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日本が勝利したメキシコに韓国は6失点の惨敗!8強止まりで東京五輪を去ることになった原因とは?

金明昱スポーツライター
準々決勝でメキシコに3-6で敗れた韓国はベスト8で東京五輪を終えた(写真:ロイター/アフロ)

「6失点は私自身も想像していなかった。我々の実力が足りなかった。6失点は受け入れがたい状況だ」

 メキシコ戦を終えたあと、韓国のキム・ハクボム監督はショックを隠し切れなかった。

 7月31日、横浜国際総合競技場で行われた東京五輪サッカーの準々決勝。韓国の相手は今大会、絶好調のメキシコだった。

 メキシコはグループステージでは日本に1-2で惜敗したものの、フランスを4-1、南アフリカを3-0で下して、ノックアウトステージに進んでおり、難しい試合になるのはある程度予想されていた。

 試合開始から積極的なハイプレスで主導権を握りにかかる韓国だが、前半12分にFWヘンリ・マルティンに先制点を決められる。しかし、その8分後にはエースナンバーでもある背番号「10」のMFイ・ドンギョン(蔚山現代)が豪快なミドルシュートを決めて試合を振り出しに戻した。

 だが、同30分には流れの中から追加点を許すと、同39分にPKからゴールを許して1-3で前半を終えた。

 後半に入ってからは6分に左サイドで浮き球を受けたイ・ドンギョンが左足で鋭い一発を突き刺し、1点差に迫った。

 取られたら取り返す一進一退の攻防になるかと思われたが、メキシコの決定力はここから発揮される。

 同9分にメキシコはFKからFWマルティンが頭で合わせて4点目。同18分にはMFセバスティアン・コルドバがPKに続いて2点目となるミドルシュートでゴールネットを揺らして5点目を決めた。

 同39分には、メキシコの10番、FWディエゴ・ライネスが右サイドからペナルティエリア内に侵入し、個人技で韓国DFを翻弄すると、パスを受けたFWエドゥアルド・アギーレが決めて6点目。

 韓国はアディショナルタイムにセットプレーからFWファン・ウィジョ(ボルドー)が1点を返したが、相手のほうが一枚も二枚も上手だった。

「メキシコの技術が優れていた」

 キム・ハクボム監督は試合後、こうコメントを残している。

「応援してくれた国民には本当に申し訳ない。全体的に今回の敗北に関しては、選手ではなく、監督が対応をできずに起こったことだと思う。我々が守備的に準備したのではない。十分に迎え撃つことができると考えていた。6失点は私自身も想像していなかった。我々のほうが未熟だった。6失点は受け入れがたい状況だ。今は私がすべてを受け入れなければいけないと思う」

 敗れた原因のすべては、監督である自分にあることを強調していた。グループステージのルーマニア戦で2ゴールを決めたMFイ・ガンイン(バレンシア)も後半の途中から入ったが、局面を変えるまでには行かなかった。

 FWイ・ドンジュン(蔚山現代)は6失点について「誰かのミスというのではなく、全体的に力が足りなかった。メキシコの選手たちは個人技が自分たちよりも優れていた」と相手の実力が上手だったと認めていた。

 「スポーツ京郷」は「韓国サッカーが世界トップクラスのサッカーに押されるのは戦術、スピード、体力、体格ではない。個人技だ。韓国サッカーが世界大会で予選を通過しても、トーナメントで敗れるのも、個人技が足りないからだ。闘志や組織力で戦うのは限界がある」と指摘。

 また、メキシコの個人技だけでなく、視野の広さやセンス、パスワークの良さを強調し、「そんな選手たちと戦えば、しんどい試合になるのは当然だ。韓国サッカーも技術を高める必要がある」と伝えている。

ファン・ウィジョらOA枠に物足りなさも

 個人的に残念だったのは、オーバーエイジ(OA)枠で選出された3人が、それほどチームに大きな影響を与えられなかったことだ。

 ちなみに準々決勝でニュージーランドを破り、ベスト4に進出した日本を見ていると、OA枠で選ばれた吉田麻也、酒井宏樹、遠藤航の盤石のプレーは見ていて安心感があるほどで、それに比べると韓国には物足りなさを感じずにはいられなかった。

 フランスで活躍する大会屈指のFWとして期待されたファン・ウィジョも相手方の守備陣の脅威になるには力不足だった。

 さらに元々、招集予定だったDFキム・ミンジェ(北京国安)がクラブチームの要望で五輪不参加となり、DFパク・ジス(金泉尚武)がその代わりとなったが、メキシコ戦での大量失点は厳しい採点となってもおかしくはない。

 ブンデスリーガのフライブルクでプレー経験もあるMFクォン・チャンフン(水原三星)は、大事なメキシコ戦でベンチスタートだった。OA枠がうまく機能していないことも大敗の要因の一つではないかと感じる。

 それでも今回の結果を真摯に受け止め、次に生かしていかなければならない。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人編集部とオーサーが内容に関して共同で企画し、オーサーが執筆したものです】

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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