後半とオランダ戦の70分間)かもしれない。

※残り1試合、デンマーク対ベルギーについてはこちらに掲載される予定なので、興味があればぜひ。