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ヴィッセル神戸GKキム・スンギュが一目置く日本代表GKとは?【インタビュー前編】

金明昱スポーツライター
ヴィッセル神戸でシーズン3年目を迎えている韓国代表GKキム・スンギュ(筆者撮影)

 キム・スンギュがKリーグの蔚山現代からJリーグのヴィッセル神戸に移籍してきたのが2016年。それから3年が経ったが、今やJリーグ屈指のGKへと成長した。

 韓国代表GKとしてロシア・ワールドカップ(W杯)にも出場するなど、豊富な経験がチームにもたらす影響は大きいに違いない。

 そんな彼に日本サッカーのことや韓国代表でのポジション争い、韓国人GKが日本に多い理由などについて聞いた。前編・後編の2回に分けてお届けする。

「チーム一丸となって気を引き締める」

――今季のヴィッセル神戸は現在12位。残り4試合ですがここまでの戦いぶり、チームの状態をどのように見ていますか?

 もっと自分たちのサッカーをすれば上位に行けますし、油断していると下位に落ちる状況にもあります。実際には勝てていた試合でも、負けてしまうこともありました。連敗が続いてしまっているので、とにかく今はチーム一丸となって気を引き締めていこうというところです。

――9月からフアン・マヌエル・リージョ監督に変わりました。どのように受け止めていますか?

 まだリージョ監督の新体制になって間もないので、今はとにかく監督が求めるスタイル、やろうとしているサッカーをチームのみんなが理解しようと練習に取り組んでいます。その中でも結果が大事なので、大変な作業ですが、新たなサッカー観を教えてくれる素晴らしい監督だと感じています。

――今季、FCバルセロナからイニエスタ選手がヴィッセル神戸に移籍してきましたが、チームの戦い方や練習中の雰囲気もガラリと変わったと思います。

 イニエスタ選手が神戸に来ると聞いたときは、私もすごく楽しみでしたし、チームメイトもみんなが期待していました。実際のプレーを見た人たちは分かると思いますが、試合だけでなく、ピッチの外でもすごく模範的な選手。ファンを大事にしますし、あれだけ実績がある選手ですがとても気さくに色んな話をしてくれます。チームにはすごく良い影響を与えてくれていますし、そうした姿勢からすごく学ぶことが多いです。チーム全体に大きな影響を与えてくれているので、相乗効果があると思います。

「常にビルドアップを意識している」

――キム・スンギュ選手はJリーグに来て3年目のシーズンになりますが、来日当初とは違い、日本のサッカーにも慣れたと思います。この3年で自身が成長した部分はどのようなところでしょうか?

 日本に初めて来た時は、日本のサッカーや環境に慣れるまでに少し時間がかかりましたが、今ではもう何も心配することはありませんね。ただ、“慣れた時が一番危ない”とよく言いますが、すべてにおいて油断はしていけない。慣れたからといって緊張感が解けるわけもないので、毎週の試合が簡単なものになることはありません それに毎年、自分の実力をつけて、今よりももっといいプレーを見せなければならないという緊張感も増しています。去年の下半期くらいから、ビルドアップをとても意識するようになりました。これまではGKから攻撃を始めるという意識をほとんど持つことがなかったのですが、今では攻撃の出発点となる意識が高まりましたね。

――1年目と比べて、Jリーグ全体のレベルはどのように変化したと感じますか?

 韓国にいたときにJリーグの試合映像をよく見ていましたが、とてもレベルの高いリーグだと感じていました。私が1年目のときよりも、実力のある外国人選手もたくさん来るようになったと思います。私が日本に来たばかりのころ、上位3チームくらいが強いチームかなという印象があったのですが、今はどこと対戦してもすごく難しい試合が続くので、全体的なレベルが上がっていると思います。

――ヴィッセル神戸のサポーターはどんな印象ですか?

