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元「MLBイチの人気者」、「幻の首位打者」が、侍ジャパンに立ちはだかる!? 五輪野球、明日開幕!

菊田康彦フリーランスライター
東京五輪のアメリカ大陸予選でホームランを打ち、ナインに迎えられるバティースタ(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 13年ぶりにオリンピック競技として復活した野球のオープニングラウンドが明日、7月28日に幕を開ける。初日は1試合だけが予定されており、6月に発表されたWBSC(世界野球ソフトボール連盟)野球世界ランキング1位の日本が、同7位のドミニカ共和国を福島あづま球場で迎え撃つ。

メジャーの外国人勢では”最大勢力”のドミニカだが…

 国際試合の成績をポイント化して算出されたランキングでは7位のドミニカだが、メジャーリーグにおける外国人勢としては“最大勢力”になっている。今シーズンの開幕時点で、メジャー出場登録されていた選手および故障者リストや制限リストなどに登録されていた計906人のうち、28.3%にあたる256人が米国外の生まれと発表されていて、その中でドミニカ生まれは実に98人。2位のベネズエラ(64人)、3位のキューバ(19人)に大差をつけている。

 ただし、そうした「メジャーリーガー」は、今回の五輪出場選手には入っていない。MLBは各球団26人の出場登録(アクティブ・ロスター)選手を含め、同40人のメジャー登録(メジャーリーグ・ロスター)選手の出場を認めていないからだ。

 つまりドミニカの五輪出場登録選手24人も、マイナーリーガーや元メジャーリーガーで占められているのだが、その中にはとびっきりのビッグネームがいる。それがメジャー歴15年で通算344本塁打のホセ・バティースタ(40歳)だ。

11年の球宴ファン投票で当時の史上最多票を集めた“人気者”

 バティースタは23歳でメジャーデビューしてからわずか2年で4球団を渡り歩き、25歳でようやくメジャーに定着するようになっても、内外野を守れるユーティリティーに過ぎなかった。それが29歳で開幕を迎えた2010年、豪快に引っ張るバッティングでアーチを連発し、それまでのキャリアハイ(16本)をはるかに上回る54本塁打で初のホームラン王を獲得。監督推薦で初のオールスター出場を果たし、シルバースラッガー賞にも輝いた。

 そのシンデレラのような変貌ぶりにファンは熱狂した。翌2011年のオールスターでは、両リーグ最多の745万4753票を集めて堂々のファン投票選出。これは1994年にケン・グリフィー・ジュニア(マリナーズ)が集めた607万9688票を上回るもので、当時の歴代最多記録として話題になった(現在の記録は2015年ジョシュ・ドナルドソン=ブルージェイズの1409万188票)。

 2015年には40本塁打、114打点で3度目のシルバースラッガー賞を受賞するなど、バティースタは2017年まで8年連続で20本以上のホームランをマーク。2008年の途中から在籍したトロント・ブルージェイズで放った288本塁打は、球団歴代2位の記録となった。だが、そのブルージェイズを離れて3球団でプレーした2018年は、計122試合の出場で13本塁打に終わると、再びメジャーの球団から声がかかることはなかった。

 バティースタが表舞台に帰ってきたのは、今年5月から6月にかけて行われた東京五輪のアメリカ大陸予選。ドミニカ共和国代表の三番・一塁で出場したスーパーラウンドのベネズエラ戦では、2ラン本塁打を含む3安打、3打点と存在感を大いに発揮した。続いて行われた世界最終予選には出場しなかったものの、ドミニカが五輪出場権を手にしたことで、自身にとって初のオリンピック出場が決まった。

カブレラはジャイアンツ時代に異例の首位打者”辞退”

 そのドミニカ共和国代表選手でもう1人の“目玉”といえるのが、外野手のメルキー・カブレラ(36歳)である。ニューヨーク・ヤンキースでデビューして2年目の2006年、プレー中に左手首を骨折して離脱した松井秀喜に代わり、レギュラーに定着。その後は正中堅手として、攻守にハッスルプレーを見せたのを覚えているファンも多いだろう。

 打ってはスイッチヒッターとして、カンザスシティ・ロイヤルズに移籍した2011年に初の打率3割をマーク。さらにサンフランシスコ・ジャイアンツにトレードされた2012年は、ファン投票選出で初めて出場したオールスターで2ラン本塁打を含む2安打を放ち、MVPに選ばれた。

 ところがこの年、8月にドーピング検査で陽性反応を示し、50試合の出場停止処分が決定。その時点での打率はナ・リーグトップの.346で、規定打席には「1」足りなかったものの、シーズン終了時点で例外規定により首位打者になっていたはずだった。しかし、カブレラ本人の要望もあって例外規定が適用されないことになり、首位打者は“幻”となった。

 2013年からはブルージェイズでバティースタと共にプレーし、さらに4球団を渡り歩いて昨年はニューヨーク・メッツとマイナー契約を結んだものの、7月に解雇。オフには母国ドミニカのウインターリーグに出場し、ラテンアメリカ王者を決めるカリビアン・シリーズでは打率.333、5打点の成績を残して、ベストナインに相当する「オールスター・チーム」にも選ばれた。

「前回対戦」では日本に0対17でコールド負け

 そのカブレラは、メキシコで行われた世界最終予選ではベネズエラとの決勝戦で2ランホームランを打つなど、ドミニカの五輪出場権獲得に貢献。これまで国際舞台とは縁がなく、オリンピック出場はもちろんこれが初となる。

 ドミニカ共和国は、ほかにも2017年までマイアミ・マーリンズなど7球団でプレーし、昨年はワシントン・ナショナルズで3年ぶりのメジャー復帰を果たしたエミリオ・ボニファシオ、現在は読売ジャイアンツに所属するエンジェル・サンチェスとC.C.メルセデス、そして2015年から3年間、中日ドラゴンズに在籍したラウル・バルデスや、2015年に巨人で5試合だけ出場したホアン・フランシスコらを擁する。

 野球が正式種目となった1992年のバルセロナ五輪では、予選リーグで日本に0対17でコールド負けを喫しているが、オリンピックの舞台ではそれ以来の対戦となる明日の試合。侍ジャパンを相手に、どんな戦いを見せるだろうか?

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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