コロナ変異種。スペイン、英国からの航空便停止も、肝心の地続きの英領ジブラルタルは…?

変異種確認のジブラルタルとスペインの間は毎日1万5000人が行き来する(写真:ロイター/アフロ)

感染力が70%強力とされる、コロナ変異種の侵入を防ぐために、スペインでも今日(22日)からイギリスからの航空便受け入れを停止した。

これは遅れた決定だった。オランダが真っ先に20日から受け入れを停止し、1日遅れてベルギー、イタリア、ドイツ、フランスらが続いた。スペインは「EU全体で協力して対策すべき」という筋論で対応が遅れた。

この遅れは致命傷になりかねない。というのも、イギリス人観光客を上得意客とする南部のリゾート地(特にカナリア諸島とマラガ)を持つスペインには、19日(土)と20日(日)だけで実に277便もの英国発便が到着していたからだ。うち半分の132便がロンドン発だった(『エル・インディペンディエンテ』紙の報道による)。

■停止後も飛ぶ英国発便。甘い水際対策

航空便の受け入れ停止に先駆け、20日スペイン政府は英国発便に対して「PCR検査のチェック体制強化」を約束していた。

チェック体制強化? 何のことだ?

11月23日以来、感染レベルの高い国や地域(当然イギリスも含まれている)からの入国者全員に、入国72時間以内に実施されたPCR検査での陰性証明書の提示が義務付けられていたはずだ。これ以上、強化しようがない。

だが、これは厳密に適用されていたわけではなかった。提示を求められるのは全員ではなく、何人かに一人だけ。スペインでは手荷物検査場でドラッグの特別検査を求められることがあるが、あれと同じである。

入国時の混雑を避けるための“抜き打ちチェック”だった。「PCR検査のチェック体制強化」とはつまり、人員を増やして全員チェックにした、という意味だろう。

PCRの陰性証明書の携帯を義務付けておいてチェックしない。日本では考えられないことだが、これがスペインの水際対策の実態である。

もう一つ付け加えると、今回の航空便の受け入れ停止には「例外」がある。

スペイン人とスペインに住居がある者に対しては、PCR検査が陰性であれば英国からの渡航は禁止されていないのだ。クリスマスで帰国したい者、クリスマスをスペインにある別荘で過ごしたい外国人への配慮である。

よって、「航空便の受け入れ停止」をうたいながらも、実際はスペイン人と外国人(主にイギリス人)を乗せて英国発便は今も飛んで来ている。

■変異種確認のジブラルタルとは地続き

加えて、やっかいなことにスペインには英国の海外領土ジブラルタルがある。イギリス政府がデンマーク、オーストラリアと並んで変異種の感染者を確認した場所である。

スペイン南東部、地中海上をアフリカに向かって突き出したこの半島は英国領なので、スペイン政府の航空便受け入れ停止の対象外で、もちろん、同じ英国内の移動ゆえにPCR検査の陰性証明も義務付けられていない。

スペインとジブラルタルの間の国境では、パスポートまたはIDカードを見せれば両国の国民は自由に行き来できるようになっている(ブレグジットで英国がEUを離脱する来年1月1日以降は状況が変わるかも)。そのため、日々この国境を越えて1万5000人が働きに出て、帰宅するということを繰り返している。

これはつまりこういうことだ。

コロナ変異種によって英国発の航空便の受け入れを停止したスペインと、変異種の存在が確認されたジブラルタルは地続きの国境を通じて毎日1万5000人が行き来しているが、英国領のそこでは航空便の受け入れ停止もされず、到着者のPCRの陰性証明も必要ない――。

1.英国との関係が密なのに(密ゆえに?)航空便の受け入れ停止が遅れた

2.これまでPCRの陰性証明書のチェックは厳密に行われていなかった

3.クリスマスなのでスペイン人と在住外国人は今も英国から飛んで来ている

4.変異種が確認されたジブラルタルとは地続きで行き来はほぼ自由

5.ジブラルタルは英国領ゆえに航空便も自由に飛び、PCRの陰性証明も不要

これでスペインで変異種の感染拡大が起きないわけがないと思うが、どうか。

今のところスペイン政府は、ジブラルタルへの到着者に対してPCRの陰性証明を義務付けること、ジブラルタルとの国境のチェック体制を厳しくすることを表明している。

ただ、大移動が見込まれるクリスマスイブまであと2日。間に合わないかもしれない。

※情報はすべて12月22日18時(スペイン時間)現在