破壊的な問題作 野田秀樹の新作英語劇『One Green Bottle』ロンドン初日に十分な手応え

One Green Bottle photo by Helen Maybanks

黒木華の出世作ともなった名作が英語版に

東京芸術劇場芸術監督の野田秀樹は日本を代表する劇作家、演出家、俳優。海外でも活躍する彼が、約10年ぶりに海外で新作英語劇『One Green Bottle』を発表。2017年の東京、ソウル公演を経て、4月30日、ロンドンのソーホー劇場での初日は大盛況だった。

『One Green Bottle』は、2010年秋、NODAMAP番外公演として東京芸術劇場で初演した『表に出ろいっ!』を英語劇にしたもの。野田と、彼が最も信頼を寄せる英国人俳優キャサリン・ハンターとグリン・プリチャードの3人が共演している。

10年の『表に出ろいっ!』のときは、十八代・中村勘三郎(1955年~2012年)と野田秀樹と、W キャスト黒木華と太田緑ロランスの出演で上演され、当時まだ無名の新人だった黒木華の出世作ともなった。以降、彼女は映像でも引っ張りだことなっている。

壊れていく家族の物語

物語はシンプル。父、母、娘の3人は、ある夜、それぞれ絶対に外出しなくてはならない事情を抱えながら、出産間近の飼い犬のために、誰かが家に残らなくてはならず、あの手この手を使って、家を出ようと試みる。自分の「信じるもの」のために、ほかのふたりをあざむく行為によって、次第に、家族関係が悪化していく。

日本語版のときは、“傷つけあう”側面が強かったが、英語版では“破壊する”くらいの勢いになったという衝撃作で、最初は家族のドタバタ喜劇かと思って、あははと笑って見ていると、いつの間にか思いがけないところへと転がっていく。

演劇の本場・ロンドンのソーホー劇場の客席は、後半の息をのむ展開に水を打ったように静まりかえり、幕が下りるや否や割れんばかりの大きな拍手や感嘆の声が沸き上がったという。

目の肥えた観客の反応も上々

ソーホー劇場は、わずか150席の小さな劇場でありながら、常に挑戦的な作品を上演し、感度の高い若者を中心に人気を誇る場。野田はかつてここで『THE BEE』『THE DIVER』も上演し、歓迎されてきた。

野田は、初日を迎えてこのように述べている。

「今日の初日は、舞台に出た瞬間から観客の反応がとても良かった。イギリスでプレスナイトは、目の肥えたプロが観にくる日なので、観客の反応が固いことがあるんですが、ロンドンで上演してきた今までの作品のオープニングの時と比べても、今日の観客の反応には十分な手応えを感じることができました。まだ、(劇評がでていないので)これから何が起こるかわからないけれど、自分の中では、いい芝居だった。と思います。いい始まりになったと思います」

男女逆転キャスティングの妙

戯曲の面白さももちろんのこと、俳優の身体表現もみどころで、今回は、女性のキャサリンが父役、男性のグリンが娘役、男性の野田が母役と、3人共々、自身の性別と異なる役を鮮やかに演じているところや、

英国を代表する名優・キャサリンが、日本の喜劇ふうのハゲヅラをかぶって日本の親父を演じていることが、国籍や性別や年齢などの枠を超える可能性を広げてくれる。

ほかに、英語台本の共作者に、英国アカデミー賞にノミネートされた映画『Black Pond』、テレビドラマ『Flowers』で一躍脚光を浴びた日英ハーフの脚本家ウィル・シャープ、歌舞伎囃子方田中流家元の十三代目田中傳左衛門が鼓の生演奏で参加している。

ちなみにタイトルの『One Green Bottle』は、10個のボトルが次第に減って、最後にはNo Green Bottleになるという英国の童謡(マザーグースの『Ten Little Indians』みたいなもの?)からインスパイアされたものだとか。そういうちょっとゾクリとする舞台だ。

公演は5月19日までソーホー劇場で、6月8、9日はルーマニア国立ラドゥスタンカ劇場でシビウ国際演劇祭2018に参加。

『One Green Bottle』

作・演出・出演野田秀樹

英語翻案ウィル・シャープ

出演キャサリン・ハンター/グリン・プリチャード

演奏田中傳左衛門

主催:東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)/ソーホー劇場

企画・制作協力:NODA・MAP

オフィシャル・エアライン:ANA