大河ドラマ「青天を衝け」裏話:眼帯の志士・河野顕三は史実でも眼が悪かったのか 俳優・福山翔大に聞く

大河ドラマ「青天を衝け」より 写真提供:NHK

大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合 日曜よる8時〜)は尊皇攘夷の志士たちが幕府に反旗を翻し、舞台は血洗島から京都へと場所を変える。近代日本経済の父と言われる主人公・渋沢栄一(吉沢亮)も攘夷を掲げて活動する際、彼の背中を押したのが同志・河野顕三(福山翔大)だった。彼は第10回、坂下門外の変にて志半ばで亡くなったが、その後も、尾高長七郎(満島真之介)の心に強く残り、第13回でも尾高は河野の墓に参り、彼への思いの強さが描かれた。眼帯が印象的だった河野が実際、どういう人物だったのか。資料が少ないなか演じた福山翔大にインタビュー。歴史上の人物を演じる醍醐味を浮き彫りにする。

台本には「夷狄の妖術で目を犯されたと嘆いておった」とあった。

――河野顕三は「青天を衝け」で眼に包帯をしています。実際、眼帯をしていたのですか?

「眼帯をしていたか詳細を僕はわからないのですが、一時期、眼病を患った記録が残っているそうです。大森美香さんの書かれた脚本のト書きには”眼帯をした河野顕三”とあり、真田範之助のセリフで”夷狄の妖術で目を犯されたと嘆いておった”と説明がされていたんです。大森さんが資料を調べたうえで河野のキャラクターを作り上げてくれたのだと思います。そこから僕は”妖術”と思い込むほど、河野は外国人に憎しみをもち、尊皇攘夷の思想にのめり込んでいる人物と考えました」

――眼帯していることでより印象に残りますし、10話の坂下門外の変のときにはらりととれるところがまた印象的でした。

「とれるタイミングは台本だと違っていて、坂下門外の変の前、大橋訥庵先生に『ようやくこの生命を捨てるときが来た』というときに眼帯をとって、決戦では最初から両目で戦うように書いてあったのですが、ぎりぎりまでつけていたほうが河野の捨て身の思い、志士の儚さみたいなものが出やすいんじゃないかと演出家さんのアイデアで、とれるタイミングが戦っている最中に変わりました」

――包帯ひとつにもドラマがありますね。河野という人物を知っていましたか。

「この役をもらったときは河野謙三さんのことを知りませんでした。残っている資料も少ない人物なんです。演出部のスタッフの方がまとめてくださった河野さんの資料を読んで想像を膨らませていきました。また、満島真之介さん演じる尾高長七郎がみつけて本にした河野さんの稿本『春雲楼遺構』のあとがき(満島真之介の公式ツイッターにアップされている)に書いてあったことが参考になりました。長七郎と河野は親友だったことは事実でそのあとがきに、どれだけ長七郎が河野の考え方に共感していたかわかります。長七郎は河野が亡くなったあとお墓参りにいって、残っていた稿本を見つけて、印刷して本にしたんです。あとがきには栄一にも河野がいかにすばらしい人物だったか世の中に伝えるために出版を手伝ってもらったと書いてあります。このように亡くなったあとでも志士たちに影響を与える人物だったほどの河野はとにかく志が高くて、16歳にして、ペリーが黒船で浦賀に来航したときもこのままでは日本が危ないと憂国の思いからひとりで山の上までのぼってペリーの動向を探って全部書物に記していた。そういう行動力と国を思う気持ちみたいなものから、河野謙三を情熱ある人物として作っていきました。資料が少ないことは、演じるうえでの自由度は高かったと思います」

『青天を衝け」より。栄一や長九郎に影響を与えた河野顕三  写真提供:NHK
『青天を衝け」より。栄一や長九郎に影響を与えた河野顕三  写真提供:NHK

台本、資料、共演者でつくりあげた河野像

――『春雲楼遺構』のあとがきによると、栄一も出版に協力したんですね。ドラマでは最初反発していたけれど、親友のような気持ちになりましたね。

「長七郎と栄一と河野の友情を描いた場面はドラマではほとんど出てきませんが、満島さんと吉沢さんと話して、短い時間でいかに彼らの団結力を見せられるように現場で探っていました」

