Yahoo!ニュース

圧巻のアユミと迎え討つスズ子の歌合戦。羽鳥の複雑な表情が「ブギウギ」最終週の鍵を握る

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 水城アユミ(吉柳咲良)圧巻のパフォーマンス 写真提供:NHK

「オールスター男女歌合戦」

OSK のトップスター楊琳 が出演

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」(NHK)、第121回は「オールスター男女歌合戦」で水城アユミ(吉柳咲良)が「ラッパと娘」を、スズ子(趣里)が「ヘイヘイブギ−」を歌い、サブタイトルどおり「ズキズキするわ」な展開になった。

歌合戦の参加者のひとりとして、橘役の翼和希の所属するOSK日本歌劇団 のトップスター楊琳 がスーツ姿の男装の麗人風で出演しているのもファンにはサプライズであっただろう。

「ヘイヘイブギー」で大トリを飾ったスズ子(趣里) 写真提供:NHK
「ヘイヘイブギー」で大トリを飾ったスズ子(趣里) 写真提供:NHK

水城アユミを演じる吉柳咲良は「ラッパと娘」を10回以上練習して臨んだと、制作統括の福岡利武チーフプロデューサーは語る。

「『ラッパと娘』は難しい歌ですし、解釈次第で、歌い方もまるで変わってきます。熱くもクールにも歌える歌なんです。今回は水城アユミというキャラクターを生かして、若さはじけたエネルギッシュに行こうという方針で歌っていただきました」

「ピーターパン」「デスノート THE MUSICAL」「ミュージカルロミオ&ジュリエット」など数多くのミュージカルに出演してきた吉柳咲良の「ラッパと娘」は躍動感があった。

「スズ子にとって思い出深い『ラッパと娘』を歌いたいとアユミが考えたのは、幼いころからスズ子の歌を聞いて育ち、おそらく股野(森永悠希)からスズ子はお母さん(蒼井優)と縁のあった人物なのだと聞かされていたでしょうから、思い入れもひとしおだったと思うんです。そのアユミに歌いたいと言われたら、スズ子もかなり葛藤すると思うんですよね」と福岡チーフプロデューサー。

スズ子は複雑な思いと闘いながら、ベテランの力を見せつける。

歌は「ヘイヘイブギー」だ。

笠置シヅ子も『ヘイヘイブギー』を歌い、それが紅白歌合戦の最後の出演に

「『第7回NHK 紅白歌合戦』ではスズ子のモデルの笠置さんも『ヘイヘイブギー』を歌い、それが紅白歌合戦の最後の出演になりました。『ブギウギ』では登場歌手や順番を自由に組みたかったので、あくまでフィクションの中での歌合戦として『オールスター男女歌合戦』にしましたが、僕もスタッフたちも『ヘイヘイブギー』が大好きなので、トリに歌う曲は史実のままにしました。本当に楽しくハッピーになる歌で、時代を超えて、令和のいま聞いても新しく思えますよね。第21週では、愛子に歌いかけるというイレギュラーな形で出したので、ここぞとばかりフルでスズ子に歌ってもらいました。趣里さんも、自ずと気合が入っていました。実はこれまでほど激しく踊ってはないんです。踊りでお客さんを食いつかせるのではなく、『ヘイヘイ』という掛け声で観客とコールアンドレスポンスを行い、楽しいステージを作っていくという新しい見せ方にシフトしてきたため、趣里さんもすごく緊張されていましたし、集中して臨んでいました」

これまでになく、スズ子と観客の掛け合いを重視した

「スタッフも僕も『ヘイヘイ』と返していました。歌で、見ている人を楽しくすることが、このパフォーマンスによって完成した気がしています」

第21週で、愛子の歌として子守唄のようにして歌った「ヘイヘイブギ−」を、スズ子が最大の勝負曲として歌い、会場を沸かせる。そのなかに愛子もいて、これまでにない笑顔を見せていた。

第120回でスズ子は、愛子のために歌うと言っていた。

たったひとりの誰かのために心をこめたものが、たくさんの人に響くのである。

スズ子の海のように大きな愛にのまれたようなアユミの表情と、テレビを自宅から見つめている羽鳥(草彅剛)の表情が印象的だった。

スズ子と羽鳥、ふたりの表情は「第26週に話が繋がっていきます」と福岡チーフプロデューサーは最終週に期待を持たせる。

とりわけ、羽鳥が、これまでと随分と変化している(声のトーンも表情も)と福岡CPは強調した。

「台本では『善一はどこか泰然自若とした雰囲気で見ている』とあり、さらに『ヘイヘイブギー』を歌っているところでは『麻里と子供たちは手を叩いて聞いている。善一ははしゃぐでもなく微笑みを浮かべて目を閉じて聞いている』と書いてあり、結構意味深なト書きです。足立さんのト書きは、ここは外せないというところはとても細かく書かれております(*ト書きについての足立さんの考えは「朝ドラ作家・足立紳 登場人物のモデルは身近な人たち #春よ来い、マジで来い」参照ください)。

第25週と第26週の草彅さんの表情がすごく良くて。第25週では歌を『軽く思ってもらっちゃ困るんだよ』とスズ子に突きつけるところにもちょっとドキッとするほど感覚が先鋭化していて、素晴らしいなあと感じます」

第26週――最終週の羽鳥はどうなる? そのときスズ子は? 終わってほしくないという名残惜しさと共に、最後までズキズキワクワクさせてほしいという期待が止まらない。

連続テレビ小説「ブギウギ」
総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間の振り返り
NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分
【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>
【音楽】服部隆之
【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里
【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)
【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか
【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

木俣冬の最近の記事