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韓国の宿敵だった元日本代表FWカズ。54歳での“現役続行”を韓国はどう見たか?

金明昱スポーツライター
来季も現役続行すると宣言した三浦知良(写真:つのだよしお/アフロ)

 “カズ”こと三浦知良(横浜FC)は、今も韓国でかなり知名度が高い。

「試合に出ることにこだわりたい」と出場機会を求めるカズにJFLや地域リーグのクラブがオファーを出したそうだが、スポーツ紙が報じているところ最終的にはJ3昇格を目指すJFLの鈴鹿ポイントゲッターズへの移籍が濃厚とのことだ。

 54歳ながらも現役を続けるというニュースは、韓国でも大きく報じられている。

「“54歳現役”三浦、5部(地域)リーグチームへの移籍か…『オファーは来ている』」(スポータルコリア)

「“最高齢の現役”三浦 日本の4部リーグ(JFL)に移籍か…『出場機会が優先』」(スポーツ京郷)

 日本で報じられる移籍情報は、こうしてすぐに韓国でもニュースになるのだが、それだけカズが今も現役を続けていることに驚きを隠せないのだろう。

 実際のところ、韓国ではどのように受け止められているのだろうか。

カズの現役続行は「日本特有の”英雄崇拝”」?

 スポーツ・芸能専門サイト「スポータルコリア」のキム・ソンジン記者は、韓国内の反応について教えてくれた。

「世間一般的な反応はどちらかと言えば否定的な意見が多いです。カズさんが現役を続けることについては、どちらかと言えばネガティブな反応があります。日本特有の“英雄崇拝”ではないのかという意見のほか、引退をしないために日本サッカーの発展を阻害しているという見方もあります」

 ちなみにキム記者は6年前に横浜FCでカズを取材したことがあるという。当時の印象についてこう語る。

「50歳までプレーしていた時は本当にすごいという思いがありました。ただ、今季は横浜FCで出場機会が得られなかったのを見ると、引退するタイミングを逃してしまったのかな?もう現役を退いてもいいのでは?と思ったこともあります。ただ、初めて出会った時の印象がすごく良くて、もっと応援したい選手になりました。来季はJFLのチームに移籍するとのことですが、どれほどのパフォーマンスを発揮できるのは気になるところです。とにかく頑張ってほしいというのが個人的な気持ちです」

 プロサッカー選手としての実力に疑問を抱きつつも、あくなき挑戦を続けるその姿にキム記者も魅了されたようだった。

カズとラモスのFK練習を見て「脅威と感じた」

 韓国でカズに関する面白いコラムを見つけた。経済サイト「エコノテリング」に掲載された「54歳、日本の三浦“グラウンド浪漫”」という見出しで、編集委員が執筆したコラムだった。

冒頭からこう始まる。

「久しぶりに“カズ”の名前を見た。1967年生まれで今年54歳の三浦知良が来年も現役でプレーするというニュースだ。横浜FCでは今季リーグでたったの1試合、1分だけプレーする屈辱を味わったが、4部リーグ(JFL)でも地域リーグでも呼ばれればプレーすると言った。現役で36シーズンを走ってきた彼の身体管理能力と意志の固さに拍手を送りつつも、同時に『あえて?』 という疑問が頭をよぎった。役割をほとんど果たせない状態で最高齢記録を更新することに何の意味があるだろうか」

 このコラム筆者もカズへの賛否と疑問で揺れ動いている。また、カズを初めてみ見たのが1993年カタール・ドーハでのアメリカW杯アジア最終予選だったという。

「日本代表はブラジル留学経験がある三浦と帰化選手のラモス瑠偉を中心に史上初のW杯出場を狙っていた。日本の練習場で直接見た三浦とラモスの実力は、私の予想を超えて脅威に感じるほどだった。FKの練習の時。ラモスがサッとパスを出すと三浦が走りこんで左足でボレーシュートを打った。10点満点中の10点。100%の成功率だった。中盤のラモスと最前線の三浦の呼吸は完璧だった」と当時の練習風景を述懐している。

「50代半ばでも現役でプレーできることに拍手」

 93年W杯アジア予選で韓国は日本と対戦し、カズのゴールが決勝点となり0-1で敗れている。

 筆者は「三浦のカズダンスセレモニーをよく記憶している。韓国にとっては9年ぶりの日本戦での敗北で、W杯本大会進出へ黄信号が灯った瞬間だった」と振り返っている。

 日本はイラクにアディショナルタイムに同点弾を決められ、2-2で引き分けてW杯出場を逃し、一方の韓国は奇跡的にW杯行きの切符を手に入れた。日本では“ドーハの悲劇”、韓国では“ドーハの軌跡”として記憶されている。

 そんなカズについて「指導者などの道を選ばず、現役を続けることを選択した三浦。50代半ばでも現役サッカー選手としてプレーできることを示しただけでも、三浦は拍手を送られるに値する」と締めくくっている。

 現役にこだわってサッカーを続けることに賛否の声はあるにせよ、韓国では好意的に受け止めている人もいるということだ。

 ちなみにキム・ソンジン記者はカズを紹介する記事で「日本サッカーの生きる伝説」と表現している。その言葉通り、これからも自分の道を突き進んでほしいと思う。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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