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「渋野日向子を押しのけた!」全米女子OP初制覇した”韓国のシンデレラガール”キム・アリムって誰だ?

金明昱スポーツライター
全米女子オープン初出場で初優勝したキム・アリム(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年の全英女子オープンゴルフに続き、渋野日向子のメジャー2冠に注目が集まった全米女子オープン。

 最終日を首位から出た渋野は2バーディー、5ボギーの74で3つ落として、通算1アンダーの4位。優勝したのは韓国の25歳、キム・アリムだった。

 韓国ツアーが主戦場のキムは、海外メジャーは初出場だった。最終日を通算1オーバーからスタートし、上がり3連続を含む6バーディー、2ボギーの67をマーク。渋野との5打差を逆転し、通算3アンダーで初優勝を手にした。

 韓国内でも誰も予想できなかった快挙で、新たな“韓国のシンデレラガール”の誕生に国内メディアは沸いている。

「キム・アリム、日本選手を抑えてドラマのような逆転優勝!」(ノーカットニュース)

「“国内組 長打の女王”キム・アリム、全米女子オープン初出場で初優勝の快挙」(韓国ゴルフダイジェスト)

「“シンデレラ誕生”キム・アリム、初出場の全米女子オープン制覇」(チョンジ日報)

 2013年にプロ入りしたあとは、韓国下部ツアーが主戦場だった。レギュラーツアーに本格参戦したのは2016年からで、2018年と2019年にそれぞれ1勝を手にした。

 今シーズンは未勝利で賞金ランキング21位。国内組の中では実力者ではあるものの、初出場の全米女子オープンで結果を残すのは難しいと思われていた。

 だが、いざ試合が始まると自慢の飛距離でコースを攻略。今季韓国ツアーのドライビングディスタンスは259.5167ヤードで1位。身長175センチの長身から繰り出されるドライバーショットは、米ツアーでも十分に通用した。

 キムは試合後の会見で、「3日目が悔しかった。今日、ティーイングエリアが移動していて、自信のある距離が残ることが多かった。それで絶対にピンを狙っていこうと強い気持ちで挑みました」と語り、自分の土俵でゴルフができたことが勝因だったようだ。

全米女子OP制した韓国選手は10人

 ちなみに全米女子オープンを制した韓国人選手は、キムで10人目。

 これまでパク・セリ(1998年)、キム・ジュヨン(初出場で優勝、2005年)、パク・インビ(2008、2013年)、チ・ウンヒ(2009年)、ユ・ソヨン(2011年)、チェ・ナヨン(2012年)、チョン・インジ(初出場で優勝、2015年)、パク・ソンヒョン(2017年)、イ・ジョンウン6(2019年)が優勝している。

 キムは会見で「私のプレーが誰かの希望になり、力になればと思う」と次に続く後輩たちへの思いも届けることを忘れなかった。

 来季の米ツアー参戦については「慎重に考えたい」と話している。

 それにしても、キムの上がり3ホールの連続バーディーは圧巻だった。優勝争いの重圧がかかるなか、最終日に67をたたき出す強心臓に韓国勢の底力を見た。

 一方、日本勢で優勝を期待された渋野は、惜しくもキムに逆転され、追い上げもむなしく4位に終わった。この試合を糧にさらなる成長を期待したい。

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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