――吉沢亮さんと満島真之介さんの印象を教えてください。

「吉沢さんは多くを語らず、つねに冷静沈着に現場にいらして頼もしく、それでいて主役としていろんなものを抱えた情熱も感じました。満島さんははじめて会ったときから、長七郎にとっていかに河野が大切な存在かと熱く語られ、共に作り上げようじゃないかと言ってくださって。台本を出番のある10話までしかもらっていない僕に、今後、長七郎がどうなっていくか教えてくれたんですよ。それを聞くと、河野は序盤のトリガーのひとつでもある重要な存在であることがわかりました。すごいですよね、満島さんのその役を自分のものにするエネルギーは。坂下門外の変のときも『どんなふうに死んだ?』と聞かれたので、『「安藤!安藤!」って叫びました』と言ったら、『俺も叫んだんだ。それがリンクするといいよね』と満島さんが言っていて、そうしたら、編集でリンクしていたんですよ」

――その場にスタッフはいなかったのですか。

「スタッフはその話を聞いていなかったと思います。みんなの気が通じたんですね。台本があって、資料があって、満島さんがいて。いろんなものから“河野顕三”ができあがりました」

――大河ドラマではいつも資料をまとめてもらえるのですか。

「そうですね。前回『おんな城主 直虎』に出たときもいただきました」

――資料に試験勉強のように蛍光ペンで線を引いたのは福山さん? 重要な年号部分や「天性の憂国者」「三島三郎と名を変えて」などいうところに蛍光ペンを引いていますね。

「そうです。線を引いたところを見られるのは照れくさいですね。なんかへんな汗出てきた(笑)」

――学校の授業ではここまで習わないですよねたぶん。

「そうなんですよ。だから、毎回勉強になります。とりわけ、幕末の激動の時代はいろんな思惑が絡み合っていて把握するのが難しいですね。ただ、それぞれ考えの方向性が違うとはいえ、国のためを思っていることは共通で、考えの角度によっては敵に見えたり味方に見えたりして、ほんとうに面白い時代だなと、こうやって試験勉強(笑)して思いました」

――歴史の勉強、好きですか。

「嫌いではなかったです」

――どの時代に興味がありますか。

「戦国時代の信長はドラマでも映画でも多く描かれていて、かっこいいカリスマのイメージがあって好きでした。本能寺の変とか信長と森蘭丸の関係には興味がありましたけれど中学のときの話ですし、詳しく語れることはとくににないです(笑)」

――大河の現場はほかの撮影とは違います?

「特別な空間な気がします。作り込まれた世界観があって、セットに立つだけでテンションが上がります」

――剣道が特技だそうですが、大河出演に役立ちましたか。

「剣道1段です。あと空手もやっていました。役に立っています。空手は小学校6年まで剣道は小4から中学卒業までやっていました。殺陣をやるにあたって軸になるのは下半身と思っていて。足さばきの連動によって動くことができるので、剣道と空手の経験はいまの自分を助けてくれています」

――サッカーや野球ではなくなぜ武道を選んだのでしょうか。

「父が空手と柔道の黒帯だったので空手はなかば強制的にやらされたようなもので(笑)。剣道は自分から選びました。地元の親友が誘ってくれたんです。親友に感謝ですね」

――親友はドラマを見てくれていますか。

「『青天を衝け』を見て、電話をくれました。でも彼はいつもめちゃくちゃ辛口なんで、あれでは人を斬ることができないってダメ出しされました(笑)。親友を認めさせたい気持ちが僕の支えになっています」

●取材を終えて

「青天を衝け」第10回に登場した河野顕三。坂下門外の変で老中・安藤を襲うも志を遂げることはできなかった。ドラマでは眼に包帯をしている姿が印象的で、実際河野が眼帯をした碧眼の志士だったのかと知りたくてネット検索したが情報がない。彼の肖像が1枚出てきたが包帯をしていない。雑誌に載った福山翔大の記事を読んだが、目ヂカラの入れ方に気を使った話しか語っていなくて、なぜ包帯をしているのかがわからない。マネージャーさんに問い合わせてみると本人に直接聞いてみてくださいとインタビューが実現。映画「花束みたいな恋をした」や連ドラ「恋はDeep に」にも出演している期待の若手俳優・福山さんの演じることへの意欲と、ドラマ制作チームが短い場面にも様々な思いをこめていることがわかり、胸が熱くなった。

現在「恋はDeepに」に出演している福山翔大さん  
現在「恋はDeepに」に出演している福山翔大さん  

Shodai Fukuyama

1994年11月17日、福岡県生まれ。2013年、ドラマ「みんな!エスパーだよ」、14年、映画「クローズEXPLODE」に出演。以降、ドラマ、映画で俳優活動を行う。近作に映画「花束みたいな恋をした」「ブレイブ-群青戦記-」「砕け散るところを見せてあげる」、大河ドラマ「青天を衝け」、「恋はDeepに」などがある。