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ヤクルトでは過去に正田樹。独立リーグを経てNPBに復帰した選手は…

菊田康彦フリーランスライター
レッドソックス時代の正田樹(左)。隣は現西武の松坂大輔(写真:ロイター/アフロ)

 東京ヤクルトスワローズが独立リーグ、四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズに所属する歳内宏明(27歳)の獲得を検討していると、複数のメディアが報じた。歳内は2012年から8年間、阪神タイガースでプレーしており、ヤクルト入りが決まればNPB復帰となる。

歳内は現在、四国リーグで「3冠」

 歳内は福島・聖光学院高で夏の甲子園に2回出場。2011年のドラフトで阪神から2位指名を受けてプロ入りすると、2014年7月30日のヤクルト戦(甲子園)で初勝利を挙げる。翌2015年は自己最多の29試合に投げ、1勝1敗2ホールド、防御率2.62の成績を残すが、その後は右肩の故障に悩まされ、2018年は育成選手となった。

 その年の7月には支配下に復帰するも、一軍マウンドに返り咲くことなく昨年限りで自由契約。12球団合同トライアウト、アジア・ウインターリーグへの参加を経て、昨年12月に香川と契約し、今シーズンは5勝(0敗)、防御率0.42、奪三振76でリーグ3冠となっている。

 歳内のヤクルト入りはまだ発表されていないが、独立リーグからNPBに復帰したケースは過去にもある。ヤクルトでいえば、2012年から2年間在籍した正田樹がこれに当たる。

ヤクルトでNPB復帰の正田は8年ぶり勝利

 日本ハム(現北海道日本ハム)ファイターズ入団3年目の2002年に9勝11敗、防御率3.45でパ・リーグ新人王に輝いた正田は、阪神、台湾・興農ブルズを経て、2011年はメジャーリーグのボストン・レッドソックスとマイナー契約を結ぶも、開幕前に解雇。台湾でチームメイトだった高津臣吾(現ヤクルト監督)が在籍していた(※1)独立リーグ、BCリーグの新潟アルビレックスBCに入団すると後期優勝、そして地区優勝にも貢献した。

 そのオフ、30歳になった正田は「自分でも予想外だった」というヤクルトからのオファーを受ける。NPB復帰1年目の2012年は、主に左の中継ぎとして24試合に登板。翌2013年は5月17日の千葉ロッテマリーンズ戦(神宮)で9回表のマウンドに上がって無失点に抑えると、その裏に飛び出した畠山和洋(現ヤクルト二軍打撃コーチ)の逆転サヨナラ満塁ホームランで、NPBでは8年ぶりの勝利投手となり「抑えていれば、いつかこういう日が来ると思っていた」と、感慨を口にした。

 その年の10月に戦力外通告を受け、2014年は台湾・Lamigoモンキーズを経て四国・愛媛マンダリンパイレーツに入団。38歳になる現在も現役としてプレーを続け、今季は8試合の登板で3勝5敗、防御率3.45の成績を残している。

先駆けとなったのは元ソフトバンクの山田

 こうしたケースの先駆けとなったのは、2008年限りで福岡ソフトバンクホークスを戦力外となった山田秋親で、四国・九州アイランドリーグ(現在の四国アイランドリーグplus)の福岡レッドワーブラーズを経て、2010年に「秋親」の登録名でロッテと契約。この年は28試合に救援登板し、5月13日の横浜(現横浜DeNA)ベイスターズ戦で、NPBでは6年ぶりの勝利投手になった。

 その後も小林宏之(ロッテ、阪神→BC・群馬、信濃→西武)、岩本輝(阪神→BC・福井→オリックス)といった投手が、独立リーグを経てNPBに復帰している。2014年限りでDeNAを自由契約となり、一度は打撃投手に転身しながらも、四国・愛媛で現役復帰した古村徹は、BCリーグの富山GRNサンダーバーズを経て、昨年は再び支配下選手として古巣・DeNAと契約した。

 野手では2012年から2年間、広島東洋カープに在籍した三家和真(みけ・かずま)が、BCリーグの信濃グランセローズ、石川ミリオンスターズでプレーしたのち、2016年オフにロッテのテストを受けて入団。翌2017年5月23日のソフトバンク戦で広島時代はなかった一軍初出場を果たすと、7月3日のオリックス・バファローズ戦では二塁打でプロ初安打を記録。2018年は一軍出場はなかったものの、昨年7月21日の日本ハム戦で初本塁打も放っている。

BCリーグ栃木がDeNAの元ドラ1北方の入団を発表

 8月31日にはBCリーグの栃木ゴールデンブレーブスが、かつてのDeNAのドラフト1位で、昨年はシーズン途中で栃木からマイナー契約でロサンゼルス・ドジャースに移籍していた北方 悠誠(きたがた・ゆうじょう)との契約合意を発表した。

 栃木はこれに先立ち、8月28日にソフトバンクやメジャーリーグのシアトル・マリナーズなどでプレーした川崎宗則(※2)との入団合意を発表したばかり。ほかにも西岡剛(元ロッテほか)、飯原誉士(元ヤクルト)、成瀬善久(元ロッテほか)、若松駿太(元中日)といったNPB経験者が在籍している。

 もちろん他の球団にも元NPBの選手はいるが、その中から歳内に続く者は出てくるだろうか? なお、例年は7月31日が期限の新規支配下選手登録は、今年は開幕が大幅に延期されたことで9月30日に延びている。

(※1)公開時に誤りがありましたので、修正しました。

(※2)川崎の「崎」は正確には「たつさき」。

フリーランスライター

静岡県出身。小学4年生の時にTVで観たヤクルト対巨人戦がきっかけで、ほとんど興味のなかった野球にハマり、翌年秋にワールドシリーズをTV観戦したのを機にメジャーリーグの虜に。大学卒業後、地方公務員、英会話講師などを経てフリーライターに転身した。07年からスポーツナビに不定期でMLBなどのコラムを寄稿。04~08年は『スカパーMLBライブ』、16~17年は『スポナビライブMLB』に出演した。著書に『燕軍戦記 スワローズ、14年ぶり優勝への軌跡』(カンゼン)。編集協力に『石川雅規のピッチングバイブル』(ベースボール・マガジン社)、『東京ヤクルトスワローズ語録集 燕之書』(セブン&アイ出版)。

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