土屋太鳳が「宇宙(ユニヴァース)」と讃える才能が舞う『DUNAS-ドゥナス-』日本初演が幕を開けた

オーチャードホール『DUNAS-ドゥナス-』(c)H. Kawashima

撮影 H. Kawashima
撮影 H. Kawashima

フラメンコとコンテンポラリーダンスの融合

フラメンコとコンテンポラリーダンスの融合。これはとても興味深いものだった。

森山未來、土屋太鳳らが手塚治虫の漫画の世界を演じた『プルートゥ PLUTO』が、欧州三都市でも上演され、好評を博したのは、今年の2月のこと。

その作品を、演出、振り付けしたシディ・ラルビ・シェルカウイが、現代フラメンコ界を代表するマリア・パヘスと踊るということで注目された公演が、『DUNAS-ドゥナス-』。2009年にシンガポールダンスフェスティバルで初演されて以来、世界各国で上演され、今回が日本初演となる。

「DUNAS」とは、スペイン語で“砂丘”を意味する。

コンテンポラリーダンスのラルビと、フラメンコのマリアが、砂丘をモチーフにして、お互いの世界を尊重しあいながら、新たな表現を生み出していく『DUNAS-ドゥナス-』。

大きな布を使った美術や、砂で描いた絵なども用いながら、ふたりが踊る。

互いの腕を絡み合わせながら、近づき、離れ、形を変え、やがて、ふたつの命が、ひとつに溶け合っていく様を幽玄かつダイナミックに見せた。

心を溶かし、無限に広がる

『プルートゥ PLUTO』で、手塚治虫の鉄腕アトムの妹ウランを演じた土屋太鳳は、演出を受けたラルビのことを、「心を溶かす人」「やさしく包んでくださる」「既成概念を、殻を破るんじゃなくて、溶かしてくれる方と感じた」「ユニヴァースのほうの宇宙のよう」と語っている。

『プルートゥ PLUTO』も、人間とロボットという異なる存在の共生をテーマにしていた。ラルビがなぜ、常に、異なる価値観の共生、融和を

追求しているかといえば、その出自にあって、アラブ系の父親とヨーロッパ系の母親との間に生まれ、アラブとヨーロッパという異なる価値観が理解し合えることを常に望んで生きてきたのだ。

今回も、マリアのフラメンコを素敵に魅力的に見せながらも、それをさらに新しい世界へと誘っていくような印象がある。

直径1メートルの限られたスペースで表現することで、圧倒的にくっきりした輪郭を感じさせるフラメンコが、広いスペースで自由に躍動するコンテンポラリーダンスと掛合わさることで、まるで砂丘の砂面のように、輪郭が(いい意味で)曖昧になって、無限に広がっていく不思議な感覚がした。

撮影 H. Kawashima
撮影 H. Kawashima

言葉のないコミュニケーション

マリアとラルビが創作をするにあたって、会話もたくさんしているであろうが、出来上がったダンスには言葉がない。

あるのは、ラテン語、アラビア語、スペイン語などが混じった歌だけだ(音楽も、現代音楽とフラメンコ、クラシック音楽と中世の音楽を合わせ、さらにアラブ語の長詩であるモアシャッハを取り入れ、調和を作り上げた)。

近ごろ、世の中は、言葉に溢れ、でも、その言葉は、ネットにおける炎上のような形を誘発していく。

本来、言葉は立場の違う者同士のコミュニケーション手段のはずにもかかわらず、自己の保身と主張と、他者への批判ばかりに使われる言葉の渦に疲れたとき、こういう、言葉のない、すべてを内包した世界に身を置くとほっとする。

言葉のない世界は、豊かで、優しく、美しい。

撮影 H. Kawashima
撮影 H. Kawashima

(C)H. Kawashima

マリア・パヘス&シディ・ラルビ・シェルカウイ『DUNAS-ドゥナス-』

演出・振付:マリア・パヘス、シディ・ラルビ・シェルカウイ

出演:マリア・パヘス、シディ・ラルビ・シェルカウイ ほか

2018年3月29日(木)~31日(土)

東京  Bunkamura オーチャードホール

2018年4月5日(木)

愛知  青年文化センター アートピアホール

2018年4月6日(金)

大阪  豊中市立文化芸術センター 大ホール