 試合するたびにたくさんのサポーターが応援に駆けつけてくれるので、とても心強いです。とにかく、いつも熱く応援してくれるので、勝利して気持ちよく帰ってもらいたいといつも思っています。Jリーグはどこにいっても地元のクラブを応援する文化が根付いているので、それには感心させられます。

「日本に来て一番悔しい試合は去年の天皇杯」

――今までに試合した中で、特に印象に残っている試合があれば教えてください。

 印象に残っているというよりかは、悔しい試合はありますね。去年の天皇杯の準決勝でセレッソ大阪に3-1で負けた試合です。良いコンディションを保っていましたし、延長戦までもつれ込みましたが、最後に集中力が切れて負けてしまったのはすごく悔しいです。

――常に試合中に心がけていることはありますか?

 ディフェンダーとの連携は大事にしています。プレー中に指示を出したりするのも、短い日本語での会話なので、意思疎通に問題はありません。ペナルティエリアの外で壁を作るときも、守る選手がどのポジションに立つべきかをしっかり指示したり、とにかく声を出しながら集中を切らさないように、ミスが起こらないように神経をとがらせています。

――特に嫌なFWやこの選手はうまいなと思う選手はいますか?

 優れたFWはたくさんいるので特定するのは難しいですが、同じ韓国人選手の(ファン・)ウィジョはやはり嫌な相手ですね(笑)。Jリーグに来てまだ2年目ですが、日本のサッカーへの適応も早く、ゴールをかぎつける能力も高い。FWとしての資質を備えた選手だと思います。韓国代表でも一緒なので、よく知っている選手ということもありますが ガンバ大阪が相手のときは、ゴール前でどこからでも積極的にシュートをうってくるので、常に警戒しています。

――でもピッチを出れば、よく食事に行くと聞きました。

 ええ。週に2~3回は一緒に韓国料理を食べに行くのですが、私とガンバ大阪のオ・ジェソク選手がウィジョにおごっています(笑)。

「G大阪のGK東口順昭選手の能力は高い」

――同じGKでうまいなと思う選手は誰でしょうか?

 すぐに思い浮かぶのは、ガンバ大阪GKの東口(順昭)選手です。体格も良く、セービングの能力が高く、守備範囲もすごく広い。空中戦や活動量も多く、果敢に前に出ます。日本を代表するGKなのは間違いありません。

――憧れていた選手はいますか?

 私が韓国のKリーグでよく見ていたGKは、元韓国代表のイ・ウンジェさん(2012年に引退、現在は水原三星ブルーウィングスGKコーチ)です。2002年W杯で韓国がベスト4に入ったときのGKで、私はまだ小学生でした。自分もいつかW杯に出るんだと、すごく憧れましたね。海外の選手では、元イタリア代表GKの(ジャンルイジ・)ブッフォン選手です。スーパーセーブする映像をよく見て興奮していましたよ。

――イ・ウンジェさんから何かアドバイスをもらったり、接点はあったのでしょうか?

 私が2014年のアジア大会に韓国代表として出場したのですが、そのときのキーパーコーチでした。大会期間にいろんなことを話してくれました。技術的なこともそうですが、キーパーとして必要なメンタルについてたくさん学びました。試合で自信を持ってピッチに立てと、最大のパフォーマンスを発揮できるように、精神面での準備の大切さを教えてくれたことがとても記憶に残っています。

(後編につづく)

スポーツライター

1977年7月27日生。大阪府出身の在日コリアン3世。朝鮮新報記者時代に社会、スポーツ、平壌での取材など幅広い分野で執筆。その後、編プロなどを経てフリーに。サッカー北朝鮮代表が2010年南アフリカW杯出場を決めたあと、代表チームと関係者を日本のメディアとして初めて平壌で取材することに成功し『Number』に寄稿。11年からは女子プロゴルフトーナメントの取材も開始し、日韓の女子プロと親交を深める。現在はJリーグ、ACL、代表戦と女子ゴルフを中心に週刊誌、専門誌、スポーツ専門サイトなど多媒体に執筆中。

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