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トラブルメーカー小夜(富田望生)のキャラ設計はこれでいいのか #ブギウギ #朝ドラ

木俣冬フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人
「ブギウギ」より 中央が小夜(富田望生) 写真提供:NHK

当初の想定以上に、キャラが動きはじめた。

新キャラも登場

朝ドラこと連続テレビ小説「ブギウギ」。第11週は、スズ子(趣里)の恋のはじまり。スズ子を熱烈に追いかける村山愛助(水上恒司)が登場し、お互い戸惑いながらもみるみるいい雰囲気に……。

スズ子も愛助もどちらも不器用で、そのやりとりが微笑ましい。とはいえ、かなり急速にいい感じになって、くすぐったくなるところを、小夜(富田望生)が絶妙なツッコミで邪魔してきて、それがおもしろい。

小夜が初めて登場したときは、あまりに空気を読まないため、若干イラッとする存在で、第11週の序盤も、財布を足袋のなかに入れたまま忘れて、愛助を泥棒呼ばわりし、やっぱり少しイラッとさせた。が、今週の彼女は「この世に偶然はねえ」(第52回)、「育ちが悪いから疑い深いんだ」(第53回)、「男は色と欲の生きもんや」「どっかおかしくねーとこんな手紙書けねえ」(第54回)、「夢を語る男は信用できねえ」「たいていの男がその場限り」「男は演技ができる」(第55回)等々と、毎日のように小気味いい発言が続いた。彼女はこのために存在していたのではないのかと思うほど。

小夜のキャラクター造形について、「ブギウギ」制作統括の福岡利武チーフプロデューサー(以下福岡CP)に聞いた。

「今週は足立紳さんの筆がいつも以上にノッていた気がします。小夜は幼い頃、奉公に出され苦労しましたが、スズ子の歌を聞いて、奉公先を飛び出し、弟子入りを志願します。ややトラブルメーカー的なところもありますが、スズ子は決して、そういう人を見捨てないということを表現するために、生まれてきたのが小夜というキャラクターです。長いこと会っていないお父さんが恋しいと感じていることは、梅吉(柳葉敏郎)という父を際立たせたいと意識しました。そこまでは意図した役割でしたが、当初の想定以上に、キャラが動きはじめた。愛助とスズ子の進展を阻もうとするのは、自然にそうなっていったものだと思います。不思議なくらいキャラがかみあった気がします」

足立紳さんの脚本は、登場人物のたわいない言動が愛らしい。小夜のみならず、第11週では、アホのおっちゃん(岡部たかし)とアサ(楠見薫)が結婚していたという超展開もあった。

「足立さんとしては、基本的には、いつまでも変わらない人々を描きたくて、でもそんななかで変わっていくものもあることを、おっちゃんとアサとの結婚という形で描き出したんですね。さすがに、なんの前フリもないあの展開にはみんな『なんで〜』と驚いていましたが(笑)。だからこそ笑えて、楽しく演じていただけました」

「ブギウギ」より はな湯の常連客たち 写真提供:NHK
「ブギウギ」より はな湯の常連客たち 写真提供:NHK

出会って仲良くなっても、別れがあるのが『ブギウギ』らしい

魅力的な脇役というと、大坂にははな湯の常連たちがいて、東京には、おでん屋の伝蔵がいる。朝ドラ初出演の坂田聡さんが下町の江戸っ子的なニュアンスを感じさせながら演じていた。

「伝蔵もまた、スズ子の、誰とでも別け隔てなく楽しく会話する、共感力の高い人柄を感じさせたくて設定したキャラクターですが、坂田さんが、台本のニュアンスを汲み取って、ひじょうに細やかなリアクションをとってくれて、おかげでおでん屋のシーンがとてもいいものになりました。屋台がいい空間になったのは、坂田さんの芝居の力です。いつも現場にとても早く入っていて、僕も屋台に座ってよく話をしていました。伝蔵も戦争で屋台を閉めざるを得なくなって……。さみしいですが、出会って仲良くなっても、別れがあるのが『ブギウギ』らしい気がします」

「ブギウギ」より 伝蔵(坂田聡) 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 伝蔵(坂田聡) 写真提供:NHK

スズ子を取り巻く人々が、変わったり、変わらなかったり。これからもいろいろな人とスズ子は出会ったり別れたりしていく。第11週、初登場の村山興業の坂口を演じるメッセンジャーの黒田有さんも、朝ドラ初登場。

「コテコテのキャラクターで、一見怖く見えますが、しっかり奥行きの深い人物になっておりますので、これからの坂口を楽しんでいただければと思います」

「ブギウギ」より 新登場の坂口(黒田有) 写真提供:NHK
「ブギウギ」より 新登場の坂口(黒田有) 写真提供:NHK

連続テレビ小説ブギウギ

総合【毎週月曜~土曜】午前8時~8時15分 *土曜は一週間を振り返ります

NHKBS【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分

NHKBSプレミアム4K【毎週月曜~金曜】午前7時30分~7時45分

【作】足立紳 櫻井剛 <オリジナル作品>

【音楽】服部隆之

【主題歌】「ハッピー☆ブギ」中納良恵 さかいゆう 趣里

【語り】高瀬耕造(NHK大阪放送局アナウンサー)

【出演】趣里 水上恒司 / 草彅剛  菊地凛子 小雪 生瀬勝久 水川あさみ 柳葉敏郎 ほか

【概要】大阪の下町の小さな銭湯の看板娘・福来スズ子(趣里)は歌や踊りが大好きで、道頓堀に新しくできた歌劇団に入団し活躍後、上京。そこで、人気作曲家・羽鳥善一(草彅剛)と出会い、歌手の道を歩みだす。“ブギの女王”と呼ばれた人気歌手・笠置シヅ子をモデルにした、大スター歌手への階段を駆け上がる物語。

フリーライター/インタビュアー/ノベライズ職人

角川書店(現KADOKAWA)で書籍編集、TBSドラマのウェブディレクター、映画や演劇のパンフレット編集などの経験を生かし、ドラマ、映画、演劇、アニメ、漫画など文化、芸術、娯楽に関する原稿、ノベライズなどを手がける。日本ペンクラブ会員。 著書『ネットと朝ドラ』『みんなの朝ドラ』『ケイゾク、SPEC、カイドク』『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』、ノベライズ『連続テレビ小説 なつぞら』『小説嵐電』『ちょっと思い出しただけ』『大河ドラマ どうする家康』ほか、『堤幸彦  堤っ』『庵野秀明のフタリシバイ』『蜷川幸雄 身体的物語論』の企画構成、『宮村優子 アスカライソジ」構成などがある

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