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「まるで“安打製造機”」今季6勝の古江彩佳の恩師が語っていた強さの秘密とは?

金明昱スポーツライター
今季6勝目を挙げ逆転賞金女王へ突き進む古江彩佳(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 TOTOジャパンクラシックの最終日を単独首位から出た古江彩佳は3バーディー、ボギーなしの69で回り、通算16アンダーで大会初優勝を飾った。4日間をすべて60台で回る完璧なゴルフで、猛追する稲見萌寧から逃げ切った。

 今季6勝目で、アマチュアでの優勝を含めるとツアー通算7勝目となった。ここ4戦で3勝という強さは本物だ。

 それにしても抜群の安定感は試合を重ねるごとに磨きがかかっている印象があり、プレッシャーにもめっぽう強い。

「ボギーを叩かない、隙のないゴルフをしたいなと思っています」

 古江が首位で最終日を迎えた時に意識していることだという。最終日のフェアウェイキープ率は100パーセント。ショットの精度の高さがスコアに直結している。今大会、ボギーを打ったのは初日に1つ、2日目に2つだけで、“ボギーを打たない古江”は健在だ。

 ルーキーイヤーとなった2020年に古江はいきなり3勝しているが、その強さについて滝川第二高校ゴルフ部の角谷真吾監督に聞いたことがある。その時、こんなことを語っていた。

「やはりこれだけ勝てているのは、体の強さが挙げられると思います。高校時代も古江はケガをしたことがないんです。高校2年からナショナルチームに選ばれたあと、たくさんの海外遠征に行き、帰国したあとはプロツアーや日本女子アマチュア選手権など3~4週間も続けて試合に出たこともありました。それでも疲れた顔ひとつみせなかったですからね」

「体の強さは親譲り」と話す角谷監督。確かに4日間の大会にもなると、最終日は最終ホールが近づくにつれて、体力の消耗で集中力が切れたり、ショットの安定性が欠けたりしてスコアを落とすことも少なくない。

 古江には持って生まれた身体の強さがアマチュアの頃から備わっていた選手だったという。

 さらに、角谷監督は高校時代から「心・技・体のバランスが一番整っていた選手」だったとも話していた。

「ある大会で団体戦を組むときでも、安心して任せられる選手でした。野球でいうアベレージバッター、安打製造機です。確実に打ってくれる選手が古江なんです」

 つまり、アマチュアの頃からボギーを打たずミスが少ない選手だったが、プロになってからもその姿は変わらない。

 TOTOジャパンクラシックの最終日にも稲見萌寧が猛追してくる状況でも、焦らずにスコアを伸ばす姿が印象的だった。

 角谷監督は「ドンと落ち着いた気持ち、何があっても動じない。高校時代にはたくさん悔しいこともあったのですが、それならもっと練習しようという子でした」と語っていた。

 現在、賞金ランキング2位の古江は残り3試合で、同1位稲見から逆転で賞金女王を狙う。体調は万全で心身ともに充実していることから、破竹の勢いがどこまで続くかも見ものだ。

 今夏の東京五輪では、日本代表の座を勝ち取れなかった悔しさから涙を流していた古江。次は笑顔で頂点をつかみにかかる。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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